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仮面舞踏会にて
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そんなわけで早速二日後、仮面舞踏会とやらに潜入した。ツテは、勿論お姉様。
どこぞの阿保王子のせいで、私は同姓の友人すらいなかった。
所謂、嫉妬というやつだろう。女タラシ王子のとばっちりで、婚約者たる私の周りに気付けば人はいなかった。
その点、姉は趣味を活かして交友関係が広い。どう活かすのかは正直知らないが、お金になるよ……と怪しげな笑みだったので流しておいた。
招待状代わりと渡された奇怪な面を顔に付け、緊張しながら会場へと進み入る。
良さそうな人を物色した。
初めてだし、優しい人が良いよね……。
出来れば背が高くて、良い声で……。
ついつい欲が出てしまう。
とはいえ、一番の目的は初体験。
手頃に良さそうな人を――
そう見渡した時、ふと声を掛けられた。
「こんばんは」
何年振りに男性に声を掛けられただろう。
それだけで胸が高鳴った。
ちなみに、王子はカウントしていない。あれは悪魔だから男性ではない。
「は、はい!」
緊張で声がうわずるという醜態。仮面があって良かったと安堵する。
そんな私を男性は薄く笑った。
「そんな可愛らしい反応をしていては、誘拐されてしまいますよ?」
「誘拐……」
「はい、此処には悪い男が沢山おりますから。勿論、私も」
形の良い唇が綺麗な弧を描いていた。
私はハッとする。
これだ! これが、夜のお誘いというやつだ! と。
姉から大体の作法は聞いていた。
誘う時、あからさまに『ベッド行きません?』とか言わないことを。
例えそういう目的であっても、趣深いお誘いをされるから思考を巡らせるように、とも。
そんな私は、慌てて男性の手を取った。
仮面越しに美しい瞳をしっかり見る。
「何処へでも。何処へでも連れ去ってください!」
こんな感じだろうかと内心ドキドキした。
男性も暫く固まっていて、ややあって小さく頷いた。
私の肩を抱く。男性の大きな手に身体がピクリと跳ねた。
「……じゃあ、二人になれる所へ行こうか」
その声に、ぎこちなくも頷いた。
どこぞの阿保王子のせいで、私は同姓の友人すらいなかった。
所謂、嫉妬というやつだろう。女タラシ王子のとばっちりで、婚約者たる私の周りに気付けば人はいなかった。
その点、姉は趣味を活かして交友関係が広い。どう活かすのかは正直知らないが、お金になるよ……と怪しげな笑みだったので流しておいた。
招待状代わりと渡された奇怪な面を顔に付け、緊張しながら会場へと進み入る。
良さそうな人を物色した。
初めてだし、優しい人が良いよね……。
出来れば背が高くて、良い声で……。
ついつい欲が出てしまう。
とはいえ、一番の目的は初体験。
手頃に良さそうな人を――
そう見渡した時、ふと声を掛けられた。
「こんばんは」
何年振りに男性に声を掛けられただろう。
それだけで胸が高鳴った。
ちなみに、王子はカウントしていない。あれは悪魔だから男性ではない。
「は、はい!」
緊張で声がうわずるという醜態。仮面があって良かったと安堵する。
そんな私を男性は薄く笑った。
「そんな可愛らしい反応をしていては、誘拐されてしまいますよ?」
「誘拐……」
「はい、此処には悪い男が沢山おりますから。勿論、私も」
形の良い唇が綺麗な弧を描いていた。
私はハッとする。
これだ! これが、夜のお誘いというやつだ! と。
姉から大体の作法は聞いていた。
誘う時、あからさまに『ベッド行きません?』とか言わないことを。
例えそういう目的であっても、趣深いお誘いをされるから思考を巡らせるように、とも。
そんな私は、慌てて男性の手を取った。
仮面越しに美しい瞳をしっかり見る。
「何処へでも。何処へでも連れ去ってください!」
こんな感じだろうかと内心ドキドキした。
男性も暫く固まっていて、ややあって小さく頷いた。
私の肩を抱く。男性の大きな手に身体がピクリと跳ねた。
「……じゃあ、二人になれる所へ行こうか」
その声に、ぎこちなくも頷いた。
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