記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

86話 部屋脱出

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「ギャアァァァァァァァァ!!」

 メドゥーサの甲高い悲鳴が上がると共に、部屋を照らしてきた紫色の光がパッと消える。いや、潰したという表現が正しいだろう。

「今です!」

「ナイス判断だガル!!」

 体勢を崩していないオルタがメドゥーサの心臓を穿つ。心臓を穿たれたメドゥーサは目から赤い涙を流しながら絶命した。

「ふぅ・・・今のは流石に危なかったな」

「本当だ。お前、自分が特別な存在であることを時々忘れてるだろ」

「忘れてる。というのは正しくないかもしれません。わざと忘れていると言った方が良いかもしれません。そうしないと無茶な行動はできないので」

「コイツに盾持たせる戦法を学ばせたリリィ団長の判断は正しかったんだな・・・」

 親指に付着した血を拭う。関節までズッポリと指を差し込んだみたいだ。

「にしてもあんなラミア知らなかった。魔術師とか研究者の間では有名なんですか?」

「まあの。が魔物化した姿じゃからな」

「え?」

「なんだ?知らんかったのか?メドゥーサは体が石のようになってしまう毒を持った絶滅種の蛇が魔物化した姿じゃぞ」

 なるほど、絶滅種。だから魔物図鑑にも載っていなかったわけか。

「いやちょっと待った。なんで絶滅種がここにいるんです?まだ自然にいるなら絶滅してなかったんだーで済みますけど、図書館にいるだなんてあまりにも不自然じゃないですか」

「ほっほっほ。ここを何処だと心得ておるのじゃガルよ。ゴッズステイ中の知恵が集う魔術師達の図書館じゃよ?絶滅種を復活させることなんて容易じゃよ」

「またあんたかよ・・・」

「いや、今回はわしの弟子じゃな。ちなみにさっきガルが殺した異神の宣教師の中にもおるじゃろうよ」

「すみません。仕方なかったとはいえ、お弟子さんを殺してしまって」

「わしが言うのはなんだか違うような気がするが構わんよ。あのまま放っておいても他人に害しか与えないからの。ああやって葬ってもらった方が世のため人のためじゃ」

「それなら良いんですが・・・所でどうやってここから脱出します?扉は閉まってるし、扉自体を壊すにしても頑丈で壊れそうにありません」

「魔術も施してあるからの。そんじょそこらの衝撃には耐えられるようになっておる。おっと、部屋の自慢をしてしまったなすまんすまん。この部屋を出るなら、先程メドゥーサが落ちてきた天井の穴から脱出するのはどうじゃ?動物飼育部屋に着くと思うぞ」

「なあ、その部屋にも瘴気は蔓延してるよな?」

「当たり前じゃろ。ここまで瘴気に汚染されておるんじゃから」

「ガル、こりゃあもう一戦交える覚悟をしておいた方がいいかもな」

「ですね」

 メドゥーサが魔物化したというのなら、同じ部屋にいた動物達も魔物化しているはずだ。気は決して抜けない。
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