剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ガリンダミア帝国との決着

エピローグ

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 ガリンダミア帝国の周辺諸国で結成された連合軍が戦場となった帝都に到着したのは、戦いが終わって数日後のことだった。
 その数日の間に、レジスタンス連合の代表としてイルゼンはガリンダミア帝国の皇帝と面会し、話をつけており、すでに終戦条約は締結していた。
 その中で一番大きな条項だったのは、やはりガリンダミア帝国が従属国としている国……具体的には、レジスタンス連合にレジスタンスを派遣していた国の独立を許し、金銭的な賠償を行うということだろう。
 当然ながら、従属国の中にはレジスタンスを派遣しなかった国もあるのだが……その国には今回の戦いと関係がないので、戦後も従属国のままとなる。
 他にもかなりレジスタンス連合側が有利な交渉となったのだが、その最大の理由はゼオリューンだった。
 空間を破壊して姿を現したアポカリプスは、その巨体から当然帝都からでも十分に見ることが出来ていたのだが、ゼオリューンはそんなアポカリプスに勝ったのだ。
 ただでさえ、アポカリプスが意図せず放つ威圧感は圧倒的で、それこそ帝都にいる者たちですら、アポカリプスの重圧感から動けなくなった者は多かったらしい。
 それどころか、心臓に病を抱えていたり、高齢だった者たちはその威圧感によって死んだ者も少なくなかった。
 そんなアポカリプスを倒したゼオリューンが帝都の上空を我が物顔で飛び回っているのだから、ガリンダミア帝国側に対する圧力としては十分なものとなる。
 なお、以前はどうやってもゼオリューンになれなかったのだが、アポカリプスの戦いを経て能力が上がったのか、あるいはコツでも掴んだのか。その辺はアランにも分からなかったが、戦いが終わったあとは普通に融合出来るようになっていた。
 そのおかげで、ゼオリューンによって帝都を飛ぶといった真似が出来たのだ。

「それにしても……連合軍の方はこれで大人しく引き下がるか?」
「どうかしらね。連合軍にしてみれば、完全に私たちに利用された形だもの」

 アランの言葉に、レオノーラがそう返す。
 現在アランとレノオーラがいるのは、ガリンダミア帝国の首都にある城。
 ……そう、以前アランが捕まっていたときに囚われていた城だ。
 そういう意味では、アランにとってここは決して好むような場所ではないのだが。

「でも、だからって連合軍で俺たちに勝てるとは思わないだろ? レジスタンスだけならまだしも、こっちには心核使いも多いんだぞ?」
「それが……量産型の心核があったでしょ?」

 それに、アランは話の流れを分かってしまう。
 量産型の心核を使って変身した相手は、一般的……アランたちが知っている心核使いと比較してもかなり劣る能力しか持っていない。
 だが、その事実を知ってるのはあくまでもアランたちだけだ。
 もし連合軍がそれを知らないで、自分たちは心核使いでさえ倒せると、そのように思って行動を始めた場合……その結果がどうなるのかは、考えるまでもないだろう。
 自分たちという連合軍を作るように促したのがイルゼンであるというのを知っていても、それがどうした、それとこれとは話が別といったように言いかねない。
 だからこそ、下手をすれば終戦したばかりのここで、レジスタンス連合と連合軍の戦いが起きる可能性は十分にあった。

「そうならないようにするために、今は祈るしかないな」

 アランとしては、出来ればここで連合軍と戦いたいとは思わない。
 そうなった場合、最悪各国の軍隊が大きな被害を受け、結果的にガリンダミア帝国の周辺国の中に不穏な動きをする国が出て来かねない。

「祈る、ね。アランにしては珍しいけど。……でもまぁ、それで上手くいくのなら問題ないけど」

 アランにしてみれば、今回の一件は大きな……非常に大きな意味を持つ出来事だった。
 そんな大きな騒動、もしくは騒乱とでも呼ぶべきものが終わってまたすぐに同じような騒動が起きるいうのは、出来れば遠慮して欲しかった。

「祈るにしても、誰に祈ったらいいんだろうな。やっぱり神か?」

 前世の日本で生きていたときは、アランは他の日本人の多くと同様に神を信じたりはしていなかった。
 しかし、死んだと思えばこの世界に転生してきたのだ。
 そうである以上、神という存在について思い当たってもおかしくはない。

「どうかしらね。神でも何でもいいわよ。とにかくこれまでの色々な面倒がなくなってしまったんだから、これからはきちんと探索者として活動出来るもの」
「そうなんだよな、俺たちはそういう活動をするための探索者なんだよな。このところ、ずっとガリンダミア帝国軍と戦ったりしてたから、微妙にその件について忘れそうになっていたけど。とはいえ、古代魔法文明……ルーダーについて知りたいのなら、イルゼンさんに聞いた方がいいと思うけど」

 イルゼンとビッシュの間に、具体的にどのような関係があったのかは、アランやレオノーラにも分からない。
 一応イルゼンにその辺を聞いてみたものの、上手く誤魔化された形だ。

