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二章 愛の対義語
59話 リリィの独白
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私は、エルフとヒュームの間に生まれたハーフエルフ。心の無い人達は私のことを半端者、キメラと呼ぶ。
石を投げられた事もある。心の無い人だけじゃ無い。心があり、異質の存在を恐怖する人達にだ。
ハーフエルフには、不吉な伝承が存在する。他人を不幸にする。未知の病気を持っているという根も歯もない噂だ。
そんな私を両親は守ってくれなかった。生まれた直後に捨てたからだ。そのまま野垂れ死ねたらどれほどよかっただろうか。幸か不幸か浄化の神父ウル様に拾われた。
彼は親のいない私の親代わりになってくれた。とても嬉しかった。しかし、彼は皆を導く存在。いつも私を守ってくれるわけでは無い。
そんな隙を見計らって私以外のウル様に拾われた子達はよってたかって私を殴り蹴りを繰り返した。ただ一人の少年を除いて。
その少年は私よりも遥かに幼く、まだ言葉を覚えたばかりの幼児だった。しかし、彼は拙い言葉を一生懸命使い、小さな体を思い切り広げ、私を庇ってくれた。
その少年の名前はガル。私のように拾われた孤児。ただ1つ違うのが私とは違い、最初から神様に愛されていた点。彼は発見された時点で浄化の眷属だったらしく、私とは違い、みんなに愛されて生きてきた。
私をいじめていた子達もガルの事は大好きだった。だから、彼がストップをかけた途端、誰からも石を投げられる事は無くなった。
性格が捻くれてきた私は彼に情けをかけられたと思い、酷く彼を嫌った。しかし、のちに彼はただ私と仲良くしたいだけだと知った。
この時初めて悟った。彼が愛される理由を。無条件に愛されていたわけではなかったんだ。彼は心がとても美しいから愛されているんだと。
私はその美しい心に虜になった。そして彼を守る事を自分に誓い、騎士団に入り、厳しい稽古を耐え抜いた末に騎士団長に選ばれた。
その翌年にガルは騎士団の期待の新人として入団してきた。必然的に彼を知る者が増え、彼を称賛する者も増えた。
愛してる子が褒められるのを見ると嬉しい。それなのに・・・何故だか心がとても痛かった。その理由は分からない。
そんな彼が浄化の旅に選ばれてしまった。元から特別な子だったからそこまで驚かなかったけれども、私を連れていってくれなかった事にはショックを受けた。
それも私を気遣ってくれての事だって知ってたから心は壊れずに済んだ。けど、どうしても役に立ちたかった私はオルタ副団長と共に模索して、瘴気への対抗手段を見つけ、彼を追いかけた。
追いかけた末に彼を見つけた。けれども、彼の横には私の知らない少女がいた。私よりもガルと親しげな少女に私の心は今まで以上にズタズタになった。張り裂けそうだった。
ガルに癒して欲しかった。抱きしめて欲しかった。けど、彼は今、私に剣を向けている。
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ガルに癒して欲しかった。抱きしめて欲しかった。けど、彼は今、私に剣を向けている。
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