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二章 愛の対義語
31話 無慈悲の狼
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旅に出てからおよそ3ヶ月が経過した。瘴気は各地の至る所で発生していた。
1つ浄化し終えてもまた1つ増えたと報告を受け、また浄化を完了すると今度は2つ発生したと言われる毎日。
人々からは感謝されているが、体力が限界まですり減っている。夕日が沈みかけたと同時に眠ったら昼まで寝てしまうぐらい疲労している。
浄化の旅はやりがいはあるけれども、過酷という言葉では言い表せないほどにその旅路は辛い。
瘴気から現れた魔物を切り殺し続ける毎日。最初の頃は複雑な気持ちで見ていた血液も最早何にも感じなくなってしまった。
ただ、すり減っていくだけではない。しっかりと剣の腕も上達している。戦いのノウハウもとある村に在住していた戦士から手ほどきを受けてかなりマシになった。
それに、僕は1人じゃない。僕には頼れる相棒がいる。
「ガル、ぎゅーってして」
「良いよ、来て」
エルフの森で見つけた少女トキだ。毒や瘴気などを害なく体内に貯蔵できる彼女は僕の浄化の旅の効率を上げ、更には僕の癒しになってくれた。
「ガル目の下にクマができてる。昨日はしっかり寝た?」
「実は8時間寝てる。最近ずっとこんな感じさ。どんなに寝ても目の下のクマが取れない。しっかりと食べてるのに何でだろうね?」
「多分、疲れてるからだよ。少し休んだ方が良い。ガルは頑張ってるから休む権利がある」
「はは、そうだね。でも、ダメなんだ。僕は休んだダメなんだよ。浄化の旅は僕の使命なんだから。果たさなくちゃ僕が生まれた理由がなくなってしまう・・・」
「そんな事ないよ・・・」
ガルは騎士として急成長を遂げた。しかし、その反動で精神は擦れきれ、頭が使命に支配されるようになってしまった。
最近では、瘴気の発生は自分のせいだという訳のわからない事をいう始末である。
そんな気の狂った事を言ってしまう程に、ゴッズステイでは瘴気の発生が多発している。トキがいなかったらどうなっていたか想像に難くない。
支給された剣は所々欠けており、最早手入れではどうしようもないレベルにまで剣としてダメになっている。斬るではなく、叩き切るの領域に至っている、
盾は魔物達の猛攻からトキと自分を守った結果、まるで整備されていない道路のように凹凸ができてしまっている。
買い直した革鎧は魔物の血で赤黒い色になっている。
そんな見た目で人々を救う事から、無慈悲の狼という2つ名が付けられ、瘴気に怯える人々から尊敬と畏怖の念を抱かれるようになっていった。
1つ浄化し終えてもまた1つ増えたと報告を受け、また浄化を完了すると今度は2つ発生したと言われる毎日。
人々からは感謝されているが、体力が限界まですり減っている。夕日が沈みかけたと同時に眠ったら昼まで寝てしまうぐらい疲労している。
浄化の旅はやりがいはあるけれども、過酷という言葉では言い表せないほどにその旅路は辛い。
瘴気から現れた魔物を切り殺し続ける毎日。最初の頃は複雑な気持ちで見ていた血液も最早何にも感じなくなってしまった。
ただ、すり減っていくだけではない。しっかりと剣の腕も上達している。戦いのノウハウもとある村に在住していた戦士から手ほどきを受けてかなりマシになった。
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「ガル、ぎゅーってして」
「良いよ、来て」
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「ガル目の下にクマができてる。昨日はしっかり寝た?」
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「多分、疲れてるからだよ。少し休んだ方が良い。ガルは頑張ってるから休む権利がある」
「はは、そうだね。でも、ダメなんだ。僕は休んだダメなんだよ。浄化の旅は僕の使命なんだから。果たさなくちゃ僕が生まれた理由がなくなってしまう・・・」
「そんな事ないよ・・・」
ガルは騎士として急成長を遂げた。しかし、その反動で精神は擦れきれ、頭が使命に支配されるようになってしまった。
最近では、瘴気の発生は自分のせいだという訳のわからない事をいう始末である。
そんな気の狂った事を言ってしまう程に、ゴッズステイでは瘴気の発生が多発している。トキがいなかったらどうなっていたか想像に難くない。
支給された剣は所々欠けており、最早手入れではどうしようもないレベルにまで剣としてダメになっている。斬るではなく、叩き切るの領域に至っている、
盾は魔物達の猛攻からトキと自分を守った結果、まるで整備されていない道路のように凹凸ができてしまっている。
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そんな見た目で人々を救う事から、無慈悲の狼という2つ名が付けられ、瘴気に怯える人々から尊敬と畏怖の念を抱かれるようになっていった。
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