記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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二章 愛の対義語

33話 野蛮な戦い方

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 ガルが対峙するのは、体長2m以上の紫肌のトロール。手には血塗られた棍棒が握りしめてある。

 助けを求めた人は既に死んでしまったのかと思ったけれども、どうやら違うみたいで、助けの悲鳴をあげたと思わしきハーフリングに傷一つついていないので、別の血液だろう。

 トロールに驚き尻餅をついているハーフリングを守るようにトロールの前に盾を構えるのは、無慈悲の狼ガル。

 その目はまるで宝箱を見つけた冒険者のようにギラギラと輝いており、同時に疲労で若干充血している。みる人によってはホラーだ。

「魔物!コロス!マモノ!殺す!」

盾と剣をぶつけ、音を鳴らしながら威嚇。人間とは思えない威嚇の仕方にトロールは若干引き気味だ。しかし、それでも右手に握られた棍棒を上から下へと振るう。

「よっと!!」

 棍棒が降りてくる軌道をよく見ながらタワーシールドで頭上を防御。重たい衝撃が腕に伝わってくるが、そんな事は知ったことかと言わんばかりにそのままスライドするように前へと進む。

「ガラ空き!」

 彼の言葉通り、ガラ空きなトロールの腹に一撃お見舞いする。しっかりと地面を踏み締めた良い一撃だったが、剣の切れ味が悪すぎて表面の皮膚しか斬ることができなかった。

 その事実に舌打ちを打ちながらも更に距離を詰め、根元までしっかりと体重を込めて剣を腹に突き刺した。

「ドゥオッ!?」

「おりゃあぁ!!」

 腹に刺したまま、引き抜かずに腹の中で剣を動かき、臓器を掻き乱す。生物として絶対に損失してはいけない箇所を雑に漁られたトロールは穴という穴から血液を噴出。

 苦しみながら1分後に死亡。前のめりの倒れ始めた。

 最初から倒れてくることを予期していたガルはそれを難なく避け、雑布で雑に血を拭い、鞘へと収める。

 彼の革鎧は更に魔物の血で汚れてしまった。

 戦闘を終えた彼の瞳からはギラギラは消え失せ、まるで欲求を解放し終えた後のような表情で無理やり笑みを浮かべながらハーフリングの元へと歩み寄る。

「ひっ・・・!!」

 あまりに野蛮な戦いにハーフリングはすっかり怯え切っていた。しかし、敵ではないと認識しているみたいで、差し出されたガルの手を掴み、立ち上がる。

「あ、ありがとう・・・なんてお礼を言えば良いのやら」

「お礼なら・・・有益な情報を下さい。具体的には、瘴気に関する事とか」

「瘴気・・・ああ!」

 ハーフリングが何か知っているみたいだ。新たな瘴気の発生源を求めていたガルの目は再び光り始める。

「後ろ!後ろ見ろ!」

「・・・え?」

 ハーフリングの忠告を聞き入れ、振り返ると、そこには先程のとは別個体のトロールが斧を振りかぶっていた。
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