姉の代わりに初夜を務めます。そしたらサヨナラです。

初夜オムニバス1・献身の初夜

彼女がいなくなって

　あの夜、気がつけばメイアはいなくなっていた。夜のうちに部屋に戻ったのだろう。
　目が覚めた時、メイアのいた空間はぽっかりと空いていた。
　それから朝食にも顔を出すことはなく、仕舞いには実家へと戻ると去っていった。

　やはりまだ早かったのだと思う。
　彼女はまるで脅迫でもされるように懇願をしていた。何かを恐れるように。
　相手は触れるだけで肩を震わす人間だ。手を出して怖がらせたくはなかった。
　けれど彼女の不安が、夫婦という形式に則るものならば、抱けば安堵を与えられるのかもしれないと考えた。

　とはいえ、やはり失敗だったようだ。
　話して、先延ばしにするべきだった。
　当初の考え通り、段階をしっかり踏むべきだったのだ。

　帰って来てくれるだろうか。また、笑みを見ることができるのだろうか。

　恥ずかしい話だ。今まで仕事仕事と最低限の付き合いしか重ねていなかったばっかりに、こういう時に迎えに行って良いものなのかすら分からない。
　引き留めることすらできなかった。

　今まで、女性からの誘いを容易く無碍にしていたツケが回ったのだろう。
　色恋について、俺はあまりにも無知だった。