記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

文字の大きさ
上 下
10 / 141
一章 使命と転生者

9話 過酷な道のり

しおりを挟む
 道のりの険しさは想像の遥かに上回っていた。道が荒れているという意味ではない。

 瘴気によって生まれ変わった魔物達が僕の行く手を阻むのだ。

 騎士という誰もが一度は憧れる職業に就いた僕ではあるが、その戦闘力は大した事はない。本格的な戦闘経験もこの間のマンドラコラが初めてだ。

 そんな若輩者がすんなりと魔物達を蹴散らす事ができるわけがなく、襲いかかってくる魔物の群れから逃げ回っていた。

「「「「グギャギャギャギャ!!」」」」

 襲いかかってくるのは緑色の肌を持つ小鬼ゴブリン。一体一体は僕と大差ない戦闘力だが、群を作ったゴブリンの強さはベテランの戦士でも大きなため息を吐くほどらしい。

 そして、若輩者である僕は尻尾を巻くように逃げていた。

 しかし、誤解なきように言うと別にゴブリンが怖いからとかそういう理由で逃げているわけではない。群を分断する為に逃げている。

「うわぁっ!!」

 逃げ込んだ先は木々生い茂る森の中。茂みに飛び込むや否や木の影まで移動し、ゴブリン達の挙動を観察した。

「ゴブァ?」「ゴブブァ」

 咄嗟の行動だったが、見事ゴブリンは俺を見失ったみたいだ。あれだけ離れていなかった群れが僕を探す為に分断され始めた。

「ゴブゥ・・・」

 俺の隠れている木の近くへと一体のゴブリンがやってきた。流石に木の影に隠れているかもとは思ったみたいだ。

 ゴブリンの顔が木の影から見えてくる。僕から見て首が見える位置についた瞬間、構えていた剣の先で喉を貫いた。

「ゴブァ・・・」

 喉を貫かれたゴブリンは、そのままゆっくりと死んでいった。死んだゴブリンの肉体は灰色となり、まるで灰のように風に乗ってどこかへと行ってしまった。

 魔物には必ず元の生物が存在する。マンドラゴラなら根菜のように魔物になる前は特に害の無い存在だ。

 では、ゴブリンは元は何だったのだろうか?そもそも瘴気は今回を除いて3度しか発生していないのでしっかりと解明はされていないが、元は早死にした子供なんだとか。

 あの世の生き方も分からず、この世に留まってしまった結果瘴気を浴びてしまいゴブリンになってしまったらしい。

 ゴブリンが倒されれば、元となった子供の魂は解放される。それでもまだあの世の行き方を知らない為、再び瘴気に晒されれば、ゴブリンと化す。

 これが、ゴブリンが一向に減らない理由とされている。故に瘴気は忌み嫌われるのだ。

 生物にとって悪でしかないんだ。

「だから僕が止めなきゃ・・・」

 その後、一体ずつゆっくりとゴブリンを殺していった。僕があの世への生き方を知らないので、元の魂へと戻った子供達に二の舞を踏まないように指導する事はできなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...