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最終章 この世に善悪など無い
126話 劣勢
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刃と刃がぶつかり合う。肉が斬り裂かれる音が耳に残る。肉と骨が同時に砕ける戦場に広がる。
あんなに清潔で真っ白だった浄化の神殿に血が付着する。状況は、浄化側が不利だった。争いも犯罪もロクにないゴッズステイの欠点が出てしまったみたいだ。
ゴッズステイには盗賊などの犯罪者が存在していなければ、血で血を洗うような争いも存在しない楽園のような場所である。しかしそれは同時に戦った者がいない事も意味する。
鍛錬での練習試合はあるが、互いに殺し合う気はない戦いである為経験は無いと言っても間違いではない。圧倒的経験不足を浄化の奇跡で補っているものの、それでも補い切れていない者が多く、先程から目の前で次々と殺されて行っている。
「オルタ副団長!助け────」
たった今、目の前で俺に助けを求める部下が頭を潰され絶命した。砕けた頭蓋骨や脳が足元に転がって来る。部下の頭を潰した瘴族が次に目を付けたのは俺だった。頭を簡単につぶせる戦鎚を持ち、襲い掛かって来る。
「フンッ!!」
「何!?」
頭に向かって振って来る鎚を籠手で受け止め、押し返す。体勢を崩したのを好機と見做し、鉤爪で喉を突き刺し、刺し傷に浄化の奇跡を流す。
ガルよりも圧倒的に弱い奇跡ではあるが、体内に流し込めば俺でも殺す事が出来る。浄化の奇跡を流し始めて30秒で刺した瘴族は灰となった。付着した血液も灰となって地面へと落ちていく。
「これで、27体目・・・後何体だ?」
1体倒しても、こちら側の戦力が3人減る。このままいけば、200体殺すまでにこちらは全滅してしまう。
まさか、こんなに追い詰められるとは思っていなかった。何よりも浄化の女神様の力が期待を大きく下回っていた。浄化の力を使って俺達が活動できる範囲を広めてはくれている。浄化の奇跡の威力を通常よりも上げてくれている。
しかし、それらの恩恵はほぼ付け焼刃のようなもので大して戦力アップにはなってはいない。例えるならあったらいいな程度の力だ。
どうしてこんな力しか与えてくれないのか疑問でしかなかったが、よくよく考えてみると浄化の女神様は地下の瘴気の穴を塞ぐ役から帰って来たばかり。気丈にふるまってはいるものの、冷や汗をかいており本領発揮どころか力の10分の1すら出せていない状況なんだ。
「オルタ!大丈夫ですか!?」
「俺は問題ありません。ですが、浄化サイドには大きな問題を抱えています」
「そうですね・・・私達には圧倒的な攻撃手段がありません!!」
経験不足、戦闘員不足を補うには敵を一掃できる攻撃手段が必要だ。だが、そんな手段は・・・。
「あるよオルタさん」
「・・・トキ?」
氷のように冷たい声に反応して振り返ると、本の爺さんを抱えた寝間着姿のトキが虚ろな目で立っていた。
あんなに清潔で真っ白だった浄化の神殿に血が付着する。状況は、浄化側が不利だった。争いも犯罪もロクにないゴッズステイの欠点が出てしまったみたいだ。
ゴッズステイには盗賊などの犯罪者が存在していなければ、血で血を洗うような争いも存在しない楽園のような場所である。しかしそれは同時に戦った者がいない事も意味する。
鍛錬での練習試合はあるが、互いに殺し合う気はない戦いである為経験は無いと言っても間違いではない。圧倒的経験不足を浄化の奇跡で補っているものの、それでも補い切れていない者が多く、先程から目の前で次々と殺されて行っている。
「オルタ副団長!助け────」
たった今、目の前で俺に助けを求める部下が頭を潰され絶命した。砕けた頭蓋骨や脳が足元に転がって来る。部下の頭を潰した瘴族が次に目を付けたのは俺だった。頭を簡単につぶせる戦鎚を持ち、襲い掛かって来る。
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頭に向かって振って来る鎚を籠手で受け止め、押し返す。体勢を崩したのを好機と見做し、鉤爪で喉を突き刺し、刺し傷に浄化の奇跡を流す。
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「これで、27体目・・・後何体だ?」
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しかし、それらの恩恵はほぼ付け焼刃のようなもので大して戦力アップにはなってはいない。例えるならあったらいいな程度の力だ。
どうしてこんな力しか与えてくれないのか疑問でしかなかったが、よくよく考えてみると浄化の女神様は地下の瘴気の穴を塞ぐ役から帰って来たばかり。気丈にふるまってはいるものの、冷や汗をかいており本領発揮どころか力の10分の1すら出せていない状況なんだ。
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「俺は問題ありません。ですが、浄化サイドには大きな問題を抱えています」
「そうですね・・・私達には圧倒的な攻撃手段がありません!!」
経験不足、戦闘員不足を補うには敵を一掃できる攻撃手段が必要だ。だが、そんな手段は・・・。
「あるよオルタさん」
「・・・トキ?」
氷のように冷たい声に反応して振り返ると、本の爺さんを抱えた寝間着姿のトキが虚ろな目で立っていた。
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