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最終章 この世に善悪など無い
エピローグ
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「ガル?どうしたんだその目。それに、どうしてここに?」
「・・・とりあえず、全てが終わってから話します。外にいる瘴族を蹴散らしましょうか」
「あ、ああ。そうだな」
バックスがいなくなった瘴族はただちょっと強いだけの軍団への成り下がった。中にはバックスがやられた事を知って逃げ出す者もいるほどだ。結果的にあれだけいたバックス軍はたった1日でバラバラになって退散。浄化の神殿では二度目の勝利の宴が開かれようとしていたが・・・それを止めたのはガルだった。
「そんな事よりも今すぐここから離れよう。まもなくここは瘴気で人が住めない事になるから」
ガルの帰還で喜んでいたせいで肝心な事を忘れていた。ガルは瘴気を防ぐ為に地下に滞在する事になった。そのガルがいなくなったという事は瘴気が溢れだすという事だ。
ガルの忠告を聞いた眷属達は必要な物を持って神殿から避難。避難が完了した数時間後には神殿からは限りなく黒に近い灰色の瘴気が溢れだしていた。
「それじゃあ、地下で知った事を今から話すね」
ガルは語ってくれた。瘴気は人間の負の感情と大地の魔力が混ざって生まれた物である事、ゴッズステイを維持する為に神々が防いでくれたのだが、段々といなくなり浄化の女神様だけが残った事。自分は喜んで浄化の女神様の身代わりになったけど、耐えきる事が出来なかった事を全て話してくれた。
浄化の女神様本人に確認を取った所、首を縦に振ったのでガルの話は本当だと皆信じた。オルタとトキと浄化の女神を除いては。
避難した先で皆が寝静まったのを見計らい、トキとオルタはガルを起こして真相を聞こうとした。しかし、起こそうと彼の寝袋をゆすった時には、ガルはもういなかった。
しかし、寝袋には温もりが残っており、少し遠くでランタンの明かりを発見したトキはオルタを連れてランタンの光の方へと走り出す。
ランタンの光の先にいたのは、ガルと浄化の女神様だった。
「2人共起きちゃったんだ」
どうやら親子水入らずで談笑というわけではなさそうで、ガルは鎧と剣を装備し、荷物を背負っている。
「この姿で何となく分かると思うんだけど、僕はゴッズステイから出ていく事にしたんだ。今までありがとうねトキ」
「ど、どうして!?瘴族の三幹部も倒したんだし、平和まであと一歩じゃん!」
「仮初のね・・・さっきも話をした通り、今までの平穏は日々の不幸を後回しにした結果の産物だ。計4回の瘴気騒動はそのしっぺ返しだったんだよ。だから瘴族を滅ぼしたとしても滅びを先送りにしているだけにすぎない。5回目は100年なんかかからずに来るだろうね」
「ゴッズステイを出ていく理由にはなってないぞ」
「・・・あまり口にしたくはなったんですが、神々の身勝手さに愛想が尽きたんです。それに僕がここにいたとしても待っているのは母さんが用意した人生だ。そんなの僕は望んじゃいない。責任から逃げるような事をしてごめんなさい」
「ガル・・・私は・・・」
「謝らなくて良いよ母さん。母さんの自分勝手な理由で貰った命だけど、そのお陰で人生を歩めてんだから。それと、本当の事を言わずに母さんの株を下げなかったんだから信仰心はきっと前よりも上がっているはずだよ」
「やっぱり喜んで身代わりになったというのは嘘だったのか。浄化の眷属の弱体化を恐れての」
「そう、正解。まあ、オルタ副団長にはバレちゃったけど誰にも言わないでね」
「ああ、そうするよ・・・達者でな。ウル神父には俺から言っておくよ」
「待って待って!どうして送り出す雰囲気になっているの!わたしは嫌だよ!ガルと一緒にいたい!絶対に外になんて行かせない!!」
ガルに抱き着き、動けないようにするトキ。そんな彼女の頭を梳くように撫で抱きしめた。
「ごめんね・・・」
「え・・・?」
途端、トキの全身から力が抜け、眠りについてしまう。無詠唱で睡眠魔術を使用したみたいだ。
「オルタさん、後をよろしくお願いします」
「ああ。またな」
「ええ、さようなら」
