婚約破棄目当てで行きずりの人と一晩過ごしたら、何故か隣で婚約者が眠ってた……

木野ダック

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二回目の仮面舞踏会1

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 ふふふ……、とほくそ笑む。
 二回目ともなれば慣れたモンだ。
 奇妙な仮面を顔に付け、私は拳を握って気合を入れた。
 今度こそ!
 声と輪郭に特に注意しないとね!
 あとは、背丈と瞳の色も……。
 姉と話し合った注意事項を指折り思い出す。そんなところで話し掛けられた。
 なぞるようにその男を見定める。
 背はよし、王子より低い。
 輪郭は王子よりやや丸め。
 声なんかは全然違うし、瞳も違う色!
 これは絶対別人だ!!
 手早く会話をしてから、そそくさ部屋へと連れ込んだ。
 気が急いたせいで、殆ど私から強引に誘い込む形となる。
 でも別に良い。どうせ、二度とは関わるまい!
 部屋に入ってすぐにキスをした。そのまま倒れ込んで身体が重なっていく。
 これで正真正銘、破談に……!
 頬を緩めたその瞬間、男はガバッと身体を起こした。
「あのっ……!」
 仮面越しでも引き攣っているのがよく分かる。
 何か様子がおかしいぞ……。
「……はい?」
 寝転んだままおずおずと返してみる。私とて顔が強張った。
 今から会場に戻ってもまだ引っ掛けられる……? 最低なことを考えたりしたものだ。
「ごめんなさい!」
「えっと……?」
 まさかのチェンジ?
 自尊心がちょっぴり傷付いた。
「やっぱりダメだ!」
「じゃ、じゃあ……一度会場に……」
 出来るだけ穏便に済ませようと試みた。
 しかし何やら男はしんみり語り出す。
 私の上に乗ったまま。
「俺、好きな子を諦めるために来たんだけど……」
「えっ……えぇ?」
 なんか重たい話になってきた。
 その上、嘆くように頭を振っている。
「やっぱりダメだぁ!」
 そして、仮面を引っ剥がした。
 中から可愛らしい顔立ちの青年が。
 お姉様が好みそうだなと思う。
「あの、えっと……」
 なんとなく私も仮面を剥がす。
「は、初めまして……?」
 青年は目を剥いた。未だ私の上に跨がって、唖然と口を開けていた。
「あっ、貴方は……!」
 曲がりなりにも侯爵家の次女である。そして壁の花とも名高い私の顔は、存外有名らしい。
「メティシア・カーラスと申します」
 一応笑っておいた。名は隠したって無駄だろう。
 
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