記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

78話 未完の歴史書

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「こんな形で母さんに感謝する時が来るとは思わなかったよ。母さんが生きてる頃に感謝を言いたかったね」

 そう語る副団長の表情は何処か悲しげで尻尾もへたり込んでいた。

「外から来た者とその親族を迫害する・・・ゴッズステイの民の悪い所じゃな。外から来たものを本当に嫌う節がある。ま、気持ちも分かるがの。ところで、お主達は何をしに来たんじゃ?聞きそびれていたが、長い廊下を歩いているうちに話しておきたい」

「実は瘴族が現れたんです。しかも倒しきる前に逃げられてしまってそこから行方が分からないんです。ですので、瘴族を情報を得る為にここにやってきたんです。世の中には出されていない本の中に瘴族の知られていない習性などが書かれた本があると思ったんで」

「ああ~~成程のう・・・あるぞ」

「え!?あるんですか!!」

「ああ、ある。勿論、瘴族の事を専門に書いた本ではないし、瘴族の全てが書かれたわけではないが『未完の歴史書』という書物に瘴族について書かれておる」

「未完成の歴史の書?」

「ああ、そうだ。歴史は人間が存在し続ける限り続く。そんな人間の歴史を書き記す為に作られたのが未完の歴史書なんじゃ。ゴッズステイで出版されている歴史書は未完の歴史書を区切って出版しておるんじゃ」

「つまり、全ての歴史書のオリジナルであり完成するのは人間が滅びる時って事?」

「その通り。出版する際にいくつか簡略している部分が存在するんじゃが、その簡略化した部分には190年前の瘴族との戦争が含まれておったの」

「つまり未完の歴史書には更に詳しく書かれているって事ですか?」

「ああ、間違いない。わしも数多の書籍を読んだ影響で詳細は忘れてしまったが、未完の歴史書には人間はどうやって瘴族に勝ったのかが書かれておったの」

 そういえば、子供の頃読んだ歴史書には190年前にどうやって瘴族に勝ったのかを書いていなかったし、誰も知らなかった。どうしてそんな大事な部分を端折って出版してしまったのだろうか?不思議で仕方がない。

「さて、そんな話をしているうちに長い廊下を歩き終えたようじゃな。随分と歩かせたの。ここが中庭じゃ。綺麗・・・だったんじゃよ?」

 開けた場所へとたどり着くと、そこは受付よりも瘴気が蔓延しており、家一軒分の中庭のど真ん中には大きな瘴気の穴が開いていた。本当に大きくて、驚いてしまった。これまで見てきた穴は僕が腹回りくらいの大きさだったのに、ここの瘴気の穴の直径は僕の身長を遥かに超えていた。
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