こうしてガルは旅立った。母に敷かれた人生とは違う人生を歩みだす為に、今までの全てを捨ててゴッズステイを出て行った。
「・・・とりあえず、全てが終わってから話します。外にいる瘴族を蹴散らしましょうか」
「あ、ああ。そうだな」
バックスがいなくなった瘴族はただちょっと強いだけの軍団への成り下がった。中にはバックスがやられた事を知って逃げ出す者もいるほどだ。結果的にあれだけいたバックス軍はたった1日でバラバラになって退散。浄化の神殿では二度目の勝利の宴が開かれようとしていたが・・・それを止めたのはガルだった。
「そんな事よりも今すぐここから離れよう。まもなくここは瘴気で人が住めない事になるから」
ガルの帰還で喜んでいたせいで肝心な事を忘れていた。ガルは瘴気を防ぐ為に地下に滞在する事になった。そのガルがいなくなったという事は瘴気が溢れだすという事だ。
ガルの忠告を聞いた眷属達は必要な物を持って神殿から避難。避難が完了した数時間後には神殿からは限りなく黒に近い灰色の瘴気が溢れだしていた。
「それじゃあ、地下で知った事を今から話すね」
ガルは語ってくれた。瘴気は人間の負の感情と大地の魔力が混ざって生まれた物である事、ゴッズステイを維持する為に神々が防いでくれたのだが、段々といなくなり浄化の女神様だけが残った事。自分は喜んで浄化の女神様の身代わりになったけど、耐えきる事が出来なかった事を全て話してくれた。
浄化の女神様本人に確認を取った所、首を縦に振ったのでガルの話は本当だと皆信じた。オルタとトキと浄化の女神を除いては。
避難した先で皆が寝静まったのを見計らい、トキとオルタはガルを起こして真相を聞こうとした。しかし、起こそうと彼の寝袋をゆすった時には、ガルはもういなかった。
しかし、寝袋には温もりが残っており、少し遠くでランタンの明かりを発見したトキはオルタを連れてランタンの光の方へと走り出す。
ランタンの光の先にいたのは、ガルと浄化の女神様だった。
「2人共起きちゃったんだ」
どうやら親子水入らずで談笑というわけではなさそうで、ガルは鎧と剣を装備し、荷物を背負っている。
「この姿で何となく分かると思うんだけど、僕はゴッズステイから出ていく事にしたんだ。今までありがとうねトキ」
「ど、どうして!?瘴族の三幹部も倒したんだし、平和まであと一歩じゃん!」
「仮初のね・・・さっきも話をした通り、今までの平穏は日々の不幸を後回しにした結果の産物だ。計4回の瘴気騒動はそのしっぺ返しだったんだよ。だから瘴族を滅ぼしたとしても滅びを先送りにしているだけにすぎない。5回目は100年なんかかからずに来るだろうね」
「ゴッズステイを出ていく理由にはなってないぞ」
「・・・あまり口にしたくはなったんですが、神々の身勝手さに愛想が尽きたんです。それに僕がここにいたとしても待っているのは母さんが用意した人生だ。そんなの僕は望んじゃいない。責任から逃げるような事をしてごめんなさい」
「ガル・・・私は・・・」
「謝らなくて良いよ母さん。母さんの自分勝手な理由で貰った命だけど、そのお陰で人生を歩めてんだから。それと、本当の事を言わずに母さんの株を下げなかったんだから信仰心はきっと前よりも上がっているはずだよ」
「やっぱり喜んで身代わりになったというのは嘘だったのか。浄化の眷属の弱体化を恐れての」
「そう、正解。まあ、オルタ副団長にはバレちゃったけど誰にも言わないでね」
「ああ、そうするよ・・・達者でな。ウル神父には俺から言っておくよ」
「待って待って!どうして送り出す雰囲気になっているの!わたしは嫌だよ!ガルと一緒にいたい!絶対に外になんて行かせない!!」
ガルに抱き着き、動けないようにするトキ。そんな彼女の頭を梳くように撫で抱きしめた。
「ごめんね・・・」
「え・・・?」
途端、トキの全身から力が抜け、眠りについてしまう。無詠唱で睡眠魔術を使用したみたいだ。
「オルタさん、後をよろしくお願いします」
「ああ。またな」
「ええ、さようなら」
こうしてガルは旅立った。母に敷かれた人生とは違う人生を歩みだす為に、今までの全てを捨ててゴッズステイを出て行った。
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