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グルタス伯爵との戦い
0173話
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「そう、やっぱり強い相手がいたのね。……具体的にはどのくらいの強さかしら?」
怪我をして合流してきた者たちは治療されながら、ソフィアの言葉に少し考え、やがて口を開く。
「そうですね。俺たちよりは弱いですが、一般的な兵士よりは上です。傭兵のランクで示す場合は、Bの下位かCの上位といったところかと」
合流してきた者たちは、多少の傷こそ負っているが、その傷はどれも重傷と呼ぶほどではない。
そうである以上、戦った相手がBの下位からCの上位というランクであっても、死に物狂いで攻撃してきた場合は、このくらいの怪我をしてもおかしくはなかった。
「なるほど。大体そのくらいの強さと思って間違いないようね。けど……何故貴方たちの向かった場所にだけ、それだけの腕利きがいたのかしら?」
「傭兵団ではなく、個人で参加してる者たちでは?」
ソフィアの言葉に、ローザがそう尋ねる。
その意見は一定の説得力があった。
もし傭兵団で参加しているのなら、一ヶ所だけにその傭兵がいるというのは明らかにおかしい。
だが、個人で参加している傭兵であれば、傭兵団ではない以上、一人だけどこかに紛れ込んでいるという可能性も否定は出来ない。
傭兵というのは、必ずしも傭兵団を結成しなければいけない訳ではなく、ソロで活動している者も多いのだから。
「個人、ね。その可能性はあるかしら。ただ、そうなると……相手の戦力を掴みにくいのが大変ね。今回はそこまで強い訳ではなかったけど……」
ソフィアが少し言いにくそうにしたのは、ソロで動く傭兵の実力はまさにピンキリだからだろう。
傭兵になってからまだ時間が経っていない傭兵や、我が強すぎて他人と組むことが出来ないような傭兵なら問題はない。
しかし、世の中にはソロであってもランクの高い傭兵というのはいるのだ。
ソロである以上、傭兵団が動くときのように情報を収集しにくいというのもある。
「少し困るわね。情報収集を今まで以上に徹底させる必要があるわ」
そのような、ソロで強力な傭兵と遭遇しないようにとソフィアは考える。
もちろん、そのようなソロの傭兵と遭遇して黎明の覇者が負けるとは思っていない。
この世界においても量が質を圧倒するというのは基本的に間違っていない。
だが、地球と違うのは魔法を始めとした様々な力の影響によって、質が量を蹂躙するといったことも珍しくはないのだ。
もちろん、そのようなことを誰でも出来るという訳ではない。
黎明の覇者において完全にそのような真似が出来るのは、ソフィアだけだろう。
……現在客人として扱われているイオが正式に黎明の覇者に所属すれば、流星魔法を使える状況でという条件つきだが、イオもまたそちら側に入るだろうが。
「そうね。情報収集は今まで以上に厳密にするわ。今回程度の実力の傭兵くらいならいいんだけど、それ以上の傭兵となると……結構厄介でしょうし」
その言葉にはソフィアも異論がなく、素直に頷く。
元々黎明の覇者は情報収集にも力を入れているのだが、今回の件はかなりいきなりの行動だった。
そのため、情報収集も十分でないのは間違いないのだ。
ふと、ソフィアの視線がイオに向けられる。
離れた場所でレックスや他の何人かと会話をしているイオならば、相手がどれだけの強者であっても問題なく倒せるだろう。
しかし、それに本当に頼ってもいいのかといった思いがあるのも事実。
これが戦争本番であれば、そのような真似をしてもいいだろう。
しかし、今の自分たちに必要なのは、どこかに隠れている敵を見つけて倒すということだ。
そんな場所でイオの流星魔法を使えば、周辺に大きな被害を与えるのも事実。
もちろん、流星魔法であっても周囲に大規模は破壊をもたらすメテオではなく、対個人用のミニメテオの類であれば問題はないのかもしれないが。
