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記憶喪失だったとか……1
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目が覚めたら朝だった。
目が覚めたらお城だった。
そんな私から出た朝の開口一番は――
「最悪な既視感だ……」
分かっているけど見たくない。見たくないけど見てしまう。そんな優柔不断を決めながら、恐る恐る覗いた隣は、朝日そのものみたいにキラキラな寝顔を晒す王子がいた。
うわぁ、うわあ。本当、最悪だ……。
私結局、王子になんの話も出来ないまま寝ちゃったんだ……。
いつもみたいに流れに流されたままに寝落ちしちゃったんだ……。
しかも、昨日のは完全なる自己責任。
お城で出されたものは一切飲み食いしてないから、ようは私の体力不足。忍耐不足っていうわけだ。
アスラにあんなに格好良さげに啖呵切った癖に結局寝落ちとか……。
流石に自分に呆れつつ、そういえば手足が重くないことに気がついた私はゆっくり起き上がる。
なんだ、あの重々しい枷は外してくれたんだ。と思って、起き上がった私の格好は、以前着てたのより更にバージョンアップした純白フリフリな可愛すぎるネグリジェだった。
これって一体誰の趣味なんだ……?
絶対私と趣味合わないな。
そんなことを考えていれば、春のそよ風みたいに爽やかな声が私の耳元をくすぐった。
「おはよう。よく眠っていたね」
そんなに顔を近づけて言わなくても……。
朝一発目から引き気味に、なんなら身体もちょっと引きながら横を向く。
なんかお布団の中に入れてある手元から、ジャラっと不穏な音が聞こえた気がしたけど、取り敢えず。
「……おはようございます、イルヴィン様」
向いた顔は、これまた太陽にみたいに光り輝いていた。
そして、すかさず近寄る顔。勿論、私もジャララと金属音を響かせて距離を取り――って。なに、ジャララ?
再び耳を掠めた、くぐもった金属音。
普通なら、なるはずのない金属音。
布団から……? そういえば、手は軽くなったけど、なんか違和感が……。
嫌な予感と共にゆっくりと手を引き上げてみる。
すると、そこには――
「……なんだこれ⁉︎」
鉄ではなくて、革製の手枷がしっかり左手首に付いていた。しかも、それは鎖で……。
「あ、気が付いた?」
王子の右手首と繋がっていた。
しかもお揃いの革手枷。なんでこんなとこまで、恋人っぽく仕上げてんだ。
「ほら、鉄製だと冷たいし、痛そうだったから。それにほら、運命の赤い糸っていうでしょ」
なるほど、私と王子を繋ぐ無骨な鎖には、鮮やかな赤に染められたシルクが丁寧に編まれていた。
うわぁ……。
なんて、おどろおどろしい赤い糸……。
普通に顔を引き攣っていく。
隠すことなくドン引きしていれば、コンコンっと軽快なノックと共に側近さんが入ってきた。
「おはようございます。朝食の支度が整いました。準備させていただいても宜しいですか?」
後ろに控えるワゴンには、またも朝とは思えぬ豪勢な料理の数々が見え隠れ。卑しい私は、ふわりと香る良い匂いだけで生唾を飲み込んでしまったりする。
そんな私を見てか、王子はふっと笑って「頼むよ」なんて言葉を返していった。
目が覚めたらお城だった。
そんな私から出た朝の開口一番は――
「最悪な既視感だ……」
分かっているけど見たくない。見たくないけど見てしまう。そんな優柔不断を決めながら、恐る恐る覗いた隣は、朝日そのものみたいにキラキラな寝顔を晒す王子がいた。
うわぁ、うわあ。本当、最悪だ……。
私結局、王子になんの話も出来ないまま寝ちゃったんだ……。
いつもみたいに流れに流されたままに寝落ちしちゃったんだ……。
しかも、昨日のは完全なる自己責任。
お城で出されたものは一切飲み食いしてないから、ようは私の体力不足。忍耐不足っていうわけだ。
アスラにあんなに格好良さげに啖呵切った癖に結局寝落ちとか……。
流石に自分に呆れつつ、そういえば手足が重くないことに気がついた私はゆっくり起き上がる。
なんだ、あの重々しい枷は外してくれたんだ。と思って、起き上がった私の格好は、以前着てたのより更にバージョンアップした純白フリフリな可愛すぎるネグリジェだった。
これって一体誰の趣味なんだ……?
絶対私と趣味合わないな。
そんなことを考えていれば、春のそよ風みたいに爽やかな声が私の耳元をくすぐった。
「おはよう。よく眠っていたね」
そんなに顔を近づけて言わなくても……。
朝一発目から引き気味に、なんなら身体もちょっと引きながら横を向く。
なんかお布団の中に入れてある手元から、ジャラっと不穏な音が聞こえた気がしたけど、取り敢えず。
「……おはようございます、イルヴィン様」
向いた顔は、これまた太陽にみたいに光り輝いていた。
そして、すかさず近寄る顔。勿論、私もジャララと金属音を響かせて距離を取り――って。なに、ジャララ?
再び耳を掠めた、くぐもった金属音。
普通なら、なるはずのない金属音。
布団から……? そういえば、手は軽くなったけど、なんか違和感が……。
嫌な予感と共にゆっくりと手を引き上げてみる。
すると、そこには――
「……なんだこれ⁉︎」
鉄ではなくて、革製の手枷がしっかり左手首に付いていた。しかも、それは鎖で……。
「あ、気が付いた?」
王子の右手首と繋がっていた。
しかもお揃いの革手枷。なんでこんなとこまで、恋人っぽく仕上げてんだ。
「ほら、鉄製だと冷たいし、痛そうだったから。それにほら、運命の赤い糸っていうでしょ」
なるほど、私と王子を繋ぐ無骨な鎖には、鮮やかな赤に染められたシルクが丁寧に編まれていた。
うわぁ……。
なんて、おどろおどろしい赤い糸……。
普通に顔を引き攣っていく。
隠すことなくドン引きしていれば、コンコンっと軽快なノックと共に側近さんが入ってきた。
「おはようございます。朝食の支度が整いました。準備させていただいても宜しいですか?」
後ろに控えるワゴンには、またも朝とは思えぬ豪勢な料理の数々が見え隠れ。卑しい私は、ふわりと香る良い匂いだけで生唾を飲み込んでしまったりする。
そんな私を見てか、王子はふっと笑って「頼むよ」なんて言葉を返していった。
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