記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

9話 過酷な道のり

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 道のりの険しさは想像の遥かに上回っていた。道が荒れているという意味ではない。

 瘴気によって生まれ変わった魔物達が僕の行く手を阻むのだ。

 騎士という誰もが一度は憧れる職業に就いた僕ではあるが、その戦闘力は大した事はない。本格的な戦闘経験もこの間のマンドラコラが初めてだ。

 そんな若輩者がすんなりと魔物達を蹴散らす事ができるわけがなく、襲いかかってくる魔物の群れから逃げ回っていた。

「「「「グギャギャギャギャ!!」」」」

 襲いかかってくるのは緑色の肌を持つ小鬼ゴブリン。一体一体は僕と大差ない戦闘力だが、群を作ったゴブリンの強さはベテランの戦士でも大きなため息を吐くほどらしい。

 そして、若輩者である僕は尻尾を巻くように逃げていた。

 しかし、誤解なきように言うと別にゴブリンが怖いからとかそういう理由で逃げているわけではない。群を分断する為に逃げている。

「うわぁっ!!」

 逃げ込んだ先は木々生い茂る森の中。茂みに飛び込むや否や木の影まで移動し、ゴブリン達の挙動を観察した。

「ゴブァ?」「ゴブブァ」

 咄嗟の行動だったが、見事ゴブリンは俺を見失ったみたいだ。あれだけ離れていなかった群れが僕を探す為に分断され始めた。

「ゴブゥ・・・」

 俺の隠れている木の近くへと一体のゴブリンがやってきた。流石に木の影に隠れているかもとは思ったみたいだ。

 ゴブリンの顔が木の影から見えてくる。僕から見て首が見える位置についた瞬間、構えていた剣の先で喉を貫いた。

「ゴブァ・・・」

 喉を貫かれたゴブリンは、そのままゆっくりと死んでいった。死んだゴブリンの肉体は灰色となり、まるで灰のように風に乗ってどこかへと行ってしまった。

 魔物には必ず元の生物が存在する。マンドラゴラなら根菜のように魔物になる前は特に害の無い存在だ。

 では、ゴブリンは元は何だったのだろうか?そもそも瘴気は今回を除いて3度しか発生していないのでしっかりと解明はされていないが、元は早死にした子供なんだとか。

 あの世の生き方も分からず、この世に留まってしまった結果瘴気を浴びてしまいゴブリンになってしまったらしい。

 ゴブリンが倒されれば、元となった子供の魂は解放される。それでもまだあの世の行き方を知らない為、再び瘴気に晒されれば、ゴブリンと化す。

 これが、ゴブリンが一向に減らない理由とされている。故に瘴気は忌み嫌われるのだ。

 生物にとって悪でしかないんだ。

「だから僕が止めなきゃ・・・」

 その後、一体ずつゆっくりとゴブリンを殺していった。僕があの世への生き方を知らないので、元の魂へと戻った子供達に二の舞を踏まないように指導する事はできなかった。
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