「ソフィア?」
「いえ、何でもないわ。駄目ね、近くに圧倒的な力があると、ついそちらに頼ってしまってもいいんじゃないかと、そんな風に思うのよ」
「そう言われるとそうかもしれないわね。ただ、今のような状況でそういうのも難しいし、それ以外の時でも頻繁に使うのは……特に敵を殲滅するという意味で多用するのは不味いことになるかもしれないわね」
「でしょうね。それは分かるわ」
ローザの言葉にソフィアは素直に頷く。
たとえば、今回敵対している鋼の刃。
傭兵である以上は今回敵対しているが、場合によっては一緒の勢力として敵と戦うことも珍しくはない。
そしてソフィアが知ってる限り、鋼の刃に所属する傭兵たちは多少暑苦しい者が多いが、性格的には優良な者たちが大半だ。
もちろん、あくまでも表向きはそのようにしているだけで、実際は……といった可能性もない訳ではなかったが。
しかし、今まで何度も接してきたソフィアにしてみれば、恐らくそういうのではないだろうと思える。
そんな優良な……仲間にすれば頼りになる相手を流星魔法で殺してしまうのは、短期的にみれば利益となるのかもしれないが、長期的に見れば明らかに不利益でしかない。
ましてや、傭兵業界全体で見ても、明らかにマイナスだろう。
もしこれで敵に所属しているのが鋼の刃のような傭兵団ではなく、悪い噂があり、後ろ暗いところのある傭兵団であれば、もしかしたらソフィアもイオに流星魔法を使うといった選択を考慮に入れたかもしれないが。
「話がちょっと逸れたわね。流星魔法についての件はとにかく、敵に個人の傭兵がいた場合であっても、とにかく倒すことは出来たのよね?」
言葉通り話題が逸れていたというのは理解したのだろう。
ローザはソフィアの言葉を聞くと、治療をしている者たちに視線を向ける。
特にローザが何も言わなくても、治療をしていた者たちはソフィアの言葉に頷く。
「はい、問題ありません。多少苦戦をしたのは間違いないですが、しっかりと倒しました」
「そう。ならいいのだけれど。ただ、こうなるとまだ残ってる場所を探索するときはもっと人数を多くしたり、腕利きを何人か揃えた方がいいわね」
今のところ、侵入している兵士たちの討伐をするときは何人かの集団で向かわせていた。
しかし、それは特に戦力を均等にするといったようなことはせず、適当な……言ってみればその場の流れで人数を決めていた。
もちろん、黎明の覇者に所属する傭兵である以上、多くが一定の技量を持つからこそ出来たことだ。
しかし、当然だが黎明の覇者の傭兵の中にも、強さに差がある。
腕利きもいれば、そこまで強くない――あくまでも黎明の覇者の中での話だが――者もいる。
黎明の覇者の中でも特に強い方の傭兵となると、それこそこの世界の全体でも上位に位置するだけの実力の持ち主となる。
いくらこれから自分たちの行く場所に個人としての傭兵がいても、そのような強者がいれば、対処するのは難しい話ではないだろう。
「人数を増やせば、そこまで神経質になる必要もないと思うけどね。それに、今のところまだ傭兵は一人だけなんでしょう? そこまで気にする必要もないと思うけど」
「あのね、そんなに悠長なことを言ってられると思うの? ある程度の強さの傭兵が紛れ込んでいるとなると、もし妙な真似を始めたら、周辺の被害が大きくなるわよ」
そんな二人の言葉は、どちらも間違ってはいない。
お互いにそれは分かっているのだが、それでも今の状況を思えば自分の意見を主張することもあるのだろう。
しかし、だからといってこのままここで言葉を交わすよりも、今はやるべきことがあるのも事実。
最終的に折れたのは、ローザだった。
元々ローザも、黎明の覇者に被害が出るのを許容している訳ではない。
それこそ、今は少しで自分たちに有利に、そして被害が少なく行動するべきだと思っているのは、二人とも同じなのだから。
「とにかく、まずは行動に移しましょう。まだ戻ってきていないのは、何人くらいになりそう?」
