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仕返し

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 社交シーズンとはほぼ毎日のように夜会が開かれる。
 とはいえ私のような壁の花には苦痛でしかない時間である。
 いつもなら!

 今日も今日とて、王子と共に会場入りをする。それから、すぐに私を姉に預けて去っていった。
 周りにはすぐに女性の壁が出来上がり、背丈のある王子は頭なんかか突き出して優雅に微笑んでいた。
 たまに楽しげにウインクを送られる。
 私は楚々と手を振り笑みを返す。
 今日の私はすこぶる機嫌が良かったのだ。

「そういえば、この前の夜会は上手くいったの? 何も動いてないみたいだけど」
 姉がイケメン観察に目を光らせながら私に問うた。
 私はニマリと口角を上げた。
「えぇお姉様。最上の出会いがありました」
「……? そうなんだ」
 あまり興味もなさそうに、姉は小首を傾げる。
「後でご紹介しますね。中々可愛らしいお顔立ちなんです」言えば姉は目を光らせた。
「宜しく!」

 そうして暫くは息を顰めていた。
 彼も見る限りは同姓同士で楽しんでいる。
 本当は、すぐに近寄りたいところだが、呪われると避けられている私が動けば悪目立ちだ。
 そういうのは後に取っておかなくちゃ。
 そう思いながら、私は持っていたグラスをワザと自分のドレスに引っ掛けた。
「あっ」声を出して、困った顔をする。
「すいませんお姉様、私ちょっと替えのドレスに着替えてきます」
「うん」
 ボソリと告げる姉を横目に、そっと会場を後にした。
 まずは楽しみの一つ、フォルムチェンジである。
 今から着るのは、肩とデコルテがガバッと開いた可愛らしい白とピンクのふわふわドレス。
 こういうのを着てみたかったんだ……!
 そして髪もシルクのリボンを編み込んでまとめ上げる。
 動くたびに揺れるリボンに気分も上がる。
「どうですか⁉︎」
 屋敷から着いてきてもらったメイドさんに問う。
 困ったような表情を浮かべていた。
「お、お嬢様……、こういうのはユリウス様に怒られてしまうのでは……」
「大丈夫、大丈夫!」
 言いながら、軽快に部屋を出る。
 ダンスタイムを狙って会場に足を進めた。
 カルロとは扉の前で待ち合わせをしている。
 誰にも有無を言わせない為だ。
「お待たせしました! どうですか?」
 初めてした華やかな装いに胸が高鳴る。
 実はドレスもリボンも、カロルが用意をしてくれた。
 本当はミリアさんに贈るはずだったものらしい。
 もう必要ないからと、譲ってくれたのだ。
 カルロは目を張って暫く黙っていた。それから嬉しそうな笑みを浮かべ「素敵です」と。
「ありがとうございます! ですが、すいません、私などが着ることになってしまって」
 言えばカルロはかぶりを振った。
「とんでもないです。メティシア様にとてもよく似合っています。凄く綺麗で……」
 カルロはそっと目を逸らした。
「なんだか恥ずかしいですね……」
 真っ向から褒められるのは初めてなので照れてしまう。
 顔を熱くすればカルロも頬を掻いていた。
「それは……、俺もです」
 温かい空気が流れている気がする。
「では行きましょうか!」
 私はカルロに手を伸ばす。
「はい!」
 カルロは喜色溢れる笑みを私に向け、私はカルロに腕を絡めていった。
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