6 / 55
仲違い2
しおりを挟む
そんなわけで、私は植物園に案内をされた。奥にある椅子に腰掛けて、目の前には豪華な食事が二人分。
あれ……、なんで私の分まで?
首を傾げて混乱をしていれば、王子からは
「良かったら」と勧められた。
用意までして貰って、そんなものを断るわけにはいかないので「あ……、ありがとうございます」と固くなりつつも有り難くいただくことにした。
「ところで」
食事もそこそこに進んだ頃、唐突に王子が畏まったふうに話を切り出した。
「入学から少し経ったけど、レアさんは勉強の方はどう?」
「へ……」
思わぬ話題につい間抜けな声が出た。
これまでの話といえば、学園行事や王都のお祭りやらワイワイと楽しい話題が多かった。だから、私も浮かれて楽しんでいたのだが、まさか苦手な分野に斬り込まれてしまうとは……。
「えっと……」
嘘はいけないけど、本当のことも言いづらかった。学力で寮に落ちると言うのは、つまり平均以下であることを意味していた。
だから一応、今の私は、レオンに勉強を教わっているのだが、それはそれで中々集中もできていないのだ。
「可もなく不可もなくというところでしょうか……」
思いっきり視線が泳いでしまった。
「へぇ、それは凄い。良い先生がいるのかな?」
ビクッと肩が揺れた。
「いえっ、いえいえ、そんなことは……」
焦って俯いて、顔が赤くなる。けれど、王子に誤魔化してもしょうがないと本当のところを話すことにした。
「……実は結構躓いています」告白すれば、王子はさして驚くこともなく「やっぱりか」と顎に手を当てていた。
「入ってから半年は魔法学の理論を詰め込まれるから戸惑ったり躓く子が多いと聞いてね。僕の研究分野が教育関係だから、気になってたんだ」
そういえば、二年になると興味のある分野をより深め、研究をしていくカリキュラムがあると聞いたことがある。
王子は教育関係なんだ……。国でも数少ない最高位の魔術を扱える人が、意外と普通なんだなぁとか思ってしまう。
「それで、ここからが本題なんだけど――」
言いながら王子は従者から一冊のノートを受け取った。それを私に差し出してくる。
「少しでもそんな子たちの力になりたいと思って、本に纏めていてね。これは試作なんだけど、良かったら感想を聞かせてもらえないかな」
「えっ……、でも、私なんかが……」
小さく首を振れば、王子は真っ直ぐな瞳を私に向けてくる。
「君のような子にこそ手に取って貰いたいんだ」
その言葉に妙な納得感を得てしまった。
王子の目指すところでは、地頭が優れ、授業に難なくついていける学生じゃ意味がないのだ。私のように筋金入りの鈍臭さがなければ、理想のものを作り出せないのだろう。
「えっと、私、本当に勉強の類は苦手で……」
寮に落ちたくらいだし、と五回ほど頭で唱えた。
「お力になれるかわからないのですが……」
チラリと覗いた王子は爽やかに笑んでいた。
「そうであったならこれはまだ未完成というだけだ。是非、明け透けな感想を教えて欲しい」
明け透けな……。
正直、期待通りの反応ができるか不安だった。けれど、これが上手くいけばレオンに面倒を見てもらうことを一つ減らせるという下心もあったので、私は遠慮がちに頷いた。
「……は、はい。では」
おずおずとノートを受け取った。
あれ……、なんで私の分まで?
首を傾げて混乱をしていれば、王子からは
「良かったら」と勧められた。
用意までして貰って、そんなものを断るわけにはいかないので「あ……、ありがとうございます」と固くなりつつも有り難くいただくことにした。
「ところで」
食事もそこそこに進んだ頃、唐突に王子が畏まったふうに話を切り出した。
「入学から少し経ったけど、レアさんは勉強の方はどう?」
「へ……」
思わぬ話題につい間抜けな声が出た。
これまでの話といえば、学園行事や王都のお祭りやらワイワイと楽しい話題が多かった。だから、私も浮かれて楽しんでいたのだが、まさか苦手な分野に斬り込まれてしまうとは……。
「えっと……」
嘘はいけないけど、本当のことも言いづらかった。学力で寮に落ちると言うのは、つまり平均以下であることを意味していた。
だから一応、今の私は、レオンに勉強を教わっているのだが、それはそれで中々集中もできていないのだ。
「可もなく不可もなくというところでしょうか……」
思いっきり視線が泳いでしまった。
「へぇ、それは凄い。良い先生がいるのかな?」
ビクッと肩が揺れた。
「いえっ、いえいえ、そんなことは……」
焦って俯いて、顔が赤くなる。けれど、王子に誤魔化してもしょうがないと本当のところを話すことにした。
「……実は結構躓いています」告白すれば、王子はさして驚くこともなく「やっぱりか」と顎に手を当てていた。
「入ってから半年は魔法学の理論を詰め込まれるから戸惑ったり躓く子が多いと聞いてね。僕の研究分野が教育関係だから、気になってたんだ」
そういえば、二年になると興味のある分野をより深め、研究をしていくカリキュラムがあると聞いたことがある。
王子は教育関係なんだ……。国でも数少ない最高位の魔術を扱える人が、意外と普通なんだなぁとか思ってしまう。
「それで、ここからが本題なんだけど――」
言いながら王子は従者から一冊のノートを受け取った。それを私に差し出してくる。
「少しでもそんな子たちの力になりたいと思って、本に纏めていてね。これは試作なんだけど、良かったら感想を聞かせてもらえないかな」
「えっ……、でも、私なんかが……」
小さく首を振れば、王子は真っ直ぐな瞳を私に向けてくる。
「君のような子にこそ手に取って貰いたいんだ」
その言葉に妙な納得感を得てしまった。
王子の目指すところでは、地頭が優れ、授業に難なくついていける学生じゃ意味がないのだ。私のように筋金入りの鈍臭さがなければ、理想のものを作り出せないのだろう。
「えっと、私、本当に勉強の類は苦手で……」
寮に落ちたくらいだし、と五回ほど頭で唱えた。
「お力になれるかわからないのですが……」
チラリと覗いた王子は爽やかに笑んでいた。
「そうであったならこれはまだ未完成というだけだ。是非、明け透けな感想を教えて欲しい」
明け透けな……。
正直、期待通りの反応ができるか不安だった。けれど、これが上手くいけばレオンに面倒を見てもらうことを一つ減らせるという下心もあったので、私は遠慮がちに頷いた。
「……は、はい。では」
おずおずとノートを受け取った。
22
お気に入りに追加
976
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる