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四章 正義とは?
104話 自分を信じなさい
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戦鎚使いの瘴僕の彼を倒した後、浄化の騎士団によって瘴族達の撤退が発表された。
防戦は実に4日ほど続いていたらしく、騎士団は歓喜の声を喉が枯れるまで上げた後、枯れた喉に美酒を流し込み始めた。
皆が飲み始めた所で、ウル神父をようやく見つけ安否をその目で確認する事ができた。
「無事で本当に良かったです、ウル神父」
「こちらのセリフですよガル。立派になりましたね」
とても嬉しいお言葉だ。嬉しいはず・・・なのに。全然喜べないのは戦鎚の瘴族との会話があった後だからだろうか?ちっとも嬉しくない。
「オルタ副団長とも先程会いました。随分と仲良くなられたそうですね。彼の口からは君への賞賛しか出てきませんでしたよ。ただまだリリィ団長とあえていないんです。何処にいるのか知っていますか?」
「・・・実は」
雑嚢から灰の入った瓶を取り出す。最初はなんなのか分かっていなかったウル神父だが、僕の顔と灰を交互に見る事で何が起きたのかを察してくれたようで、優しく僕を抱きしめてくれた。
「嗚呼・・・なんという事でしょうか。リリィ、何故私よりも先に旅立ってしまったのですか?そして、ガル。辛かったでしょう?」
「はい・・・でも、乗り越えました」
ガルの涙はすでに渇いていた。その美しい瞳から涙は出る事は無かった。
「ウル神父、質問があるのですがよろしいでしょうか?」
「ええ、良いですとも。長旅で新たな疑問が生まれたならば私にじゃんじゃんぶつけてきて下さい」
「ありがとうございます。では・・・・・・瘴族は悪なのでしょうか?」
「・・・なるほど、とても難しい質問ですね」
戦鎚使いの瘴族との戦いだ生まれた疑問。僕らが戦っている瘴族はそもそも悪なのか善なのか。
「そもそも善と悪という概念は人間が罪逃れに作った概念にすぎません。そんな2つの概念で分けられる程、簡単ではありません。ガル、貴方は彼らを悪とみなして戦っていたのですか?」
「そんなつもりはありませんでした。ですが、彼らから見たら正義を振り翳しているように見えたみたいです。彼らは地上で住みたいだけなのに」
「それは彼らが言っていた事ですか?」
「はい」
「それを信じるのですか?」
「信じようとしている自分がいます」
「ふむ・・・ならば、もう信じ切ってしまいなさい。中途半端や優柔不断な状態が1番面倒ですからね」
「それが間違っていたとしたら?」
「また考えなおせば良いだけです。それと、もう少し自分を信用した方が良いですよ。貴方は良い子なんですから」
そういうとウル神父は僕の頭を撫でてオルタ副団長の元へと歩いていった。
僕は倒木に腰を下ろして宴が終わるまでずっと考え事をしていた。
防戦は実に4日ほど続いていたらしく、騎士団は歓喜の声を喉が枯れるまで上げた後、枯れた喉に美酒を流し込み始めた。
皆が飲み始めた所で、ウル神父をようやく見つけ安否をその目で確認する事ができた。
「無事で本当に良かったです、ウル神父」
「こちらのセリフですよガル。立派になりましたね」
とても嬉しいお言葉だ。嬉しいはず・・・なのに。全然喜べないのは戦鎚の瘴族との会話があった後だからだろうか?ちっとも嬉しくない。
「オルタ副団長とも先程会いました。随分と仲良くなられたそうですね。彼の口からは君への賞賛しか出てきませんでしたよ。ただまだリリィ団長とあえていないんです。何処にいるのか知っていますか?」
「・・・実は」
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「はい・・・でも、乗り越えました」
ガルの涙はすでに渇いていた。その美しい瞳から涙は出る事は無かった。
「ウル神父、質問があるのですがよろしいでしょうか?」
「ええ、良いですとも。長旅で新たな疑問が生まれたならば私にじゃんじゃんぶつけてきて下さい」
「ありがとうございます。では・・・・・・瘴族は悪なのでしょうか?」
「・・・なるほど、とても難しい質問ですね」
戦鎚使いの瘴族との戦いだ生まれた疑問。僕らが戦っている瘴族はそもそも悪なのか善なのか。
「そもそも善と悪という概念は人間が罪逃れに作った概念にすぎません。そんな2つの概念で分けられる程、簡単ではありません。ガル、貴方は彼らを悪とみなして戦っていたのですか?」
「そんなつもりはありませんでした。ですが、彼らから見たら正義を振り翳しているように見えたみたいです。彼らは地上で住みたいだけなのに」
「それは彼らが言っていた事ですか?」
「はい」
「それを信じるのですか?」
「信じようとしている自分がいます」
「ふむ・・・ならば、もう信じ切ってしまいなさい。中途半端や優柔不断な状態が1番面倒ですからね」
「それが間違っていたとしたら?」
「また考えなおせば良いだけです。それと、もう少し自分を信用した方が良いですよ。貴方は良い子なんですから」
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