婚約破棄にて前世を思い出す。

1 婚約破棄

　頭に衝撃を受けて、覚醒した。

　目を開けると金髪の美男子が突然木の剣を地面に刺す。
　顔のすぐ横だったから風切り音が耳に聞こえた。

　剣にも音にも驚いて、身体がビクッと反応した。

「ルイナス、武術も魔法も天才だった君が、今はオークのように人に害する魔物のようになるとはね。」

　目の前の金髪の美男子がしゃがんで俺を見下ろして言う。

「(なんだ？誰だこのイケメン？それに魔法？オーク？というかここどこだ？コスプレ会場かどこかか？それになんでそんな場所で横になっているんだ？俺は……？)」

　俺はなぜか土むき出しの地面に横たわっている。
　とりあえず身体を起こそうとすると全身に痛みを感じた。

「(いってえ……なんでこんなに身体が痛いんだ？)」

「君とこんな形で婚約破棄になるなんて悲しいよ。」

　金髪の美男子が言葉とは正反対の表情を浮かべている。

「(全然悲しそうに見えないぞ？演技下手くそじゃね？っは？俺と婚約破棄？)」

「君がここにいたら、誰かが傷付く。」

「(えっ？どういうことだ？野郎と婚約するわけないだろっ？！)」

　金髪の美男子が立ち上がって両手を広げ大きな声で言う。

「私、アルスタ・ベルサザリンは決闘の要求通り、ルイナス・オリジールの学園の退学を命じる！そして私はルイナス・オリジールと婚約破棄する！」

「(アルスタ・ベルサザリン？ルイナス・オリジール？誰だし？婚約破棄ぃ？勝手にしてろよっ！)」

　大歓声が沸き起こり、大歓声に驚く。

「やっとかっ！」
「当然ねっ！」
「もう二度と姿を見せるなよっ！」
「豚令嬢ざまあっ！」

　なぜか視界がぼやけた。

「(こんなに喜ばれるなんて、侮辱されるなんて、ルイナス・オリジールって人は一体何をやったんだ？なんか、なぜか胸がぎゅっと締め付けられる。何かをしたとしてもこんなに喜ばれて、可哀想だな……)」

　アルスタ・ベルサザリンという金髪の美男子がまた俺を見下ろし言う。

「ルイナス、早く出ていけ。」

「(俺はルイナスじゃねーよっ！ってか、身体が動かないし痛いんだがっ！起き上がれないっ！声も出せないっ！何がどうなってんだよっ！？)」

「……動けないようだな。おい！こいつを運べ！」

　動かせるのは瞳だけ。
　めっちゃ嫌そうな顔をした騎士コスプレの男達四人が俺を持ち上げる。
　視界に入る彼らが持つ自分のものと思われる手足、服の上からもわかる太い手足に混乱極まる。

「こっち見んなっ！」

　騎士コスプレの一人の男に怒鳴られた。

「(見てねぇし！いや、この身体はなんだ？この豚のような手足はなんなんだっ？どうなってんだっ？)」

　その男が何かを呟くと、俺は意識を落とした。

　後にわかったことだが、スリープという眠りの魔法をかけられたようだ。