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一章 使命と転生者
19話 エルフの死生観
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エルフの集落は、なるべく自然の形を損なわないような作りになっており、雨水を防ぐ建物も、木の中の空洞を有効活用して作っている。
エルフは金属を嫌う。僕の背中にあるタワーシールドと腰の剣を嫌そうな目で見るのはそれが理由だ。故に建物を建てる際に必要な不可欠な道具である釘をエルフは使っていない。
代わりにツタを使っているようだが、これがまた丈夫で不安定どころか、釘と同じぐらいの安定感を有している。
「どうです?ドワーフでは到底再現できない技術でしょう?」
そして、金属大好きなドワーフは金属より大嫌いである。どんな人格者エルフでも、好きあらばマウントをとりたがる。
「世間話をしにきたわけではありませんでしたね。すみません」
「いえ、お気になさらず。僕の方も突然の訪問申し訳ございませんでした」
「それこそお気にならず。さて、このままだと謝り合戦が始まってしまいますので、本題に入りましょう。我々の森で瘴気が発生したのは今からおよそ3日前のことです。2人の集落の者が発見し、1人は魔物化した植物に足をひっかけられ、瘴気に侵されてしまいました」
既に被害者が出ていたみたいだ。しかし、長老はあまり悲しんでいる様子はない。まるで遥か昔に起きた出来事のように語っている。
「悲しまないのですか?」
「自然に戻ったんです。何も悲しむことはありません。森の中で死ねるだけで幸福な方でしょう」
エルフは死を恐れず、むしろ受け入れると言うリリィ団長の言葉は本当だったのか。見た目はほとんど僕らと変わらないのに、まるで価値観が違うせいで別の生き物に見えてしまう。
「魔物はどのくらい発生していますか?」
「さあ、分かりません。ですが今のところ人的被害は出ていません。それはおそらく魔物が発生していないという事なのでしょうか?それとも、瘴気発生地から出ていないだけ?」
「後者のパターンで考えといた方がいいかと。種族差はありますが、魔物はとても賢いです。数を揃えてから襲ってくるという話もあります」
ゴブリンのようにね。
「なるほど、それはありえますね」
「因みに瘴気が発生したのはどこからですか?」
「この集落から北東に移動した先にあるリフレ洞窟の最奥から発生したみたいです」
なるほど、洞窟の最奥。だから3日前に発生したのに森の中に充満しきっていないのか。しかし、洞窟の中は瘴気で溢れかえっているんだろうな。
僕は瘴気に耐性があるとして浄化の旅に選ばれたけれども、どのくらいの瘴気に耐えられるかは知らない。もしかしたら、完全な耐性は無くて、一定量を吸収したら死んでしまうのかも?
「我々もどちらかといえば、まだ自然に帰りたくはない。だから、がんばってくれ」
「はい。ありがとうございます」
今日は探索に向かうのは既に遅い時間なので、長老のご厚意から泊まらせてもらえるようになったエルフのベッド、楽しみだ。
エルフは金属を嫌う。僕の背中にあるタワーシールドと腰の剣を嫌そうな目で見るのはそれが理由だ。故に建物を建てる際に必要な不可欠な道具である釘をエルフは使っていない。
代わりにツタを使っているようだが、これがまた丈夫で不安定どころか、釘と同じぐらいの安定感を有している。
「どうです?ドワーフでは到底再現できない技術でしょう?」
そして、金属大好きなドワーフは金属より大嫌いである。どんな人格者エルフでも、好きあらばマウントをとりたがる。
「世間話をしにきたわけではありませんでしたね。すみません」
「いえ、お気になさらず。僕の方も突然の訪問申し訳ございませんでした」
「それこそお気にならず。さて、このままだと謝り合戦が始まってしまいますので、本題に入りましょう。我々の森で瘴気が発生したのは今からおよそ3日前のことです。2人の集落の者が発見し、1人は魔物化した植物に足をひっかけられ、瘴気に侵されてしまいました」
既に被害者が出ていたみたいだ。しかし、長老はあまり悲しんでいる様子はない。まるで遥か昔に起きた出来事のように語っている。
「悲しまないのですか?」
「自然に戻ったんです。何も悲しむことはありません。森の中で死ねるだけで幸福な方でしょう」
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「魔物はどのくらい発生していますか?」
「さあ、分かりません。ですが今のところ人的被害は出ていません。それはおそらく魔物が発生していないという事なのでしょうか?それとも、瘴気発生地から出ていないだけ?」
「後者のパターンで考えといた方がいいかと。種族差はありますが、魔物はとても賢いです。数を揃えてから襲ってくるという話もあります」
ゴブリンのようにね。
「なるほど、それはありえますね」
「因みに瘴気が発生したのはどこからですか?」
「この集落から北東に移動した先にあるリフレ洞窟の最奥から発生したみたいです」
なるほど、洞窟の最奥。だから3日前に発生したのに森の中に充満しきっていないのか。しかし、洞窟の中は瘴気で溢れかえっているんだろうな。
僕は瘴気に耐性があるとして浄化の旅に選ばれたけれども、どのくらいの瘴気に耐えられるかは知らない。もしかしたら、完全な耐性は無くて、一定量を吸収したら死んでしまうのかも?
「我々もどちらかといえば、まだ自然に帰りたくはない。だから、がんばってくれ」
「はい。ありがとうございます」
今日は探索に向かうのは既に遅い時間なので、長老のご厚意から泊まらせてもらえるようになったエルフのベッド、楽しみだ。
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