記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

27話 正しい殺し方とは?

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 電気の魔術を纏った矢の後すぐに放った一撃だからか、渾身の一撃とはいいがたく、僕の皮鎧を貫通する事は無かった。

 一カバチかの賭けに勝ったみたいだ。

「ふう、危なかっt・・・えぇ!?」

 革鎧の胸部分に派手に刺さった矢の穂先を見ると何かの種が植え付けられており、急成長をはじめ、ツタを生やし始めた。このまま放置していたらツタに体を拘束されてしまうと考えた僕は素早く金具を外し、皮鎧を脱ぎ捨てる。革鎧は脱ぎ捨ててもなお、植物は成長を続けていた。

「これも魔術の一種か・・・」

 革鎧を失ったのはもったいないが、気持ちをすぐに背信者のエルフへと向ける。目線を背けないまま、落とした剣と盾を拾いあげ、もう一度構える。

 すると、背信者のエルフは再び弓矢を番えて構えたのでタワーシールドを前に構えたまま、背信者に向けて突進した。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 盾の中に身を隠しながら、あまりにも情けない声を上げた突進はエルフの背信者が矢を射出する前に接触する事に成功。人間時から体重などは変わっていないようで、押し倒す事に成功した。

 後はどうやって殺すかだ。僕は今、盾越しに上から乗っかる形で動きを制限している。腕も一緒に押しつぶしているので、腰に収めているナイフを使って僕を指す事も不可能だ。後は無詠唱の魔法に気を付ければ良い。

 剣を逆手に持ち、切っ先を先にして持ち上げ、首に狙いを定める。

 エルフの背信者が抵抗する為、中々狙いが定まらない中、何度も何度も剣を振り下ろしては地面を突く。

 中々喉を刺せない事に若干の苛立ちを覚えながらも、1つの考えが頭をよぎった。

 この人は首を刺されて死にたくないのではないんだろうか?心はタスケテと願っているけれども、助け方が間違っているのではないだろうか?と。

「うわぁ!!」

 そんな事を考えていると、エルフの背信者が、手から爆発魔術を使用。盾のお陰で爆発の火に巻き込まれる事は無かったけれども、壁際まで吹き飛ばされてしまった。相手の方もゼロ距離で放った為、両手が真っ赤に火傷してしまっている。

 最早弓矢を握れないであろう手になってしまっていたが、力の源の瘴気の中にいるからなのか火傷でボロボロになった手はみるみるうちに元の綺麗で細い手へと戻っていった。

「殺し方も分からない上に再生してくる・・・どうすればいいんだろうか」

 瘴気の薄い地上まで逃げるか?いやそもそも追って来るのかすらも分からないし、遠距離武器持っている敵に背中を向ける事自体が自殺行為だ。ここで倒すしか方法がない。

 まず、力の源である瘴気を何とかしよう。瘴気さえ無くせば何かしらの制限がかかるはずだ。

 ・・・でもどうやって?

「ねぇ、ガル。わたしにも手伝える事・・・ある?」

 困り果てている中、救いの手を差し伸べてくれたのはトキちゃんだった。
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