「聞いても、イルゼンが何か正直に言ってくるとは思わないでしょう?」

 レオノーラのその言葉は、アランにとっても頷くしか出来ない。
 この世界に転生してから今日までずっと雲海で育ってきたアランとしては、イルゼンの飄々ぶりを知っているアランとしては、話をしても素直にイルゼンが聞いてくれるとは思わない。

「とにかく、今はもっと別の……あ……」

 何かを喋ろうとしたアランだったが、途中でその言葉を止める。
 そんなアランの視線の先にいたのは、グヴィス。
 元々はアランがこの城に軟禁されていたとき、監視役として用意された人物で、その後とやり取りで友人といってもいい関係になった相手。
 結局アランが城からいなくなったので、追撃隊を任された人物だった。
 その追撃のときにアランと再会したものの、アランを捕まえることは出来ず……今回の戦いでも、レジスタンス連合側ではなく連合軍側に回っていたということもあってか、結局最後までアランと遭遇するといったようなことはなかった。
 ある意味、これは幸運でもある。
 アランと遭遇している……レジスタンス連合との戦いに回されたとすれば、それこそビッシュによってアポカリプスをこの世界に呼び出す生贄として使われていた可能性が高いのだから。

「アラン」

 グヴィスはそんなアランの存在に気が付くと、小走りに近付いて来る。
 その表情に浮かんでいるのは、複雑な色だ。
 何しろアランとの間には色々とありすぎた。
 アランとの再会に際して、怒ればいいのか、悲しめばいいのか、笑えばいいのか……はたまた、それ以外の感情の抱けばいいのか。
 その辺はグヴィス本人にとってもどうすればいいのか分からなかったのだ。

「元気だったか?」
「……ああ。お前も元気だったみたいだな。正直、まさかガリンダミア帝国がこんなことになるとは思わなかったよ」
「だろうな。ガリンダミア帝国の巨大さを思えば、そこに所属している奴ならそう思ってもおかしくはない。とはいえ、その巨大さを維持するために行ってきた諸々が、結果として今の状況になってるんだろうが」
「ふん。それは否定しない。だが、偉大なるガリンダミア帝国は、これで終わりという訳ではない、これまでとはまた違った方法で、以前までのガリンダミア帝国以上の実力を有するようになってみせるよ」

 そう告げ、グヴィスはアランの前から去っていく。
 グヴィスとしてはもう少しアランと話をしていたかったのは間違いない。
 しかし、今のグヴィスにそこまでゆっくしていられる時間はない。
 それこそ防衛戦に出ていたガリンダミア帝国のほぼ全てが死んでしまっている以上、どこも人が足りないのだ。
 それこそ騎士のグヴィスという存在は、どの部署であってもありがたい材だった。

「グヴィス、もう少し余裕が出来たら、ゆっくりと話でもしよう!」

 去っていくグヴィスの背中にそう声をかけると、グヴィスは振り返ってアランを見て、数秒沈黙してから、アランの言葉に同意するように大きく手を振るのだった。

「男同士の友情ね」
「そんなに大層なものじゃないと思うけどな。敵として戦場でグヴィスに遭遇しなかったのは嬉しいけど」

 レオノーラのどこかからかうような言葉に、アランはそう返す。
 実際、アランにしてみれば雲海以外の友人というのはそんなに多くない。
 そんな数少ない友人が戦場で死ななかったのは、アランにとって嬉しいことなのは間違いない。

「アランと戦場で遭遇すれば、恐らく死んでいたでしょうしね」

 その死ぬというのが、アランの操縦するゼオンによるものか、もしくはそれ以外の何かが理由なのかは、アランにも分からなかった。
 分からなかったので、取りあえず話を逸らす。

「それにしても、ガリンダミア帝国の一件が終わったのはいいけど、それが終わって俺たちが探索者として活動を再開出来るのは、具体的にいつくらいになるんだろうな」
「いつくらい、か。私は出来れば今すぐにでも出発したいんだけど、そういう真似は出来ないでしょうしね」
「それはそうだろ。今ここで俺たちがいなくなると、さっき言ってたように連合軍が妙な行動をしかねないし」

 アランは面倒そうな様子を見せつつも、本気でそのような真似をすれば色々と不味いために、それを実行に移す訳にもいかない。

「そうなると、今はここで少し時間を潰す必要があるわね。……とはいえ、それはそれであまり悪くない選択肢かもしれないけど」
「へぇ、以外だな。レオノーラのことだから、てっきりさっさとここを出ていきたいと思っているのかと思った」

 先程までの会話から考えると、そのように認識してもおかしくはない。
 おかしくはないのだが、レオノーラはそんなアランの様子に笑みを浮かべて口を開く。

「そうね。私もそう思わないことはないけど……それでも、ここでゆっくり出来るとなれば、アランと一緒にゆっくり出来るという可能性もあるでしょう?」
「え? それって……」
「……すぐに私たちの出番が来るようなことはないでしょうし、あとでちょっと出かけましょう? 少しくらいは私とデートしてもいいと思うんだけど」

 そう言うと、レオノーラは見惚れるほどに美しい笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「ほら、今日もいい天気なんだし……私とアランの二人がいる以上、少しは男女らしいことを楽しみましょう?」

 日の光に黄金の髪が照らされる様子に目を奪われながら、アランはその言葉に頷くのだった。
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