記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太

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一章 使命と転生者

8話 最初の目的地

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 水筒良し、替えの服良し、方位磁石良し、非常食良し、リュックのほつれ無し、剣良し、タワーシールド良し、覚悟良し。

 全ての支度が完了する。自室から出ると先輩同僚が僕を待っていた。

「ガル、死ぬなよ?」「ガルが留守の間は任せな!アタイらが守るからさ!」「魔物には気をつけてね」

 皆からの励ましの言葉に感謝を伝えながら宿舎を出て行く。最後に我が主である浄化の女神様に挨拶をするべく神殿へと向かうと、女神様の神像の前にはウル神父が立っていた。

「もうそんな時間ですか。早いですね」

「ウル神父、最初はどこに向かえば良いでしょうか?」

「そうですね・・・いつもお世話になっている行商人のお話によると、ここから4里程離れた場所にエルフの集落のある森があるみたいなのですが、そこでも瘴気が発生しているみたいですね」

「森から瘴気・・・」

 マンドラゴラの例があった事から分かるように魔物化は植物にも適用される。もし森が完全に瘴気に犯されて仕舞えば、大量の魔物が生まれることになってしまう。

 リスクが高いかつ近場であるエルフの集落を助けに行くのが最適解だろう。

「エルフの集落か・・・あんな人達放置しても良いんじゃないでしょうか?」

 そう提言するのはいつのまにか隣に立っていたリリィ団長だ。彼女はハーフエルフ・・・つまりはエルフと人間の混血なのだが、それ故にエルフの母から捨てられたという過去を持っている。

 しかも、エルフの母の出身は今から行こうとしているエルフの集落出身らしい。そういう発言をしてしまうのも納得が行く。

 しかし見捨てるわけにはいかない。感謝はされなくても良いから瘴気を抑えにいかなくては。

「神殿を出てまっすぐですね、分かりました。では、いってきます」

「ガル、本当の本当に気をつけてね。危なかったら帰ってきてね!」

 各地の瘴気を抑えるまで帰るつもりはないが会釈はしておく。これ以上騎士団のトップである団長に不安という負担を背負わせるわけにはいかない。

「ガル、馬はいるか?優しいお前なら貸してやっても良いぜ?」

「いや、やめておく。馬も瘴気を吸ったら魔物になっちゃうらしいから徒歩で行くよ」

 同僚の馬は借りずに歩きで行く。効率はぐんと下がってしまうが、馬を殺してしまうよりかはマシだ。

「それじゃあ、いってきます!」

「「「「「行ってらっしゃい!!」」」」」

 騎士団と町の皆に見送られながら僕は最初の目的地であるエルフの集落へと歩き出した。

 初めての浄化の神殿と町以外の世界。できるならば、もっと楽しい気分で旅立ちたかったな・・・。
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