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No.1 ファーストコンタクト
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高校生活。
本来それは中学生から見れば憧れで、社会人から見れば取り戻したい虹色の日々なのである。
俺も最初のうちは憧れの高校生活に胸踊らしていたが、実際入ってみるとどうだろう、
思っていたものとは違い、虹色の日々でもなければ自分が憧れていたものでも無かったのだ。
中学と変わらないつまらない授業。つまらない行事。
何も変わらなかった。
変えようとしなかったからかもしれない。
そう気付いてからは同級生との交流もあまりしなくなり、行事もサボりがち。
そんなことをして高校生活一年目はいつの間にやら終わってしまっていて。いつの間にやら始業式の日になっていた。
「だりぃ……。」
春先とは思えない気温が俺を現在進行形で襲っている。
つまらない学校に行くために朝早く起き、満員電車に乗り、学校に徒歩で向かわなければならない。俺はいつも通りイヤホンを耳に挿して、お気に入りのバンドの曲を流す。
行きたくない学校もこうしていればまだマシになるものだ。
こうして電車から降りた俺は学校までとぼとぼと重い足をあげて歩きはじめた。
「暑い……溶ける……あ、自販機。」
久しぶりの通学で疲れた俺は、自販機でコーヒーを買い、公園で一休みしていた。
「……っぷはぁ!」
コーヒーで喉を潤し、煙草に火をつけた。一昨年くらいからか、法律が変わり煙草や酒などは17歳からとなったのだ。
煙草から煙が喉を通過し肺に染み渡る。そしてひと口のコーヒー。至福の時間だ。
「この瞬間が一番幸せだ…………」
そして煙草を最後の最後までジリジリと吸いきりコーヒーも空になった所で再びゆっくり立ち上がろうとしてスマホを見ると、
「……あれ……遅刻してね………?」
第1回、持久走大会開催、距離は公園から学校までおよそ300m。運動音痴。体力なし。喫煙者。俺にとって300mは持久走なのである、異論は認めない。
こうして変な走り方で学校まで全力疾走してる最中、前方の女子生徒がハンカチをバックから落としていた。
「おい君! これ落ちてるぞ!」
そうして振り返ったその女子生徒は可憐で、美しく、透明感のある美少女だった。一瞬見とれた。
まるで恋愛ラブコメのワンシーンかのようなシチュエーションに、ラブプラスでしかそういう青々しい展開を見たことなかった俺は動揺した。
「あっ……ありがとうございます……」
「へ、ふぇいきですよ!」
噛んだ。最悪だ。噛んだ。
美人と言うのもあるがまともに人と会話していないせいで口がうまく動かなかった。よし、急いでこの場を立ち去ろう。
そうして走り去ろうとした俺に彼女は
「あっ...お名前は…………!」
「名乗る程の者ではないですので……では…」
「……行っちゃった」
これが柏倉 桜(カシワクラ サクラ)とのファーストコンタクトであった。
本来それは中学生から見れば憧れで、社会人から見れば取り戻したい虹色の日々なのである。
俺も最初のうちは憧れの高校生活に胸踊らしていたが、実際入ってみるとどうだろう、
思っていたものとは違い、虹色の日々でもなければ自分が憧れていたものでも無かったのだ。
中学と変わらないつまらない授業。つまらない行事。
何も変わらなかった。
変えようとしなかったからかもしれない。
そう気付いてからは同級生との交流もあまりしなくなり、行事もサボりがち。
そんなことをして高校生活一年目はいつの間にやら終わってしまっていて。いつの間にやら始業式の日になっていた。
「だりぃ……。」
春先とは思えない気温が俺を現在進行形で襲っている。
つまらない学校に行くために朝早く起き、満員電車に乗り、学校に徒歩で向かわなければならない。俺はいつも通りイヤホンを耳に挿して、お気に入りのバンドの曲を流す。
行きたくない学校もこうしていればまだマシになるものだ。
こうして電車から降りた俺は学校までとぼとぼと重い足をあげて歩きはじめた。
「暑い……溶ける……あ、自販機。」
久しぶりの通学で疲れた俺は、自販機でコーヒーを買い、公園で一休みしていた。
「……っぷはぁ!」
コーヒーで喉を潤し、煙草に火をつけた。一昨年くらいからか、法律が変わり煙草や酒などは17歳からとなったのだ。
煙草から煙が喉を通過し肺に染み渡る。そしてひと口のコーヒー。至福の時間だ。
「この瞬間が一番幸せだ…………」
そして煙草を最後の最後までジリジリと吸いきりコーヒーも空になった所で再びゆっくり立ち上がろうとしてスマホを見ると、
「……あれ……遅刻してね………?」
第1回、持久走大会開催、距離は公園から学校までおよそ300m。運動音痴。体力なし。喫煙者。俺にとって300mは持久走なのである、異論は認めない。
こうして変な走り方で学校まで全力疾走してる最中、前方の女子生徒がハンカチをバックから落としていた。
「おい君! これ落ちてるぞ!」
そうして振り返ったその女子生徒は可憐で、美しく、透明感のある美少女だった。一瞬見とれた。
まるで恋愛ラブコメのワンシーンかのようなシチュエーションに、ラブプラスでしかそういう青々しい展開を見たことなかった俺は動揺した。
「あっ……ありがとうございます……」
「へ、ふぇいきですよ!」
噛んだ。最悪だ。噛んだ。
美人と言うのもあるがまともに人と会話していないせいで口がうまく動かなかった。よし、急いでこの場を立ち去ろう。
そうして走り去ろうとした俺に彼女は
「あっ...お名前は…………!」
「名乗る程の者ではないですので……では…」
「……行っちゃった」
これが柏倉 桜(カシワクラ サクラ)とのファーストコンタクトであった。
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