記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

73話 魔術師の玩具

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「人・・・かな?」

「いいや、違うな。確かに人間みたいな足音だが、人間よりも遥かに重い。肥満とかのレベルを大きく超えている」

「気を付けてガル足音の方向から瘴気の気配がするよ」

「じゃあ、背信者・・・かな?」

 形見の剣を抜き、構える。やがてその足音の正体は姿を現す。正体は自立した人形だった。顔面に魔法陣が書かれた事以外何も特徴がない真っ白な人形。僕達を認知しているようで目は無いのに僕達の方をじっと見ている。

「魔術師達が身の回りの世話をさせる為に作った人形か?人の気配を察知してここにやってきたのか」

「ううん、あの人形から瘴気の気配がする」

「となると、人形に人間の魂が宿ったタイプの魔物か・・・よし、俺がやる。指をくわえて待っていろよ?」

 人形には武器は仕込まれていない。そもそも、返り血等浴びていない事から戦闘能力は皆無と見て良いだろう。

 副団長は鉤爪を装備すると、獣人の卓越した身体能力を駆使して天井ギリギリまで跳躍。落ちる勢いを活用して人形に袈裟斬りを仕掛けた・・・のだが。

「うおっ」

 一切無駄のない動きかつ最小にした動きで難なく避けられてしまった。鉤爪が地面に刺さり、副団長は人形をみあげる。

「・・・・惨殺モード機動」

 良くない無機質な声が聴こえてきたと同時に、人形の腕が外れ中から良く研がれた刃が姿を現した。

「やっばい・・・!!」

「排除排除排除排除排除排除排除排除」

 適切な振り方で副団長を仕留めにかかる人形。どうやらお手伝い人形ではなく、護衛人形だったみたいだ。

「副団長!!」

 慌てながら盾を手に持ち人形の刃を防ぐ。このまま押し切ろうと思ったが、力が強くて押し返せない。これが魔術師達の技術だというのか?

「弱点!弱点を見つけないと!!」
 
 何でも何者でも弱点は存在する。人間が作ったものならばなおさらだ。問題はその弱点は何処なのか分からない点だ。作った者は何処にも・・・。

「人間に当たる心臓の部分にコアが存在している。そこを貫け」

「分かりました!!オルタ副団長!一緒に押してください」

「分かった!!」

 2人で盾を押し、人形を押し倒す。それでもまだ刃を振るおうとしてきた為、刃となっている右腕を踏みつけ、その隙にオルタ副団長が胸を突き刺すと、人形は動きを止めた。

「はぁ、はぁ・・・助言ありがとうございますオルタ副団長」

「いや、俺は何も喋って無いぞ。かと言ってお前でもないよな?」

 おかしい。僕らに助言する声があったはずだ。

「ほっほっほ!わしじゃよ、わし!」

 再び声が聴こえてきたので耳で追ってみると、声の方向にあったのは一冊の古めかしい本だった。
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