姉の代わりに初夜を務めます。そしたらサヨナラです。

木野ダック

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初夜オムニバス1・献身の初夜

別れを紐解いて1

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 メイアによく似た女はクスクスと薄く笑っていた。
「合格ですわ、ラシュエル様」
 睨みつければ楚々と微笑んだ。
 やはりコレは別人だ。
「……貴様は誰だ」
 問えば女は笑みを消して真っ直ぐに俺を見据えた。折目正しく礼をして、「お初にお目に掛かります」と。
「私はと申します」
「……話にならないな」
 俺の声に女はかぶりを振る。
「逆、逆ですわ、ラシュエル様」
「逆?」
「はい、メイアには妹がいるのはご存知ですか?」
 婚姻時の資料を頭から引っ張り出す。確かにいた。名は……。
「イリス・トルコット」
 女は笑みを浮かべて頷いた。
「えぇ。イリスは存外楽しい子だったでしょう?」
「……?」
「あの子は、好みが華やかではないだけで、別につまらない子でも搾りカスでもないんです」
 女はたおやかに言葉を紡いでいく。
「真面目で一生懸命なところは、私が絶対にあの子に勝てないところです」
 女は鞄から二枚の紙を取り出した。一通は冒頭に『拝啓 お姉様』と。もう一通は『婚姻取消の請求』と記されていた。
「あの子からの最後の手紙です。ですが、貴方が読むべきかと。それからもう一通は……、手紙を読めばお分かりになるでしょう」
 どうぞと女は手のひらを見せる。イリスの手紙に目を通した。
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