記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

72話 不気味な図書館

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 魔術師達の図書館。その名の通り当初はゴッズステイにて魔術師を育てる為に様々な魔術書を補完するために作られた世界屈指の図書館。やがて、魔術師以外の知識人にも使われるようになっていき、魔術書だけでなく、様々なジャンルの原本が蔵書されるようになった。

 蔵書数は脅威の1憶2000万点。そのうち3000万が外から持ち運ばれたもので、9000万がゴッズステイで出版されている本の原本である。

 俺は行った事は無い。そもそも本はあまり好きではないので行く気になれなかったし、わざわざ原本を読むために行こうとは思えなかったので絵でしかその様子を見た事が無かった。

 紹介されていた本に描かれていた絵の魔術師達の図書館は美しいの一言で言い表せない程圧巻の造形だった。何も知らない人に絵だけを見せたら上級貴族の館だと勘違いするくらいには図書館とは思えない優美さを持ち合わせていた。

 そんな図書館が今目の前にある。瘴気が蔓延し、半壊した状態で。

「酷いな・・・これじゃあルピスも」

「いえ、大丈夫な可能性があります。彼も僕らと同じ浄化の眷属。ここにゴッズステイの全ての原本が存在しているというのなら、浄化の眷属の瘴気からの身の護り方についての本も読んでいる可能性があります。身を守って何処かに隠れているのかも」

「だと良いな。最悪の可能性は考えておけ。さもなくば上げて落とされるんだからなっ!」

 オルタは全身を浄化の奇跡を覆う。継続時間は約120分だ。

「周囲の瘴気は薄いですね・・・館内から漏れ出しているような感じがします。図書館内で瘴気の穴が発生したんでしょうか?」

「憩いの場として中庭があるらしい。恐らくそこから発生したんじゃないか?」

「じゃあ、そこを一旦目指しましょう。奇跡が保てなくなったら遠慮なく行ってくださいね。安全地帯を作るんで」

「ああ、悪いな」

 かつては豪華な装飾が施されていたであろう壊れた扉を退かし、図書館内へと入る。ちゃんと出入口から入ったので受付の前に来る事が出来た。既に受付の時点で数えきれない程の本棚と無数の本が収納されていたのだろう。足元に本が散乱している。

 人の死体は・・・何故かなかった。全員逃げられたのだろうか?だとするなら、近くの村にいるはず。つい先日最寄りの村によったが、魔術師達の図書館から来たという人はいなかった。まずありえない事と対面した為か、この施設の不気味さ増したような気がする。

 そんな中、二階へと続く階段から一定のリズムで降りてくる足音が聞こえてきた。
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