記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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五章 親の代わり

120話 女神様を救いたい

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「ガル・・・私の愛しいガルよ。私を解放する手を少しの間だけ止めてください」

「女神様!?意識があるんですか?」

「貴方と、そこにいる少女の力のお陰で周囲の瘴気がほんの少し薄れたおかげで何とか意識を取り戻すことができました。ありがとう、ございます・・・」

 会話から察するに女神様は瘴気によって意識を失っていたみたいだ。

「私のガル、どうかそのまま私の話を聞いてはもらえないでしょうか?貴方からしたら遠い昔の話、190年前の話を」

「190年前・・・浄化の神殿を作った時の話ですか?」

「貴方達の憩いの場である浄化の神殿は、ここから発生する瘴気を抑える為に作ったものです。封印の為に作ったこのダンジョンを更に封印するために作った二重の封印なのです」

「ふむ、やはりわしの予想は当たったみたいじゃな。それで浄化の女神よ、いかにして貴方様を助けては行けないのですかな?」

「私がこの壁に埋め込まれているのには理由があるからです。それは、後ろに瘴気の穴があるからなのです」

「瘴気の穴・・・貴方が意識を手放すほどですから、普通の瘴気の穴とは違うんでしょう?」

「私がこの身を使って塞いでいる瘴気の穴の先には、瘴気の源である瘴石が存在します。最初こそそれを破壊しようと試みたのですが、私の力では破壊をする事は不可能。それどころか被害者を増やすだけでした」

「だからそうやって自分の身を挺して瘴気が発生するのを190年も続けていたんですか?」

「はい。ですが、もう既に限界のようです。瘴気が噴き出した始めたのは半年前。日に日にそれは酷くなっていき、ついには意識を手放すほどでした。私自身どれだけ気絶していたのか分かりません」

 僕らは女神様が犠牲になっているというのにも気付かずにのほほんと190年間も生きていたというのか?その事実に苛立ちを覚える。

「恐らく、これからも瘴気の噴出は激しくなっていくでしょう。あとどのくらいになるかは分かりませんが、わたしに待っているのは死です」

 女神様が死ぬ?そんな事あってはいけない。僕らを支えてくださった女神様を殺させるわけにはいかない。

 僕が何とかしなくては・・・浄化の女神である僕が救わなくては。

 では、何をすれば良い?僕はただ息子として生まれただけで対抗策などの知識は持ち合わせていない。持っているのは瘴気に対する完全なる耐性のみ・・・。

「それだ」

「・・・ガル?」

「浄化の女神様、今まで190年間僕達を守ってくれて本当にありがとうございます。あとは、息子である僕に任せてください。僕が貴女の身代わりとなります」

 ガルが思い浮かんだ妙案。それは、自己犠牲だった。
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