記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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五章 親の代わり

111話 前のわたしと今のわたし

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「良かった。神像は無事みたいだ」

 帰ってきてから忙しかったので、見れていなかったのだが神像は戦いで破損などはしていないみたいだ。女神様を一番讃える事が出来るオブジェクトなので壊されなくて本当に良かったと思っている。

「ガルはいつもこの綺麗な神像に向かって祈りを捧げてたの?」

「うん、そうだね。毎日捧げてたね」

「そういえば、ブレ洞窟のドワーフさん達も神像に祈りを捧げてたよね。今目の前にある神像よりかは小さいけど、ドワーフさん達の技術の塊みたいな綺麗な神像が」

「基本的に神には神像が作られているよ。神様も忙しいから毎日祈りに耳を傾ける事が難しいみたいだからね」

「・・・・・・わたしの神様の神像もあるのかな?わたしも記憶を失う前は祈りを捧げていたのかな?」

「分からない。けど、瞳の色がその神様の色に染まっているから、きっとかなり昔から祈りを捧げていたんだと思うよ」

「そうかな?・・・ねえガル。今のわたしはガルは作ったって言っても過言じゃないよね?」

 エルフの森で見つけ、色んな常識や知識を身に付けさせて人格形成した・・・という面を見るのなら僕が彼女を作ったと言っても間違いではないだろう。

「いつになるかは分からないけど、いつかは記憶は元に戻ると思うんだ。保障は無いけど、何となくそうじゃないかなって思ってる」

「そうだと良いね」

「・・・本当にそう思う?」

「・・・え?」

「前のわたしと今のわたしは違う存在。記憶が違うだけなら良いけど、恐らく人格も違う」

 初めて会ったトキは赤ん坊・・・というよりも中身の無い人形のような存在だった。そこに僕が話しかける事で人格を作っていった。つまりは新しく書き換えたわけだ。

 人格は記憶で形成されている。その人の体験によって性格は大きく変化する。つまりは記憶と人格は結びついているという事になる。彼女は記憶と共に前の人格が戻って来る事によって自分が自分で無くなってしまう事を恐れているんだろう。

 僕には想像もできない恐怖だ。だから僕にできる事があるとしたら、彼女を優しく抱きしめるしかなかった。

「もし・・・もし、今のわたしがいなくなったとしてもガルは絶対に忘れないでね」

「絶対に忘れない。それだけは約束する」

 恐怖で震える彼女を少し強めに抱きしめた。

「あぁ~~水を差すようで非常に申し訳ないんじゃが・・・少し良いかの?」

「フレディさん!すっかり忘れてました!!」

「忘れるな・・・まあ良い。少し、あの神像まで寄ってはくれんか?近くで見てみたいんじゃ」

 研究者としての血が騒ぐんだろうか?別に近づいても問題は無いため、望み通り近づいて見せた。
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