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裏側1

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 彼と付き合い始めたのは一年前のことだった。
 妹のメティシアを待っている時に、声を掛けられたことがきっかけで仲が深まった。
 特に後ろめたいことがあるわけではなかった。けれど、周りには隠している関係だった。それは互いが色恋に奥手だったからという理由が一番しっくりくる。
 共にある時間に好奇の目を飛ばされたくはなかったのだ。
 会うのは、ユリウス王子とメティシアが会っている間だった。互いに付き添いとして二人に伴って、私に用聞きに来るというテイでハイデルとは逢瀬を重ねた。

 その話を聞いたのは、付き合いも半年頃のことだった。
「ユリウス様はどうしてああも愛情が曲がりきっているのでしょうか」
 そんな言葉が彼――ハイデルからため息混じりに落とされた。
「愛情?」
 それは浮気体質なところだろうかと首を傾げる。
 そのせいで、妹周辺の人間関係は酷いものだった。
「はい、ユリウス様はあれでいてメティシア様を溺愛されているのです。しかし――」
「えっ⁉︎」思わず声を上げた。
「何を仰っておられるの? それはあり得ないでしょう……」
 間近で妹への仕打ちを見てきた私には、到底信じ難い言葉だった。
 しかし、ハイデルはきっぱり首を振る。
「それが、あり得るのです。実はユリウス様は――」
 そこから聞いた話に絶句した。
 どうやら、王子は幼き頃メティシアから言われた些細な喧嘩の些細な言葉を気にしているらしい。
 ハイデルは王子より三つほど歳上だった。王子の物心がついた頃より話し相手として仕え始め、今に至る。そんな王子のことを主人であり、友人であり、弟のように想っていると話していた。
 だからこそ長年の恋慕を拗らせ、真逆の道を進む王子が見ていて辛いと。
 このままでは、王子の恐れていた事態が現実になる気しかしないと言っていた。

 それはそうだろうと私は思った。
 むしろそうなってくれたらとも。
 けれど、メティシアもまた王子に対して抱いているものがあることを知っていた。

 
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