剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ガリンダミア帝国との決着

419話

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 アポカリプスの二つの目の頭部がビームライフルによって爆散し、それはビッシュにとって圧倒的なまでの激痛を与えた。

『があああああああああああああああ!』

 頭部の一本の首が半ばまで切断されたのに続き、今はこうして致命傷となるようなダメージを再び受けたのだ。
 ビッシュにしてみれば、これはまさに最悪の結果としが言いようがないだろう。

「よし、残り一つだ! レオノーラ、やるぞ!」
「ええ!」

 あそこまで圧倒的な実力を持つアポカリプスに対し、ここまで一方的に攻撃をすることが出来たというのは大きい。
 三つある頭部のうち、二つがなくなった以上、戦闘力という点ではかなり落ちているはずだ。
 そうである以上、アランとしては今このチャンスを……自分たちに残された、僅かな勝機を見逃すといったような真似は、絶対に出来なかった。
 俺とレオノーラの乗るゼオリューンは、アポカリプスに残った唯一の首を目指して間合いを詰める。
 本来ならビームライフルで攻撃をした方がいいのかもしれないが、アポカリプスの能力を考えれば、同じ攻撃が二度も通じるかどうか微妙だった、というのが大きい。
 それなら、攻撃を回避されてもすぐ次の攻撃に繋げることが出来るビームサーベルを使った方がいいのは間違いない。
 それに……それ以外にも、アランにはまだ奥の手があった。

「フェルス!」

 叫ぶと同時に、フェルスが放たれる。
 ゼオンのフェルスは三角錐の形状だったが、今のフェルスは形そのものは代わっていなくても、その表面には複数の竜鱗が存在している。
 これもまた、ゼオリューンになった影響の一つだろう。
 当然ながら、変わったのは外見だけではない。
 ビームライフルと同じく、その威力もまた以前のフェルスとは違っている。

「レオノーラ、フェルスの操作は任せた! 俺はゼオリューンの操縦に集中する!」
「ええ、任せて!」

 アランがレオノーラにフェルスの操縦を任せたのは、以前ゼオリューンになったとき、レオノーラが自分と同等か……あるいは、それ以上の精度でフェルスを操っていたのを見ているためだ。
 もちろんアランもその気になれば、ゼオリューンを操縦しながらフェルスを操ることも全く問題なく出来る。
 しかし、自分と同等かそれ以上に得意な相手がいるのなら、そちらに任せるといった選択肢は決して間違ってはいないはずだった。
 そんなアランの期待に、レオノーラは完全に応える。
 放たれたフェルスは、その全てが先端にビームソードを展開させながらアポカリプスの身体に突っ込んでいったのだ。
 本来なら、フェルスはビームソード以外にビーム砲も有している。
 しかしフェルスの大きさを見れば分かるが、その威力はどうしても小さくなるのだ。
 とてもではないが、ビームライフルとは比べられないほどに。
 それでも、敵がそこまで強くなければ……アポカリプスのような圧倒的な防御力を持っていなければ、それでもビーム砲でダメージを与えることも出来るのだが。
 生憎と、今の敵はアポカリプスだ。
 ゼオリューンになって強化されたフェルスであっても、ビーム砲でダメージを与えるのは難しい。
 しかし、それがビームソードならどうか。
 その答えが、現在ゼオリューンの映像モニタに表示されていた。
 身体中のあらゆる場所をビームソードを展開したフェルスに貫かれるアポカリプス。
 三つある頭部のうち、二つを失った状態でさらに追加されて痛みは、ビッシュをさらに絶望の淵へと追い詰める。

「頭部を!」

 残り一つの頭部を狙えという、そんなレオノーラの指示にアランはゼオリューンの操縦をすることで応える。
 そうしてもう少しでビームサーベルの刃が頭部に届くかといったところで……

「ちぃっ!」

 ゼオンに向かって来たアポカリプスの左腕による攻撃を回避するべく、アランは即座にアポカリプスから離れる。
 何故? と、一瞬そんな疑問を抱くアラン。
 今の一撃は、痛みに耐えかねて暴れた結果として、ゼオンに向かって振るわれた一撃……ではなく、明確にゼオンを狙ったものだった。
 今のアポカリプスの状態でそのようなことが出来るとは、アランに思えなかったのだが……実際、そのようなことになっているのは間違いない。

『許さない……もう許さない。アラン、君は絶対に殺す!』

 念話で送られてきたビッシュの言葉には、圧倒的なまでの憎悪が込められている。
 つい先程までは、アランに対して自分との上下をはっきりとさせて、それによって力の差から降伏させようと思っていたのだが、そのような思いは完全になくなっていた。
 純度百パーセントの憎悪。
 そんな憎悪から滲み出る殺意により、ビッシュは身体の痛みを無視してアランを殺すといった行動に出たのだろう。
 ある意味で、精神が肉体を凌駕したという表現が相応しい、そんな状態。
 アランにしてみれば、そんなビッシュの行動は予想外ではあったものの、それでも納得出来るものではある。
 今回の一件……正直なところ、どこからを今回の一件と表現してもいいのかはアランにも分からないが、ともあれガリンダミア帝国とかかわってからの一連の動きの裏にいたのはほぼ間違いなくビッシュだ。
 そんなビッシュが、攻撃された痛みで動けず、そのまま一方的にやられてしまうというのは、アランにとっても恐らくないだろうと、そう思っていたのだから、
 もちろん、そのようなことになれば一番楽だったのは間違いないのだが。

