記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

76話 素性の告白

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「では、中庭まで案内しよう。まず、今いる場所は分かるかの?」

 受付のすぐ右にあった階段を昇った先の二階の一部屋。

「正解じゃ。では一旦部屋から出て、受付まで戻ろうかの」

「え?何でです?だって目の前に次のフロアへと続く階段があるじゃないですか」

「あれは侵入者を騙す階段じゃ。あの階段を昇ってらこの部屋の入口に飛ばされる。それに気づかずに永遠に上り続ける仕組みじゃ」

「ある程度の知能が無いと出られない分からない仕組みになっているのか。未練残しがこの部屋に留まっていた理由は、知性を失っているからループしているだけだったのか」

「そういう事じゃの。まあ、犯罪者のいないゴッズステイにこんな仕掛け作っている事が不思議でならんがの。次は受付カウンターの足元を見てくれ。床と同じ色合いのボタンが見つからないか?」

 フレディさんの言う通り、ボタンは存在した。若干汚れるので足で踏んで押していたのだろう。僕も踏んで押してみると、床が揺れ始め、受付カウンターの真後ろにある本棚が変形して扉になった。

「凄い・・・これが昔のゴッズステイの民が作った絡繰りなんだ」

「見た感じ、認められた者しか通れない仕掛けになっているんだな」

「一定数の魔力を持った者にしか作動しないようになっているんじゃが、開いたの。お主、もしかして魔術師の才能があるのではないか?どうじゃ?浄化が完了したらわしに師事してみないか?」

「いえ、僕は騎士ですので嗜む程度で結構です。僕よりもトキの方が才能という面ではずば抜けていますよ」

「ほう・・・どれどれ、ちょっとわしを持ってみなさい。ずば抜けているのならば、触っただけで分かるはずじゃからな」

 トキにフレディさんを渡す。すると────。

「・・・・・・」

「フレディさん?」

 フレディさんは黙ってしまった。人間の様に体ないので気絶しているのか言葉を失っているか分からない。

「ん?あ、ああ、すまんの。あ、あまりに凄い魔力を一気に感じ取ったせいで気絶してしもうたわい。こんな逸材、90年間生きて来たが会った事がない。一体何処出身なんじゃ?それにその瞳の色・・・一体どの神の眷属なんじゃ?」

「実はその・・・分からなくて」

「黙ってくれるのなら言っても良いですよ」

「是非!是非聞かせておくれ」

「そういえば、俺も聞いた事が無かったな。トキは一体何者なんだ?」

「ガル、本当に言っても良いの?」

「うん。いつか言わなきゃいけない事だったし、僕ら以外誰もいない事が分かってるここなら言っても良いんじゃないかな?」

「それも、そうだね。オルタさん、フレディさん。実はわたし・・・転生者と呼ばれる存在らしいんです」

「なっ・・・」

「転生者じゃとぉ・・・!」

 突然の告白に2人は驚きを隠せずにいた。
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