記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

13話 奇跡

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「んん・・・おはよう。ガル」

「おはようトキちゃん。よく眠れたかな?」

「うん、下ろして・・・」

 怪我をしないように体勢を低くしてからトキちゃんを地面に下ろす。昨日から感じてはいたが、感情の起伏がとても小さい。まるで自分の意思で喋っていないみたいだ。

「トキちゃんはどうして僕についていくことにしたの?」

「そうするしか無かったから」

 大丈夫かなこの子。ゴッズステイ以外ならすぐに騙されてしまいそうだ。

「何処に行くの?」

「エルフの集落。昨日話した瘴気が発生しているらしいから助けに行くんだ」

「エルフって?」

 記憶が抜けているのならば、知識も抜けていても何らおかしい事ではない。むしろ言語だけ覚えているだけ幸運だと思った方が良いだろう。

「森にする種族。耳が長くて、皆とにかく長生きな種族なんだ」

「ふーん・・・」

「でも昨日も言ったと思うけど、僕は道に迷っているんだ。だからエルフを探してくれないかな?見つけたら僕に教えて欲しい」

「それは?」

「そうだね、お願いできるかな?」

「うん、それじゃあ

「OKオーケー分かった・・・ってなんて言った今」

「今から始めるからさっきみた人は忘れる」

「つまり、僕が見落としてたけど、さっき人を見たって事?」

「うん」

「ごめん!さっきの言葉撤回!その人の場所まで案内して!」

「分かった」

 トキちゃんに集中しすぎていたせいか、見過ごしてしまっていた。言葉の違和感に気づけて本当に良かった。

 トキちゃんに案内されながら辿り着いたのは、1人のエルフの女性の所だった。

「うぅ・・・」

 エルフの女性は僕達が近くまできたのに気づく事なく、右足首を手で必死に抑えている。苦悶の表情を浮かべており、とても苦しそうだ。

「大丈夫ですか?何があったんです?」

「あ、足が・・・!」

 抑えている足首を見てみると、小さな刺し傷を2箇所発見した。刺し傷との間隔的にこれは毒蛇に噛まれたんだろう。

 噛まれた箇所の半径10センチほど壊死してしまっている。

「私、死んじゃうのかな・・・」

「安心して下さい。僕が癒します」

「どうやって治すの?」

「僕は浄化の女神様の僕。この程度の毒の進行具合なら治せるんだ」

 神々の信仰者にはそれぞれ奇跡と呼ばれる魔術とは違う力を使う事ができる。浄化の女神に仕える者が仕える奇跡は浄化。ありとあらゆる物を洗浄する力である。

 汚れた水を真水に変えるだけでなく、体にとっては不純物である毒を取り除く事ができる。

 浄化の奇跡で解毒されたエルフの女性の顔色はどんどん良くなり、呼吸もすぐに整った。
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