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ガリンダミア帝国との決着

394話

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 未知の敵の攻撃が、心核使いではないかもしれない。
 そんな思いを抱きつつ、アランはゼオンに乗って空を飛び……やがて、攻撃予想地点と思しき場所に到着する。
 当然の話だが、まだ一度しか攻撃されていない以上、敵のいると思われる予測地点を割り出した精度は決して高くない。
 しかし、それでも何の手掛かりもなく探すよりは、十分に敵を見つけられる可能性があるのは間違いない。
 それだけに、今の状況をおもえば少しでも早く敵を見つけたいアランとしては、その精度の低い予想に頼るしかなかった。
 そうしてやって来たのは……

「山か」

 眼下の光景を見て、そう呟く。
 現在ゼオンの映像モニタに表示されているのは、山。
 それが非常に厄介なことなのは、間違いない。
 何しろ山である以上、隠れられる場所はいくらでも存在する。
 心核使いなのか、あるいは心核使い以外の何らかのマジックアイテムなのか、はたまた新型の兵器なのか。
 その辺りアランにも分からなかったが、とにかく山となれば隠れる場所は数え切れないほどに存在していた。
 木々であったり、恫喝であったり、地中につづく穴であったり、巨大な岩であったり。
 そのように様々な隠れ場所がある以上、もしここに敵が隠れていても見つけるのは難しい。

「けど、だからこそこの山の中にあの未知の攻撃をしてきた奴がいる可能性は高いんだよな」

 ゼオンのコックピットの中でアランが呟き、地上の様子を改めて確認する。
 温度探知を使ってみると山だけあって多数の動物が存在し……だが、その温度を持つ相手の大きさで絞り込む。
 だが、当然のように対象を絞り込んでもそこには誰の姿もない。
 そもそも、温度で探すというのは相手が洞窟の中や岩の陰に隠れていた場合、見つけようがない。
 あるいはもし表に出ていても、心核使いで変身をしていた場合は人型の熱源を探しているアランに見つけることは難しい筈だった。

「やっぱり、いっそここで山を破壊するか?」

 そう思うも、それを実行した場合は色々と不味いことになるという自覚はあった。
 この山の近くにある村や街では、恐らくここは生活の恵みをもたらす場所だ。
 獲物を狩り、植物や木の実を採取し……といった具合に。
 アランが従属国のレジスタンスであれば、そんなのは知ったことかと言わんばかりに山を燃やす……それどころか、破壊してもおかしくはない。
 だが、アランはレジスタンス連合に所属はしているものの、あくまでも雲海の一員であってレジスタンス出身ではない。
 ガリンダミア帝国に恨みがないかと言われれば、素直に頷くことは出来ない。
 一度誘拐され、出来るだけ不便な思いはさせなかったとはいえ、それでも軟禁されたことに違いはないのだから。
 おかげで友人が出来たことは嬉しく思わないでもなかったが、その友人たちはガリンダミア帝国に仕える者たちで、現在はアランを追っているはずだった。
 あるいは、前回の戦いに参加していた可能性も否定は出来ない。
 そのことに若干思うところがあるのは間違いなかったが。

「それらしい相手はいないな。だとすれば、一体……うおっ!」

 山の中にいる敵を探していたアランだったが、再び敵の攻撃を感知し、反射的な動きでその攻撃を回避する。
 今まで何度も攻撃されている以上、同じように攻撃をされても回避するのは難しい話ではない。
 それでも敵の攻撃が厄介なのは間違いなく……そして何より、当然のようにまたこの山とは全く別の方向から攻撃をされたことに、驚くと同時に納得する。
 最初に攻撃をした場所に向け、この山の近くから攻撃をしたのだ。
 そうである以上、再度全く別の場所から攻撃をしても、それは驚くようなことではない。

「とはいえ……威力は弱い、か?」

 それだけが、アランにとっては疑問だった。
 アランが知っている……いや、実際にその身で体験した限り、敵の攻撃は未知の攻撃ということで、具体的にどのような威力があるのかというのは分からない。
 分からないが、それでも敵の攻撃の速度という点では、今の攻撃は間違いなく最初にアランが経験した攻撃よりも速度が落ちていた。
 それも多少といったものではなく、実感出来るほどに。
 それが、アランには疑問となる。

「まるで、同じ奴が攻撃をしているような……え? まさか」

 そこまで呟いたアランが、ふと一つの可能性を思いつく。
 攻撃場所が判明したのに、そこに行けば誰もいない。
 そしてまた他の場所から同じように攻撃される。
 攻撃の速度そのものは、実感出来る程、明らかに低下している。
 そして何より、多数の場所から同時に攻撃をすればアランも回避するのは難しいだろう。
 それらを総合的に考えた結果、アランが思いついた可能性は……