「十五人といったところかしら」
「なら、そちらに一応追加で何人か人を派遣して。恐らくは大丈夫だと思うけど、もし強い……それこそ黎明の覇者でも勝つのが難しいような傭兵がいたら、厄介だわ」
「そんなのがそうそういるとは思えないけど……でも、そうね。高ランクの傭兵がいると厄介なのは間違いないし、そうしましょうか」
ソロで活動している傭兵の大半は傭兵になったばかりの者や、何らかの問題がある者達だ。
だが、中には傭兵団に入って集団行動をするのが嫌で、それが許されるくらいに腕が立つソロの傭兵というのも存在している。
そのような者は非常に数が少ないが、もしそのような者がいた場合のことを考えれば、ソフィアの意見はそう間違っていなかった。
そうして何人かの腕利きがそれぞれの援軍として派遣される。
そんな様子を、離れた場所で見ていたイオは不思議そうな表情を浮かべる。
「どうしたんですか、イオさん?」
イオの側にいたレックスは、不思議そうな表情を浮かべているのに気が付き、そう尋ねる。
「いや、傭兵団も色々と大変なんだと思ってな」
「そういう表情じゃなかったと思いますけど」
「そうか? まぁ、傭兵団と一口に言っても、色々とあるというのは理解出来るってのが正確だろうな。正直なところ、俺に傭兵団を率いるなんて真似はとてもじゃないが出来ないと思う」
「率いる気があるんですか?」
驚きですといったように告げてくるレックスに、イオは少し困った表情で口を開く。
「いや、正直なところそんなつもりはないけどな。ただ、もしそういう風になったら……って感じだよ。もし傭兵をやるとしても、俺は傭兵団を率いるんじゃなくてどこかの傭兵団に所属するとか、そういう感じがいいと思う」
「それなら、団長に誘われていることですし、黎明の覇者は是非お勧めですよ」
こうして戦争に参加……というか、戦争のプロローグ的な戦いに参加しているのだが、今のイオはあくまでも黎明の覇者の客人であって、本当の意味で傭兵ではない。
自分でもどうするべきなのかと思いながら、イオはレックスとの会話を続けるのだった。
怪我をして合流してきた者たちは治療されながら、ソフィアの言葉に少し考え、やがて口を開く。
「そうですね。俺たちよりは弱いですが、一般的な兵士よりは上です。傭兵のランクで示す場合は、Bの下位かCの上位といったところかと」
合流してきた者たちは、多少の傷こそ負っているが、その傷はどれも重傷と呼ぶほどではない。
そうである以上、戦った相手がBの下位からCの上位というランクであっても、死に物狂いで攻撃してきた場合は、このくらいの怪我をしてもおかしくはなかった。
「なるほど。大体そのくらいの強さと思って間違いないようね。けど……何故貴方たちの向かった場所にだけ、それだけの腕利きがいたのかしら?」
「傭兵団ではなく、個人で参加してる者たちでは?」
ソフィアの言葉に、ローザがそう尋ねる。
その意見は一定の説得力があった。
もし傭兵団で参加しているのなら、一ヶ所だけにその傭兵がいるというのは明らかにおかしい。
だが、個人で参加している傭兵であれば、傭兵団ではない以上、一人だけどこかに紛れ込んでいるという可能性も否定は出来ない。
傭兵というのは、必ずしも傭兵団を結成しなければいけない訳ではなく、ソロで活動している者も多いのだから。
「個人、ね。その可能性はあるかしら。ただ、そうなると……相手の戦力を掴みにくいのが大変ね。今回はそこまで強い訳ではなかったけど……」
ソフィアが少し言いにくそうにしたのは、ソロで動く傭兵の実力はまさにピンキリだからだろう。
傭兵になってからまだ時間が経っていない傭兵や、我が強すぎて他人と組むことが出来ないような傭兵なら問題はない。
しかし、世の中にはソロであってもランクの高い傭兵というのはいるのだ。
ソロである以上、傭兵団が動くときのように情報を収集しにくいというのもある。
「少し困るわね。情報収集を今まで以上に徹底させる必要があるわ」
