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二章 愛の対義語
34話 懐かしい感覚
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「まだいたか!」
剣を引き抜こうと柄を握る。しかし、刃が鞘に引っかかって刃を出せない。
雑な点検のしっぺ返しが最悪のタイミングでやってきてしまったみたいだ。抜けないと判断したガルは鞘ごと剣を腰から引き抜き構え、タワーシールドを構える。
その時だった。ガルとトロールの間を通り抜けた一陣の風がトロールの腹を一文字を描くように綺麗に切り裂いた。
トロールの腹にできた一文字からは血だけではなく、内臓まで漏れ出す。痛みによるショックかトロールは振り上げていた斧を手から滑り落としながら絶命した。
「ガル、怪我はないかしら?」
聞き覚えのある声が左耳のすぐ近くから聞こえてくる。ゆっくりと振り向くとそこにはリリィ団長が立っていた。
何故、ここにリリィ団長がいるのかは分からない。しかし、手には愛用の武器である片刃剣が握られており、刃には血が付着している。トロールを一撃で倒したのは彼女で間違いないみたいだ。
「良い戦いぶりだったな、無慈悲の狼さん」
「オルタ副団長」
右の方から別の聞き覚えのある声が聞こえてくる。振り向くと、不敵な笑みを浮かべたオルタ副団長が木にもたれかかっていた。
「どうして?」
「ガルが頑張ってるみたいだけど、それでも魔物の数が増え続けてて手に負えなくなったから私達も派遣されるようになったの」
「そしたらたまたまお前と出会したわけだ。無慈悲の狼さん」
ガルの二つ名を揶揄うように言い放つ。二つ名を知っている事から、ガルの3ヶ月の功績はしっかりと認知しているみたいだ。
「人っていうのは環境でガラリと変わるものだな。3ヶ月前は右も左も話からねぇクソガキだったのに、今じゃ戦い慣れた騎士だ。はっきり言ってビビってるよ」
「オルタ副団長~?」
「いやいや、今のは褒め言葉ですよリリィ団長。ガルも嫌そうには思っていないみたいですし・・・なぁ?」
「・・・・僕、そんなに変わりました?」
「ええ、酷いくらい変わった。最初は誰だか分からなかったもの」
リリィ団長はそういうとガルをゆっくりと抱きしめた。
「ごめんね、貴方1人にこんな大変な事を任せて。これからは私と一緒だからね?」
「は、はい・・・・・・」
鎧を着ている為、リリィ団長を温もりを感じる事はできないが、懐かしさを感じて瞼が重くなってくる。
寝てはダメだと思っていながらも体は正直で、数秒後には僕は無様にも意識を手放してしまった。
死んだわけではない・・・と思う。こんなにゆっくりと気持ちよく死ねる方法なんてあるわけないんだから。
剣を引き抜こうと柄を握る。しかし、刃が鞘に引っかかって刃を出せない。
雑な点検のしっぺ返しが最悪のタイミングでやってきてしまったみたいだ。抜けないと判断したガルは鞘ごと剣を腰から引き抜き構え、タワーシールドを構える。
その時だった。ガルとトロールの間を通り抜けた一陣の風がトロールの腹を一文字を描くように綺麗に切り裂いた。
トロールの腹にできた一文字からは血だけではなく、内臓まで漏れ出す。痛みによるショックかトロールは振り上げていた斧を手から滑り落としながら絶命した。
「ガル、怪我はないかしら?」
聞き覚えのある声が左耳のすぐ近くから聞こえてくる。ゆっくりと振り向くとそこにはリリィ団長が立っていた。
何故、ここにリリィ団長がいるのかは分からない。しかし、手には愛用の武器である片刃剣が握られており、刃には血が付着している。トロールを一撃で倒したのは彼女で間違いないみたいだ。
「良い戦いぶりだったな、無慈悲の狼さん」
「オルタ副団長」
右の方から別の聞き覚えのある声が聞こえてくる。振り向くと、不敵な笑みを浮かべたオルタ副団長が木にもたれかかっていた。
「どうして?」
「ガルが頑張ってるみたいだけど、それでも魔物の数が増え続けてて手に負えなくなったから私達も派遣されるようになったの」
「そしたらたまたまお前と出会したわけだ。無慈悲の狼さん」
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「人っていうのは環境でガラリと変わるものだな。3ヶ月前は右も左も話からねぇクソガキだったのに、今じゃ戦い慣れた騎士だ。はっきり言ってビビってるよ」
「オルタ副団長~?」
「いやいや、今のは褒め言葉ですよリリィ団長。ガルも嫌そうには思っていないみたいですし・・・なぁ?」
「・・・・僕、そんなに変わりました?」
「ええ、酷いくらい変わった。最初は誰だか分からなかったもの」
リリィ団長はそういうとガルをゆっくりと抱きしめた。
「ごめんね、貴方1人にこんな大変な事を任せて。これからは私と一緒だからね?」
「は、はい・・・・・・」
鎧を着ている為、リリィ団長を温もりを感じる事はできないが、懐かしさを感じて瞼が重くなってくる。
寝てはダメだと思っていながらも体は正直で、数秒後には僕は無様にも意識を手放してしまった。
死んだわけではない・・・と思う。こんなにゆっくりと気持ちよく死ねる方法なんてあるわけないんだから。
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