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王子の想い2

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 会場に入れば、流石に顔面が引き攣った。
 奇怪な面の人間がゾロゾロと、互いに卑しい目向け合っているのだ。
 二人では目立つので、ハイデルとは別々に入るという約束を結んでいた。しかしこれでは、後から来るハイデルの反応が思いやられる。
 まず絶望に立ち尽くすだろうなと想像がついた。
 目立たぬように、それでいて周囲に隈なく目を走らせる。
 やがて会場奥にてメティシアを発見した。
 どうやらまだ一人のよう。
 安堵を覚えると共に焦りを感じた。
 彼女はこの会場でいかにも異質な存在だったのだ。
 明らかに抜きん出た美しさを持っていた。
 無論外見もそうではある、但しこの場合は存在としての純粋さだ。
 露出を控えたドレスを身に纏い、羞恥と好奇を明け透けに漏らしていた。
 それは、さながら上質の餌が自ら食われようと魅力を振り撒くよう。性癖を拗らせた獣共がメティシアに目を光らせていた。
 早くこの場から連れ出さねば。奴らの視界に移すのも不愉快だ。
 早速近付こうとしていた男を視線でいなす。
 急ぎ足でメティシアに声を掛けた。

「こんばんは」

 声を掛ければそれだけでメティシアは肩を震わせた。

「は、はい!」

 声までうわずって、本当に可愛らしいと笑みが溢れる。
 

「そんな可愛らしい反応をしていては、誘拐されてしまいますよ?」
「誘拐……」
「はい、此処には悪い男が沢山おりますから。勿論、私も」

 だから早く帰ろう。君にはこんな場所は相応しくない。
 そういう意図だった。
 けれど彼女は何を思ったか、暫く考えを巡らせたのち、僕の手を取った。

「何処へでも。何処へでも連れ去ってください!」

 羞恥に顔を赤らめて、必死に懇願するメティシア。
 本当は、連れ出してすぐに家へと送る予定だった。
 しかし――プツッと理性が途切れていく。
 気が付けばメティシアの肩を抱いていた。

「……じゃあ、二人になれる所へ行こうか」

 そんな言葉にすら素直に頷く彼女に、悪い心がスクスクと育っていくのを感じた。

 
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