そのような、ソロで強力な傭兵と遭遇しないようにとソフィアは考える。
もちろん、そのようなソロの傭兵と遭遇して黎明の覇者が負けるとは思っていない。
この世界においても量が質を圧倒するというのは基本的に間違っていない。
だが、地球と違うのは魔法を始めとした様々な力の影響によって、質が量を蹂躙するといったことも珍しくはないのだ。
もちろん、そのようなことを誰でも出来るという訳ではない。
黎明の覇者において完全にそのような真似が出来るのは、ソフィアだけだろう。
……現在客人として扱われているイオが正式に黎明の覇者に所属すれば、流星魔法を使える状況でという条件つきだが、イオもまたそちら側に入るだろうが。
「そうね。情報収集は今まで以上に厳密にするわ。今回程度の実力の傭兵くらいならいいんだけど、それ以上の傭兵となると……結構厄介でしょうし」
その言葉にはソフィアも異論がなく、素直に頷く。
元々黎明の覇者は情報収集にも力を入れているのだが、今回の件はかなりいきなりの行動だった。
そのため、情報収集も十分でないのは間違いないのだ。
ふと、ソフィアの視線がイオに向けられる。
離れた場所でレックスや他の何人かと会話をしているイオならば、相手がどれだけの強者であっても問題なく倒せるだろう。
しかし、それに本当に頼ってもいいのかといった思いがあるのも事実。
これが戦争本番であれば、そのような真似をしてもいいだろう。
しかし、今の自分たちに必要なのは、どこかに隠れている敵を見つけて倒すということだ。
そんな場所でイオの流星魔法を使えば、周辺に大きな被害を与えるのも事実。
もちろん、流星魔法であっても周囲に大規模は破壊をもたらすメテオではなく、対個人用のミニメテオの類であれば問題はないのかもしれないが。
「ソフィア?」
「いえ、何でもないわ。駄目ね、近くに圧倒的な力があると、ついそちらに頼ってしまってもいいんじゃないかと、そんな風に思うのよ」
「そう言われるとそうかもしれないわね。ただ、今のような状況でそういうのも難しいし、それ以外の時でも頻繁に使うのは……特に敵を殲滅するという意味で多用するのは不味いことになるかもしれないわね」
「でしょうね。それは分かるわ」
ローザの言葉にソフィアは素直に頷く。
たとえば、今回敵対している鋼の刃。
傭兵である以上は今回敵対しているが、場合によっては一緒の勢力として敵と戦うことも珍しくはない。
そしてソフィアが知ってる限り、鋼の刃に所属する傭兵たちは多少暑苦しい者が多いが、性格的には優良な者たちが大半だ。
もちろん、あくまでも表向きはそのようにしているだけで、実際は……といった可能性もない訳ではなかったが。
しかし、今まで何度も接してきたソフィアにしてみれば、恐らくそういうのではないだろうと思える。
そんな優良な……仲間にすれば頼りになる相手を流星魔法で殺してしまうのは、短期的にみれば利益となるのかもしれないが、長期的に見れば明らかに不利益でしかない。
ましてや、傭兵業界全体で見ても、明らかにマイナスだろう。
もしこれで敵に所属しているのが鋼の刃のような傭兵団ではなく、悪い噂があり、後ろ暗いところのある傭兵団であれば、もしかしたらソフィアもイオに流星魔法を使うといった選択を考慮に入れたかもしれないが。
「話がちょっと逸れたわね。流星魔法についての件はとにかく、敵に個人の傭兵がいた場合であっても、とにかく倒すことは出来たのよね?」
言葉通り話題が逸れていたというのは理解したのだろう。
ローザはソフィアの言葉を聞くと、治療をしている者たちに視線を向ける。
特にローザが何も言わなくても、治療をしていた者たちはソフィアの言葉に頷く。
「はい、問題ありません。多少苦戦をしたのは間違いないですが、しっかりと倒しました」
「そう。ならいいのだけれど。ただ、こうなるとまだ残ってる場所を探索するときはもっと人数を多くしたり、腕利きを何人か揃えた方がいいわね」
