記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

25話 背いてしまった者

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 リフレ洞窟を隅々まで探索しながら奥へと進む。目的は最奥の瘴気の穴の為、探索する意味はないのだが、長老の娘さんとの約束があるので隅々まで調べ上げる。

「トキちゃん、今してもらってる事と同時進行で良いんだけど、エルフの遺体を見つけてくれないかな?長老の娘さんのお友達らしいんだ」

「おともだち?」

「仲の良い人の事だよ」

「そうなんだ・・・それじゃあ、わたしもガルとおともだち?」

「勿論」

「でも、多分だけどここら辺にはエルフさんの体は無いと思うよ」

「どうしてそう思うの?」

「わたし達以外に人の気配が感じられないから」

「まあ、その人はもう死んでるからね気配とかはないんじゃないのかな?」

「それと、この先の魔物の気配が凄いからだと思う」

 奥へと近づくにつれて瘴気が濃くなっているのが目で見てわかる。瘴気の濃さと魔物の強さは何か関係性でもあるのであろうか?

「ねぇガル。魔物って瘴気を浴びたらなっちゃうの?」

「半分は死んで、半分は魔物になっちゃうらしい。その原因は未だに判明していないけど」

「じゃあ、人は魔物になるのかな?」

「・・・なるよ」

 人間だけ特別・・・というのは無い。人間だって魔物になる。死んだ子供の魂が魔物となったゴブリンが良い例だ。そして人間が魔物になった姿は他にも存在する。

 完全に失念していた。どうして僕は1つの可能性を考えていなかったんだろう。その可能性もあったというのに。

「ガル、一番深い所まで着いたみたい」

「そうみたいだね」

 前が見えないくらい瘴気が濃い。思わず手を前に出してしまう程だ。

「魔物がいるよ、ガル」

「・・・どのくらい強いか分かる?」

「この洞窟の中で1番強い」

 強い魔物が生まれる要因として、元から強い生物というのもありそうだ。リフレ洞窟の魔物の元の生物達のほとんどが小さな虫や爬虫類だった。

 だから体が大きくて、強大な力を持っている者が魔物になれば、必然的に洞窟1の魔物になるだろう。

「そうだよね、どうして僕は瘴気に飲まれて死んだと思ったんだろう・・・」

 瘴気の中からシルエットとして人影が見える。人影の手には弓が握られていた。しかし武器にはあまり目を奪われる事は無かった。

 僕が目を奪われたのは、顔の横から飛び出す長い耳だ。その耳を見た瞬間、長老の娘さんの末路を察してしまい、真っ暗な天を仰いだ。

「エルフの人、魔物になっちゃったんだね・・・」

「・・・背信者」

 生きたまま瘴気を浴びて魔物になってしまった人間の総称である。
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