「はっ、ここまで追い詰められて、それでようやく本気になったのか。で、本気になったときにはもう全力を出せない状況になってるってのは、情けなくないか?」

 一瞬念話越しに伝わってきた憎悪に驚き、内心で怯えつつも、アランの口から出たのは挑発の言葉だ。
 それは自分を鼓舞するという意味もあるし、他にもビッシュの感情を少しでも暴走させることが出来れば、と。そのように思う。

『全力は出せないかもしれないけど、アランを倒すだけならそう難しくはないんだよ? それを……これから、思い知らせてやろうか!』

 叫び、唯一残った真ん中の頭部の口が大きく開く。
 それを見た瞬間、アランはゼオリューンを動かし、敵の攻撃を回避する動きをする
 ゼオリューンを操縦するアランにしてみれば、いきなりの攻撃ではあったが放たれるのは一つの口からの攻撃だけだ。
 そうである以上、その攻撃を回避するのはそう難しい話ではなかった。

「ギガクラッシュの準備だ」

 アポカリプスの攻撃を回避しながら、アランはレオノーラに告げる。
 ギガクラッシュ。それはゼオリューンの武器……というよりは、必殺技の名前と表現した方が相応しいだろう。
 それだけに、アポカリプスを相手にしても通用するだろうと、そんな思いがアランにはあった。
 ……単純に、全ての武器を一ヶ所に集中して攻撃をするといった単純な攻撃なのだが、単純なだけにその攻撃の威力は高い。
 ビームライフルや腹部拡散ビーム砲でも相手にダメージを与えられるというのを考えると、アポカリプスを相手にしても致命的なダメージを与えることが出来るだろうという確信がアランにはあった。
 ……というか、もしギガクラッシュでビッシュを殺すことが出来なかった場合、それこそもう打つ手がないというのが正直なところだ。
 ゼオンで攻撃をしてもほとんどダメージを与えることは出来ず、ゼオリューンになってようやく相手にダメージを与えることが出来るようになり、そんなゼオリューンの最強の必殺技が、ギガクラッシュなのだ。
 そうである以上、今ここでその手段が通じなければ、それこそあとはもうビッシュがアランを殺そうとするのを諦めるくらいしか、やるべきことはなかった。

『アラン、殺す! 殺してやる! ルーダーから今まで僕が生きてきたのは、お前のような存在にこのような真似をされるためじゃないんだぁっ!』

 その叫びと共に、放たれる漆黒のブレス。
 しかし、首が一つになったことで回避するのはやはり、難しくはない。
 だが、アランにとって唯一予想外だったのは、ブレスを放ったままアポカリプスが首を振るったことだ。
 漆黒のブレスが放たれたまま、横薙ぎにゼオリューンに向かって迫ってくる。
 アランはゼオリューンを操ってその一撃を回避し、そんなアランの操縦に身体を揺らされながらも、レオノーラは魔力によってフェルスを動かし、ギガクラッシュの準備をする。
 ギガクラッシュはゼオリューンにとって最強の攻撃ではあるが、それと同時に使うまで時間がかかるという欠点もあった。
 当然だろう。全ての攻撃を一点に集中させるのだ。
 それはつまり、攻撃をする際のフェルスの位置や攻撃をする角度が重要となる。
 ゼオリューンは空を飛び回り、アポカリプスと戦っている。
 そのようなゼオリューンの攻撃にタイミングを合わせる必要がある以上、そこにはどうしても相応のセンスとでも呼ぶべきものが必要となり……幸いなことに、レオノーラはそのセンスを十分以上に持ち合わせていた。
 それだけではなく、ゼオリューンを操縦するアランともしっかりと息を合わせる必要があった。
 そういう意味でも、ギガクラッシュという必殺技はやはりアランとレオノーラの二人にしか使えない、そんなものだったのは間違いない。

「レオノーラ、あとどれくらいの時間が必要だ?」
「三十……いえ、二十秒ちょうだい」
「了解」

 短いやり取りだったが、アランはそんな会話をしながらもゼオリューンを自分の思い通りに動かし、それによって今となっては半ばアポカリプスを挑発する余裕すらあった。
 何しろ、自分に向かって飛んでくる攻撃は非常に単純だ。
 ビッシュに戦いのセンスがないおかげで、戦う際にもアランにとってはかなり便利だったのは間違いない。
 そうして次々に放たれる攻撃を回避し続け……それが一体どれくらいの時間続いたか。
 それを行っているアランも、当然ながら緊張感はある。
 大振りの一撃ではあっても、命中すればそれは間違いなくゼオリューンにとっては致命傷となるのだから。
 そして……そのときがくる。

「アラン、いいわ!」
「よし、合わせろ。……ギガクラッシュ!」

 そうアランが叫び、全ての攻撃が同時に放たれるのだった。
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