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不穏
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体重四十八キロに五十ミリグラム。それでも直接魔力を取り込んだから、二日半は起きないだろう。
長いなと思う。でも、その間にやるべき事をやらなければ。
レアは広いベッドに寝かされていた。薄手のネグリジェに着替えをさせられて、胸下まで布団を掛けられていた。
ユーリはレアの頬に触れる。そのまま首と鎖骨をつたって胸と胸の間に手を置いた。
「ちゃんと動いてる」
安堵するように頬を緩め、胸元に耳を置いて心音を確かめる。
トクトクと脈打つ心臓を感じてから身体を起した。
「またすぐ戻るから」
布団を顔の下まで掛け直し、ユーリはレアの元を去る。
ガチャガチャと四度の施錠音が鳴り、ユーリは薄暗い廊下を進んでいった。
「すまない、先程の!」
植物園前でレオンを見送って二時間程。丁度、講義棟から出てきたレオンに駆け寄った。当たり前だがレアが見当たらないのだろう。顔が酷く焦っていた。
「ユーリ殿下……」
息が切れている。かなり必死に駆け回ったのだろう。ユーリも呼吸を落ち着けるようにして口を開いた。
「会えて良かった。実は、あの後すぐ、研究棟の裏山で女性が倒れているという情報が入ったんだ。確認したらレアさんだった」
「たおれて……?」レオンは目を大きく開いた。ユーリは慎重に頷く。
「小さく崖になっている部分で足を滑らせたようで、仰向けに倒れていたらしい。かなり酷い怪我に意識障害があったから、高位治癒をと僕も呼ばれたんだ。傷は塞がったけど、やはり意識は戻ってない。今は城の治癒空間で治療を続けているところだよ」
「治癒空間」レオンの中では、死も危ういかなりの重症患者が入るというイメージだった。ジンジンと嫌な頭痛が頭を打つ。
「レアは、大丈夫なんでしょうか」
ユーリは首を振った。
「申し訳ない、それはなんとも。ただ出来る限りの手は尽くすつもりでいる」
「……そんな」
項垂れるレオンにユーリはゆっくり言葉を紡いだ。
「ご両親には説明済みで了承を得ている話だけど、暫くは城で様子を見ることになった。設備的にもそうだし、何より僕が付き合わて彼女はこんなことになってしまったからね」
「……はい」レオンは一度口を閉じた。「あの、レアの様子を見させていただくことはできるでしょうか?」
顔を上げてユーリを見れば、ユーリは申し訳なさそうにかぶりを振った。
「申し訳ない、宮廷治癒師以外は立ち入りを禁じているんだ」
「そう、ですか……」
「あぁ。ただ、容態に変化があった際には必ず知らせよう」
「…………はい」
レオンは消え入りそうな声で返事をした。それから唾を呑み込んでもう一度口を開く。
「レアを宜しくお願いします……」
その言葉にユーリは深く頷いた。
「任せてくれ」
長いなと思う。でも、その間にやるべき事をやらなければ。
レアは広いベッドに寝かされていた。薄手のネグリジェに着替えをさせられて、胸下まで布団を掛けられていた。
ユーリはレアの頬に触れる。そのまま首と鎖骨をつたって胸と胸の間に手を置いた。
「ちゃんと動いてる」
安堵するように頬を緩め、胸元に耳を置いて心音を確かめる。
トクトクと脈打つ心臓を感じてから身体を起した。
「またすぐ戻るから」
布団を顔の下まで掛け直し、ユーリはレアの元を去る。
ガチャガチャと四度の施錠音が鳴り、ユーリは薄暗い廊下を進んでいった。
「すまない、先程の!」
植物園前でレオンを見送って二時間程。丁度、講義棟から出てきたレオンに駆け寄った。当たり前だがレアが見当たらないのだろう。顔が酷く焦っていた。
「ユーリ殿下……」
息が切れている。かなり必死に駆け回ったのだろう。ユーリも呼吸を落ち着けるようにして口を開いた。
「会えて良かった。実は、あの後すぐ、研究棟の裏山で女性が倒れているという情報が入ったんだ。確認したらレアさんだった」
「たおれて……?」レオンは目を大きく開いた。ユーリは慎重に頷く。
「小さく崖になっている部分で足を滑らせたようで、仰向けに倒れていたらしい。かなり酷い怪我に意識障害があったから、高位治癒をと僕も呼ばれたんだ。傷は塞がったけど、やはり意識は戻ってない。今は城の治癒空間で治療を続けているところだよ」
「治癒空間」レオンの中では、死も危ういかなりの重症患者が入るというイメージだった。ジンジンと嫌な頭痛が頭を打つ。
「レアは、大丈夫なんでしょうか」
ユーリは首を振った。
「申し訳ない、それはなんとも。ただ出来る限りの手は尽くすつもりでいる」
「……そんな」
項垂れるレオンにユーリはゆっくり言葉を紡いだ。
「ご両親には説明済みで了承を得ている話だけど、暫くは城で様子を見ることになった。設備的にもそうだし、何より僕が付き合わて彼女はこんなことになってしまったからね」
「……はい」レオンは一度口を閉じた。「あの、レアの様子を見させていただくことはできるでしょうか?」
顔を上げてユーリを見れば、ユーリは申し訳なさそうにかぶりを振った。
「申し訳ない、宮廷治癒師以外は立ち入りを禁じているんだ」
「そう、ですか……」
「あぁ。ただ、容態に変化があった際には必ず知らせよう」
「…………はい」
レオンは消え入りそうな声で返事をした。それから唾を呑み込んでもう一度口を開く。
「レアを宜しくお願いします……」
その言葉にユーリは深く頷いた。
「任せてくれ」
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