記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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二章 愛の対義語

56話 終結

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「皆さん、ご無事でしたか・・・」

 司祭が杖を突きながら僕達の所へとやって来る。しかし、右腕を完全に失ってしまっていた。

「どうしたんですか!?ま、まさか背信者となったドワーフに?」

「いいえ、違います。瘴族にです。瘴気がこちらにやってきたと思ったら、人型となり、私の腕を食いちぎったのです・・・」

「食いちぎった・・・瘴族にも食事という概念は存在しているみたいだな」

「傷を回復するために食べたのか・・・とりあえず治療を」

「いえ、大丈夫です。既に傷は癒えています」

 右腕はもう無いが、傷は塞ぎきっている再出血の可能性は無いみたいだ。

「・・・ねぇ、祭司さん。どうして彼等が瘴族だって分かったの?もしかして近くで私達の会話を聞いていたの?」

「いいえ、恥ずかしながら起きたのはついさっき。瘴族に腕をちぎられたのはそのすぐあとだったので、何が起きたのかも先程他の者から聞いて知りました・・・」

「おい、じゃあ何で瘴族だって分かったんだ?説明しろ」

 瘴族という存在は知っていても、腕を食いちぎった存在を瘴族と断定するにはそれなりの情報を得ていなければおかしい。司祭さんは何かを知っているのだろうか?

「私は200年前に生まれまして、190年前に終結した瘴族との戦争を子供として体験していました。私の両親は私を守る為に瘴族と戦いそして、死にました」

「成程、道理で知っているわけだ」

 ドワーフの平均寿命は150年。しかし、あくまで平均なので200年生きたドワーフがいても何もおかしくはないだろう。年齢を聞かずに疑った僕らの落ち度だ。

「因みにどの瘴族が司祭さんの腕を食べたんですか?」

「ほっそりとした何処にでも良そうなヒュームの青年の体格の瘴族でした。あの瘴族、何処かで見たような気がするんです・・・」

「見たというと、190年前にですか?」

「はい。190年前、瘴族は数百人で軍を作り、各地を制圧していました。その軍を取り仕切っていた4人の中の1人の顔が私の腕を食いちぎった瘴族と顔が似ていたんです」

 瘴族に関してまだ詳しい事はあまり知られてはいない。ただ、瘴気の発生と共に現れるという曖昧な情報のみだった。その間、何処で潜伏しているのか分からなかったが、今回穴から出てくる所と瘴気のように体を霧状にする能力を見た事で分かった。

「とりあえず、状況の整理は朝を迎えてからにしましょう。皆さん、お疲れさまでした」

 こうして、二度目の瘴気騒動は幕を閉じたのだが、二度あることは三度あるというように再び瘴気が発生するんじゃないかと不安で中々眠る事が出来なかった。
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