記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

90話 キリがない

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「すげぇ・・・これが転移の魔術か。こりゃあ、便利だ。古代の人間はどうしてこんなに便利な魔術を後世に伝えなかったんだろうか」

「そりゃあ、危険に決まっておるじゃろうが。この魔術は正しくは人の転移する魔術ではなく、範囲内に入っている者を転移する魔術じゃ。では、範囲外から少しずれていたらどうなると思う?」

「転移できないんじゃないのか?」

「いいや、範囲内に入っているものだけを転移する。外に出てしまっておる部分はバイバイじゃ。これが、ばっぐなどの道具ならば問題ない。器物が破損しただけなのじゃからな。じゃが、これが人間の体だったらどうなってたと思う?」

「足ちょんぱ、腕ちょんぱ・・・」

「で、済めばまだマシじゃろうよ。範囲さえ広めれば問題はないが、危険はなるべく除去したいのが人のサガ。転移できる距離を狭める事によって危険を無くしたんじゃ」

 僕達がした転移は最上階から1階までだ。距離にして10m程である。たった10mではあるが、縦に続く10mと横に続く10mではわけが違う。

 僕達が上まで植物を種を取りに行っている隙に瘴気は発生していたようで、中庭は満身創痍の魔物が入ったら全回復するような場所になってしまっていた。

「ガル、瘴気を吸うね」

「分かった。けど、数回に分けよう。それと、クレオジタスが来たら止めるように」

「分かった・・・すうぅぅぅぅ・・・」

 中庭に蔓延する瘴気を吸い始める。瘴気はトキの口の中へと入っていき、トキの体は段々と灰色になっていくのだが、灰色になる速度がいつもより約2倍程早い。

「ここの瘴気濃い上に凄い多い・・・!」

「そうだね。副団長は大丈夫ですか?奇跡が維持できなくなったらすぐに逃げてくださいね」

「後輩を置いて逃げられるか・・・と言いたいところだが、そこはお言葉に甘えさせてもらう。こんな所では死にたくないんでな。本の爺さん、俺に出来る事はあるかい?」

「無い。出番まで待っておれ。お主は戦う事だけを考えろ」

「了解」

 トキが瘴気を吸い始めてから1分程経っただろうか?トキが瘴気を吸う速度と同じ速度で穴から瘴気が発生している為、まるで瘴気が減っていない。まず植物を育てて穴を埋めた方が良いとも思ったが、土にも瘴気が染み付いているこの中庭で植物なんて育てたら魔物化する未来だけが待っている。

 なのである程度の瘴気を浄化しなければならないのだ。

「よぉーし着いたぁ!!それじゃあ、アイツらを待ちますか・・・って何でいるんだぁぁぁぁ!?」

「チィッ!来たか・・・ガル!お前はトキと一緒に浄化に専念しろ!この瘴族は俺が相手をする!!」

「分かりました!!」

 オルタは時間稼ぎの為、最上階から降りて来たクレオジタスの前へと立ち塞がるのであった。
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