「転移能力か。飛行能力は……多分ないな」

 飛行能力を排除したのは、ゼオンの移動速度を考えれば、多少なりとも敵の姿を見つけていてもおかしくはえないためだ。
 もちろん、実はゼオンよりも高速で移動出来るという可能性はある。
 だが、ゼオンの移動速度はかなり素早いし、最初の攻撃地点に向かうとき、そしてそこからこの山まで移動するときは、全速に近い速度を出していた。
 そんなゼオンを超える速度で飛んだり、ましてや地上を走ったりといったことが出来る者がいると考えるよりは、まだ転移能力の方が可能性は高いように思える。
 そして、もし転移能力を持つ相手がいるとなると、それは非常に厄介なことになる。
 具体的にどのように転移しているのかは、アランにも分からない。
 魔法やスキルなのか、それともマジックアイテムや古代魔法文明の遺産のアーティファクトなのか。
 はたまた心核使いが変身したモンスターがそのような能力を持っているのか。
 そちらについては分からないアランだったが、それでも厄介なのは間違いない。

「もし心核使いが転移能力を持っているのなら、攻撃してくる心核使いが転移能力を持っているのかは、もしくは転移能力を持っている心核使いが護衛としているのか。その辺りの判断が難しいな」

 先程までは、もしかして兵器やマジックアイテムで自分を攻撃しているのでは? と思っていたアランだったが、今となっては恐らく心核使いが攻撃をしているのに間違いないと、そう思えた。
 転移能力を持っている者がいる、もしくは物があると考えると、恐らく攻撃をしている者は心核使いなのだろうと。

「そうなると、このまま今の攻撃があった方に向かっても意味はないか? 転移能力を持っている場合、俺が移動してもすぐに向こうは逃げ出すだろうし。転移をするにしても、何らかの制限はあってもおかしくないと思うんだが」

 何の制限もなく、自由に転移をするといったような真似が出来る場合、それこそアランには手におえない。
 正面から戦えば、恐らく勝てるだろうという自信はある。
 だが、ゼオンが近付けば転移で逃げるとなると、それこそアランが戦いを挑む以前の問題だ。
 そもそも同じ土俵に上げて貰えないのだから、戦いようがなかった。

「どうする?」

 呟きながら考えを整理するも、結局アランはこのままここにいても何の意味もないと判断し、大人しく本隊に戻ることにしたのだった。





「なるほど、転移能力ですか。それはまた厄介ですね」

 本隊に戻ると、ちょうど昼食の時間ということで皆が食事をしていたので、アランもゼオンから降りて、早速イルゼンに今回の件を説明していた。

「そうなんですよね。一体どういう手段で転移をしているのかは分かりませんけど……非常に厄介な相手です」

 肉と野菜がたっぷり入ったスープを味わいながら、アランは不満を口にする。
 アランの中にある苛立ちが、スープの美味さによっていくらかは収まっていく。
 そんなアランの様子を見ていたイルゼンは、ある意味で単純なアランを見て笑みを浮かべ……だがすぐに真剣な表情になる。
 普段は……いや、自分の命の危機であっても飄々とした様子のイルゼンが、こうした様子を見せるのは非常に珍しい。
 珍しいのだが、それは同時に現在の状況が決して楽なものではないということを意味していた。

(最悪の場合、自由に転移しまくって好き勝手にこっちを攻撃してくる……なんてことになりかねないしな)

 アランは転移に何らかの制限があるだろうとは思っている。
 思っているのだが、それはあくまでもアランの希望的な予想でしかないのも事実だ。
 もしかしたら、自由に転移出来るアーティファクトを入手し、それを使って何の制限もなく転移する……といった可能性も、否定は出来ない。
 アランにとって、それは最悪の未来ではある。
 不幸中の幸いと言うべきか、敵が狙っているのはあくまでもゼオン……正確にはアランだけだ。
 そうである以上、レジスタンス連合があの未知の攻撃を食らうといったようなことはない。
 ないのだが、それはあくまでも今だけの話となる。
 今のところはアランだけに攻撃が集中しているが、向こうがそれを守らなければならないということはない。
 いつ方針が変わり、ゼオンではなくレジスタンス連合に攻撃をするといったようなことにもなりかねない。
 そうなった場合、アランにとっては最悪の結末となる。
 そうならないよう、出来るだけ早く敵を倒したいと、そう思うのは当然のことだった。

「転移をするというのは、厄介ですね。転移する先で待ち受けるというのが最善でしょうが……」

 そう言うイルゼンだったが、その言葉のような真似がそう出来ることでないのは、本人も十分に理解しているのだろう。浮かない表情のままだ。
 そもそもどこに転移するのか分からない以上、転移する先で待ち受けるというのは、偶然敵が転移した先にアランがいるといったようなことになる必要があった。
 そのようなことになる可能性は、皆無ではない。皆無ではないが、それでもそのような真似を出来るかと言われれば、当然ながらその答えは否だ。

「今は、待つしかない……というのが正直なところですか」
「今のところはそうするしかないでしょうね。偶然遭遇するといった手段を取る必要はあるかもしれませんが、それはそれで難しいでしょう」

 そう告げるイルゼンの言葉に、アランは渋々といった様子で頷くのだった。
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