記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

10話 森の夜

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 ゴブリンを全て討伐し終えた後、自分が森の中にかなり深めに入っていた事に気がついた。参ったな、早速浄化の神殿以外知らない状態が悪い方向へと向かってしまった。

「せっかくウル神父からエルフの集落の道筋を教えてもらったというのに」

 仕方ない。とりあえず奥へと向かうようにしよう。エルフは森のど真ん中に集落を作っているので奥へと向かえばエルフに会えるはずだ。

 まあ、今いる森が一体どこでどのくらいの範囲まで広がっているかも分からないんだけども。

「魔物はいない。まだ瘴気がここまできていないんだ」

 瘴気の進行具合も目安にするのも良いかもしれない。瘴気への耐性だけでなく、瘴気を感じ取れる能力もあったらいいんだけどな。

 しばらく歩き続ける事2時間。葉と葉の隙間から差してくる光がオレンジ色に変わってしまった。夕方になってしまったみたいだ。

 森の中なので火は焚きたく無い。光の魔法は使えるが、やはり日が暮れるまでに集落には到着しておきたかった。

「仕方ない・・・光があらんことを『シャイン』!」

 白い光が僕の目の前に現れる。その光を頼りに歩き、眠りに適していそうな場所を探しているとすぐに見つけることが出来た。

 大木の真下、ここなら急に雨が降ってきても濡れる事はない。魔物もいないので、心配する事はないというわけだ。

「何か食べないと」

 どこかの土地からやってきた言葉の中に「腹が減っては戦はできぬ」という言葉がある。別にすぐに戦うわけではないけれども、食事は生命活動の原動力だ。食べれるタイミングで食べておかなければ。

 そう思いながらガルが取り出したのは保存食の干し肉。元から硬い食べ物が好きなガルは美味しそうに干し肉を食いちぎり始めた。

 味は悪くないのだが、干している為、口から水分が奪われる。水筒の水を節約するように飲み、口内を潤す。そんな食べ方をしていると、いつの間にか干し肉は手の中からなくなっていた。

 満腹ではないが、空腹ではない。しばらく歩いた上にゴブリンとも戦ったからか瞼が重い。

 明日は早朝からこの森の中を歩き回る事になる。しっかりと眠る事にしよう。

 リュックを枕にして、瞼をゆっくりと閉じる。夢の世界へと導かれていく。

 そんな中、右足首が締め付けられる感覚に襲われ、驚いて起きてしまった。正体が気になり、右足首の方に光を向けて確認するとそれは──────。

「根っこ・・・じゃない!手だ!」

 ほっそりとはしているが、それは人の手だった。人の手が地面から飛び出し、僕の足首を掴んでいたんだ。
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