記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

23話 多才なトキ

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 トキちゃんは出入り口から数歩先に立っていた。

「ほら、大丈夫だった」

「マジか・・・」

 彼女も僕と同じ特異体質らしい。表情は相変わらず無表情だが、変わらず元気に動けている。

 同じ能力を持つ者が同時期に同じ場所に2人。神々の悪戯だと考えてしまいそうだ。もしかしたら、僕達は運命的に元から出会うはずだったのかも・・・。

 そんな運命の人?の背後に触手が蠢いている。僕は反射でその触手に向かって携帯していたナイフをぶん投げた。

 ナイフは円を描きながら飛んでいき、触手に深々と突き刺さった。致命傷には至らなかったみたいだが、トキちゃんから引き離す事には成功した。

「はあっ!!」

 剣を逆手に握り、地面に落下した触手の本体を突き刺す。今度は致命傷を負ったみたいで、触手は力無く地面に倒れた。

「蠢く根か。雑草とかが魔物になったやつだ。大丈夫だったトキちゃん」

「うん、ありがと」

 やはり、洞窟内は魔物で溢れているらしい。戦闘能力が無いトキちゃんをこのまま連れて行って本当に良いのだろうか?

 いや、連れていくべきだろう。どこの神様かはわからないけれども啓示があったんだ。きっと彼女は今回の瘴気騒動をおさめる鍵なんだ。

「トキちゃん、絶対に僕から離れないでね」

「バッグの中に入ってちゃダメ?」

「僕もこういうところは初めてで転ぶ可能性があるからダメ。一緒に歩いて奥に進もう」

「・・・わたしに出来ることがったら言って。ガルの役に立ちたいの」

 役に立つ事。言い方はとても悪いが、彼女がこの洞窟の攻略の上で役に立ちそうにない。でも、彼女は役割を求めている。ならば、無理にでも与えるべきではないのか?

 無力な彼女にも出来る事と言えば・・・報告かな?

「それじゃあ、魔物がいたら僕に教えてくれないかな?それだけで僕達が生き残れる確率がぐん!と上がるから」

「それだけで良いの?」

「うん、後の戦うとかは僕に任せて」

「分かった・・・それじゃあ、

「うん・・・うん?」

 トキちゃんはあちこちに指を差し始めた。

「あそこにさっきと同じ魔物が隠れてる。あの壁は偽物。魔物が色を変えて隠れてる」

「えっと、トキちゃん?魔物の位置が分かるの?」

「うん、なんと無く」

 瘴気の中にいても大丈夫な体といい、まだ彼女には隠された能力があるのかもしれない。彼女に指摘された箇所に攻撃してみると確かにそこに魔物がいた。壁に擬態していたのは、擬態型のリザードマンだった。

 その後も彼女の魔物探知のおかげでスイスイと洞窟の中を進む事ができた。
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