姉の代わりに初夜を務めます。そしたらサヨナラです。

木野ダック

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初夜オムニバス1・献身の初夜

後日談・お悩み解決

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 屋敷へ戻った私は、興奮冷めやらぬままにラシュエル様の元へと押し掛けた。
 時は八時過ぎ。この時間なら、いつもの書斎にいる筈だった。
「ラシュエル様! ただ今戻りました!」
 夜間なのに堪えきれずに大きな声が出る。
 流石のラシュエル様も、驚いたように私を見た。
「あ……あぁ、おかえり」
「あのっ!」
 私はズカズカとラシュエル様の元へと近付いた。
 ラシュエル様はただ今ソファに腰掛けていらっしゃる。
 私は失礼しますと横に座った。
「なにか様子がおかしくはないか……?」
「そんなことはありません」
「そうか?」
 ラシュエル様は、明らかに困惑されていた。
 怖気付きそうになるところで、お姉様のことを思い出し、私はラシュエル様に抱きついた。
「っな⁉︎」
 ラシュエル様が大きな声を上げられた。
「……ラシュエル様。あの、あの……」
 言葉で言うより行動で示そう。何故かそう思い立ち、私は初めて自分からラシュエル様に口付けをした。
「……っん」
 とはいえ流石に恥ずかしいのですぐに離す。顔は見れないので、とにかく抱き付いた。
「イリス、なにかあったのか?」
 神妙に尋ねるラシュエル様に怯みそうになるけれど、それを堪えて想いを告げた。
「ラシュエル様、私っ……。ラシュエル様に触れたくて触れたくて仕方がないんです。我慢しておりましたが、もう限界で」
 あまりの限界で、私はラシュエル様の耳を喰んだ。ラシュエル様が身を強張らせる。
「らいすきれす、ラシュエル様」
 告げれば、ラシュエル様の手に力が篭るのを感じた。その手は艶かしく私の髪や肌をなぞっていく。
「悪いが俺も限界だ」
 その言葉に、私の頭は溶けていく。
 パタリと倒れ、寝室にも戻らず肌を重ねていく。
 何も我慢は出来なかった。触れたい場所に触れ、時折ラシュエル様を喰んでいく。
 真上に構えたラシュエル様の余裕ないお顔を眺めつつ、今までよりもっと幸せな時間を過ごしたのであった。

『拝啓 お姉様
 それからパーラム卿とはいかがでしょうか?
 私は、毎日とても幸せに過ごしております。
 追伸、誕生日プレゼントのハンカチも喜んでいただけました』

『イリス、良かったわ。
 私は、来月婚約を結ぶ運びとなりました。同時に、屋敷を移ります。
 素直になったお陰かしらね。ありがとう、イリス。貴女が背中を押してくれたお陰よ。
 追伸、遠い地だけど是非ラシュエル様と遊びに来てね』


ーー終わりーー
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