今のところ、侵入している兵士たちの討伐をするときは何人かの集団で向かわせていた。
しかし、それは特に戦力を均等にするといったようなことはせず、適当な……言ってみればその場の流れで人数を決めていた。
もちろん、黎明の覇者に所属する傭兵である以上、多くが一定の技量を持つからこそ出来たことだ。
しかし、当然だが黎明の覇者の傭兵の中にも、強さに差がある。
腕利きもいれば、そこまで強くない――あくまでも黎明の覇者の中での話だが――者もいる。
黎明の覇者の中でも特に強い方の傭兵となると、それこそこの世界の全体でも上位に位置するだけの実力の持ち主となる。
いくらこれから自分たちの行く場所に個人としての傭兵がいても、そのような強者がいれば、対処するのは難しい話ではないだろう。
「人数を増やせば、そこまで神経質になる必要もないと思うけどね。それに、今のところまだ傭兵は一人だけなんでしょう? そこまで気にする必要もないと思うけど」
「あのね、そんなに悠長なことを言ってられると思うの? ある程度の強さの傭兵が紛れ込んでいるとなると、もし妙な真似を始めたら、周辺の被害が大きくなるわよ」
そんな二人の言葉は、どちらも間違ってはいない。
お互いにそれは分かっているのだが、それでも今の状況を思えば自分の意見を主張することもあるのだろう。
しかし、だからといってこのままここで言葉を交わすよりも、今はやるべきことがあるのも事実。
最終的に折れたのは、ローザだった。
元々ローザも、黎明の覇者に被害が出るのを許容している訳ではない。
それこそ、今は少しで自分たちに有利に、そして被害が少なく行動するべきだと思っているのは、二人とも同じなのだから。
「とにかく、まずは行動に移しましょう。まだ戻ってきていないのは、何人くらいになりそう?」
「十五人といったところかしら」
「なら、そちらに一応追加で何人か人を派遣して。恐らくは大丈夫だと思うけど、もし強い……それこそ黎明の覇者でも勝つのが難しいような傭兵がいたら、厄介だわ」
「そんなのがそうそういるとは思えないけど……でも、そうね。高ランクの傭兵がいると厄介なのは間違いないし、そうしましょうか」
ソロで活動している傭兵の大半は傭兵になったばかりの者や、何らかの問題がある者達だ。
だが、中には傭兵団に入って集団行動をするのが嫌で、それが許されるくらいに腕が立つソロの傭兵というのも存在している。
そのような者は非常に数が少ないが、もしそのような者がいた場合のことを考えれば、ソフィアの意見はそう間違っていなかった。
そうして何人かの腕利きがそれぞれの援軍として派遣される。
そんな様子を、離れた場所で見ていたイオは不思議そうな表情を浮かべる。
「どうしたんですか、イオさん?」
イオの側にいたレックスは、不思議そうな表情を浮かべているのに気が付き、そう尋ねる。
「いや、傭兵団も色々と大変なんだと思ってな」
「そういう表情じゃなかったと思いますけど」
「そうか? まぁ、傭兵団と一口に言っても、色々とあるというのは理解出来るってのが正確だろうな。正直なところ、俺に傭兵団を率いるなんて真似はとてもじゃないが出来ないと思う」
「率いる気があるんですか?」
驚きですといったように告げてくるレックスに、イオは少し困った表情で口を開く。
「いや、正直なところそんなつもりはないけどな。ただ、もしそういう風になったら……って感じだよ。もし傭兵をやるとしても、俺は傭兵団を率いるんじゃなくてどこかの傭兵団に所属するとか、そういう感じがいいと思う」
「それなら、団長に誘われていることですし、黎明の覇者は是非お勧めですよ」
こうして戦争に参加……というか、戦争のプロローグ的な戦いに参加しているのだが、今のイオはあくまでも黎明の覇者の客人であって、本当の意味で傭兵ではない。
自分でもどうするべきなのかと思いながら、イオはレックスとの会話を続けるのだった。
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