記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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三章 魔術師達の図書館

65話 仮説

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「魂!?そんなものまでもが瘴気に汚染されるのか!?」

「あくまで推測です。なぜならどんなに体が変わっても思考が元の生物である限り人間を襲う事はないでしょう?」

 魔物化した生物は主食ではなくても人間を襲うようになる。つまりは生態が変わっているという事になる。生態とは魂に染み付いた習慣。それを瘴気によって書き換える。それこそがトキの考えた仮説であった。

「じゃあ、じわじわと汚染されていたのは体じゃなく魂って事なのか?」

「わたしの仮説が正しければ」

「・・・よく思い出してみれば、浄化の騎士団の190年前の戦いの書物にも『魔物化した仲間達をも殺して進んだ』みたいな文章も書いてあったな。浄化の奇跡を使っているのに何故と思ったのだが、そういう事だったのか」

 浄化の奇跡で体を覆い、瘴気から守るという方法を知ったのもその書物である。そして、それ以上の対抗策は書かれていなかった。

「浄化の奇跡で治せないなら対策のしようがないじゃないか」

「いえ、そんな事はない・・・と思います。魂の汚染を防ぐ方法はあると思います」

「そこは仮説よりも可能性はまだ見えていないみたいだな。一体どんな方法なんだ?」

「オルタさん、貴方です。貴方こそ、瘴気から魂を守る唯一方法の鍵だとわたしは思うんです」

「俺が鍵・・・ああ、なるほど。魔物化から元の状態に戻ったからか。納得だ。確かに俺の研究を進めれば人類は瘴気を完全に克服できるな」

「はい、ですから・・・」

「希望を見出しているようで悪いが、俺にもさっぱりだ。リリィ団長が駄目で俺が良かったのかはさっぱりだ」

「そうですか・・・オルタさんももしかして特殊な生まれだったり?」

「馬鹿野郎俺は忌み捨て子だ。そんな奴が特殊な生まれなわけないだろ」

「す、捨て子ですか・・・それじゃあ身元は調べられないかも・・・」

「悪かったな、捨て子で。それよりも気になるのが君とガルだ。二人はこれまで50以上の瘴気の穴を塞いできたんだろう?」

「はい。地元の方々の助けも勿論ありましたが・・・」

「その間君達は致死量の数百倍の量の瘴気を吸ったはずだ。ガルは耐性を持っているし、君はため込むだけで死んだり魔物化する事はないから大丈夫だったのだろうが・・・魂は大丈夫なのか?」

「た、確かに・・・」

 仮にトキの仮説が正しかったのなら、トキとガルの魂が無事な理由が分からない。

「やっぱり、仮説に過ぎなかったのでしょうか・・・」

「俺はその仮説、信じてみたいくらい好きだがな。とりあえず洞窟の中に入るぞ。死んだドワーフの埋葬を手伝ってくれ」

 わたしがオルタさんに連れられてブレ洞窟の中へと戻っていった。
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