記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

68話 悪化

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「それと、最初に預かった鎧も直させておきました。ガルさんのサイズピッタリに調整したので付け心地は問題ないかと思います」

 身無しの騎士の鎧を渡される。身に着けてみると確かに僕ピッタリだ。全身をガチガチに固めるのではなく、致命傷となる心臓と首を守れるようになっていて、俊敏さを極力殺さないようになっている。直したと言っているが、ほぼ別の鎧と言っても過言ではないだろう。

「所で、いつ僕のサイズを測ったんです?」

「・・・・・・それでは皆さんお元気で!」

「いやそこは別に濁さなくてもいいだろ。やましい事じゃないんだし」

 聞いた話によると寝ている隙に女性のドワーフが僕のサイズを測ったらしい。そういえば、触手に全身を拘束される夢を見た気がするが、それが原因なのだろうか。分からないのであまり考えないでおこう。

 ブレ洞窟のドワーフ達に別れを言いながら洞窟を出て、森を出る。

 森を出るとそこに広がっていたのは、魔物が行商人達の馬車を襲う地獄のような光景だった。

 馬は既に食い殺されてしまっていて、行商人は足を食いちぎられたみたいで動けないでいる。

地獄の猟犬ヘルハウンドか・・・飼育していた猟犬が魔物化しちゃったのかな?」

「だとしたら猟犬失敗だな。飼い主を喰うとは猟犬の風上にもおけない畜生め。待ってろ、俺が仕留める」

 血みどろの赤い猟犬に近づき、噛みつかれる前に鉄の鉤爪で頭蓋ごと脳天を貫く。血を振り払う動作と同じように刺さったままの猟犬を振り払う。地面に落ちた地獄の猟犬は灰となってどこかへと流れて行く。

「おい、大丈夫か?噛まれたみたいだが、立てるか?」

「す、すまない・・・立てないし、アンタ達にお礼も出来ない・・・本当にすまない」

「お礼はいらん。勝手にこっちが助けただけだしな」

「そうかい。へへっ、悪いな。所で・・・あっちにいるカップルも助けてくれないか?俺と同じ状態らしいんだ」

「「「え・・・?」」」

 行商人の指差す先を見ると、今度は泥の手に泥沼へと引きずり込まれそうになっているカップルを見つけた。

 招き手。人間の魂が瘴気に侵された泥に宿った姿。人間の手のような姿となり、泥沼にハマってしまった人間を泥沼へと引きずり入れようとする非常に危険な魔物だ。

「何でこんなにも魔物がいるんだ?これも、瘴族が現れた影響なのか?」

「そんな風に見える・・・いや、そういう風にしか見えませんね。とりあえず助けましょう」

 カップルも当然助けられたのだが、その周辺で魔物に襲われている人は15人もいた。
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