記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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最終章 この世に善悪など無い

130話 女神の独白

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 トキによって全てを丸裸にされた浄化の女神は白杖するように語り出した。

「190年前の事です。瘴王を倒し、封印する事に成功しましたが、依然として瘴気の穴は塞がらずじまいでした。瘴気の穴は3度の覚醒によって、完全に開き切った状態になってしまったのです」

「何だって!?つまり今回の瘴気騒動はただの自然発生ではなく、時期を遅れさせていたのがやってきただけだったのですか?」

「その通りです。このままではゴッズステイの民は生きる事はできないと考えた私と当時の信者達は必死に策を考えましたが、結局私の体を使って封印するしか道が残されていませんでした」

「そして現在に至ると・・・ところで、瘴王は封印されたと言っていましたよね?一体何処に封印したんですか?浄化のダンジョンではない事はわたしでもわかりますが」

「それは・・・言えません」

「なるべく情報が漏れるのを避けるためですか?」

「それもそうですが、もしこの話をしてしまえば私達は本当の意味で瘴族に勝てなくなってしまうからです。ですからどうかご容赦下さい」

 トキとオルタに頭を下げる浄化の女神。本来、頭を下げるのは人間側であり、神側から頭を下げるのは本来あり得ない上にとんでもない事態なのだが、事情が事情なのでトキとオルタは頭を下げる事をやめさせなかった。

 確かに女神の心は瘴気に染まっている。しかし、そのあり方は大きく変質はせずに依然として人間側の仲間である事に変わりはないからだ。

 トキも怒りはすれど、殴るほどではなかった。最奥の瘴気の濃さを知っているからだ。あんな濃い瘴気を浴びていたら誰だって頭がおかしくなる。

 何よりも人間のために190年間も頑張ってきた神に感情のまま怒りをぶつける事なんて不可能だった。

「転生の子トキよ。貴方を愛する者を犠牲にしてしまったことをどうかお許し下さい・・・」

「・・・許してほしいのなら、この戦いが終わり次第。ガルを地下から助ける為に力を貸して下さい」

「こういう事を言うのは酷ですが、あの瘴気の穴を塞ぐ方法はありません。わたしも泣く泣く自分の体を犠牲にしたのですから・・・」

「そんな事、知ったこっちゃありません。何としてでも探し出して見せます。どんな汚い方法を使おうが、ゴッズステイがなくなろうがガルを必ず助け出します。良いですね?」

 今のトキには何が何でもやってやるという気迫を感じた。あまりの凄みに浄化の女神とオルタは気圧されてしまうのであった。
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