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一章 使命と転生者
2話 足手纏い
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神殿の中へと入った僕は喉を枯らす勢いで叫んだ。
「皆!大変です!瘴気が発生しました!!」
突然の叫びに驚く一方、みんな信じられないと言わんばかりの表情で僕を見てきた。近くの柱に寄りかかっていた浄化騎士団副団長の獣人のオルタは僕の胸ぐらを掴みながら怒鳴る。
「喚くな!子供ではないだろう貴様は!!」
いつからかは忘れてしまったけれども、彼は僕の事が嫌いなようで、何をしてもしかめ面か叱ってくる。
「落ち着いてオルタ。ガル、一旦深呼吸して話してごらんなさい。一体何があったの?」
オルタさんを諭しながら俺に話しかけてきてくれたハーフエルフの女性の名前はリリィ。浄化騎士団の団長である。
確かに今の僕は落ち着いていない。呼吸と心が乱れていると、何も話せなくなってしまう。そう考えた僕は深呼吸をして心と息を整え、外で何があったのかを説明した。
「瘴気?それは本当なの?」
「はい・・・」
「・・・・お前が嘘はついた事はないが、実際に漏れているかこの目で確かめさせてもらうぞ」
そう言ってオルタ副団長は神殿の外を出る。僕も後に続くように外に出ると、瘴気は神殿の真ん前で停滞していた。
瘴気の中では、同僚を含めた人達が何人も倒れている。
「これが瘴気・・・!なんという禍々しさなんだ・・・!」
「・・・!狼狽えている場合じゃないわ。オルタ、すぐに神父様を呼んできて」
「・・・了解」
「わたしは町の人達を非難させにいきます」
団長の肩書きに恥じぬ指揮を取り始めるリリィ団長。しかし僕に指示は無かった。
「ガル、貴方はここにいてちょうだい」
「何故ですか!?僕も皆んなを助けに行きます!」
「ダメ!」
「理由を教えてください!!」
「就任一年目の騎士が図に載るな。団長の指示に従え。分かったな?」
「・・・はい」
リリィ団長のことだ。きっと何か訳があって僕に留まるように指示したのだろう。そう信じて僕は神殿に残る事にした。
すると、瘴気から逃げてきた町の人達がぞろぞろと浄化の神殿へと入ってきた。
瘴気の影響を受けずに逃げてこられた人もいれば、吸ってしまったのか、体が灰色に変色し、虫の息の者までいる。中には既に死んでいる者までいる。
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
避難者達の中から静かに泣く声が聞こえてくる。幼い女の子の声だ。外に出て助けに行く事もできない僕にできる事といえば、慰める事だけかもしれない。
そう思い、少女を見つけ出して話を聞いてみる。
「どうしたんだい?」
「あのね・・・アタシがね、育てたお野菜がね・・・」
よくみると少女は人形ではなく、一本の大きな根菜を抱えていた。町には畑があるのでなんらおかしい事ではない。
「こんなになっちゃったの」
その根菜に人面が浮かび上がっている事以外は。
「皆!大変です!瘴気が発生しました!!」
突然の叫びに驚く一方、みんな信じられないと言わんばかりの表情で僕を見てきた。近くの柱に寄りかかっていた浄化騎士団副団長の獣人のオルタは僕の胸ぐらを掴みながら怒鳴る。
「喚くな!子供ではないだろう貴様は!!」
いつからかは忘れてしまったけれども、彼は僕の事が嫌いなようで、何をしてもしかめ面か叱ってくる。
「落ち着いてオルタ。ガル、一旦深呼吸して話してごらんなさい。一体何があったの?」
オルタさんを諭しながら俺に話しかけてきてくれたハーフエルフの女性の名前はリリィ。浄化騎士団の団長である。
確かに今の僕は落ち着いていない。呼吸と心が乱れていると、何も話せなくなってしまう。そう考えた僕は深呼吸をして心と息を整え、外で何があったのかを説明した。
「瘴気?それは本当なの?」
「はい・・・」
「・・・・お前が嘘はついた事はないが、実際に漏れているかこの目で確かめさせてもらうぞ」
そう言ってオルタ副団長は神殿の外を出る。僕も後に続くように外に出ると、瘴気は神殿の真ん前で停滞していた。
瘴気の中では、同僚を含めた人達が何人も倒れている。
「これが瘴気・・・!なんという禍々しさなんだ・・・!」
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「・・・了解」
「わたしは町の人達を非難させにいきます」
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「何故ですか!?僕も皆んなを助けに行きます!」
「ダメ!」
「理由を教えてください!!」
「就任一年目の騎士が図に載るな。団長の指示に従え。分かったな?」
「・・・はい」
リリィ団長のことだ。きっと何か訳があって僕に留まるように指示したのだろう。そう信じて僕は神殿に残る事にした。
すると、瘴気から逃げてきた町の人達がぞろぞろと浄化の神殿へと入ってきた。
瘴気の影響を受けずに逃げてこられた人もいれば、吸ってしまったのか、体が灰色に変色し、虫の息の者までいる。中には既に死んでいる者までいる。
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
避難者達の中から静かに泣く声が聞こえてくる。幼い女の子の声だ。外に出て助けに行く事もできない僕にできる事といえば、慰める事だけかもしれない。
そう思い、少女を見つけ出して話を聞いてみる。
「どうしたんだい?」
「あのね・・・アタシがね、育てたお野菜がね・・・」
よくみると少女は人形ではなく、一本の大きな根菜を抱えていた。町には畑があるのでなんらおかしい事ではない。
「こんなになっちゃったの」
その根菜に人面が浮かび上がっている事以外は。
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