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ガリンダミア帝国との決着
381話
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ガリンダミア帝国軍を撃退したその日の夜、野営地では飲めや歌えやの大騒ぎとなった。
当然だろう。ガリンダミア帝国軍……それも一部隊といった規模ではなく、軍勢と呼ぶのに相応しい者達を相手に勝ったのだから。
それも辛勝であったり、自称勝利といったようなものではなく、本当の意味での勝利だ。
雲海や黄金の薔薇は怪我人は出たものの、死者ということであればゼロだ。
レジスタンス側は探索者と鍛え方が違うので、それなりに死人が出た。
しかし、それでもガリンダミア帝国軍の受けた被害を考えれば、まさに圧勝と言っても間違いのない戦いだった。
(とはいえ、それは俺やレオノーラのお陰なんだけどな)
アランはスープを食べながら、騒いでいるレジスタンスたちを見て、そんな風に思う。
それはアランの自惚れといったものではなく、間違いのない事実だ。
命中すれば大きな被害を及ばす投石機の類や、遠距離から一方的に攻撃出来る弓兵、そして様々魔法を使う魔法使いといった者たちがレオノーラの変身した黄金のドラゴンで一掃され、敵の中でも切り札にして最精鋭の騎兵隊や指揮官たちはゼオンの攻撃によって消滅した。
生き残りがゼロといった訳ではないだろうが、とてもではないが戦力にはならないだろう。
そういう意味で、今回の戦いはアランとレオノーラがいたからこそ、ここまで被害が少なかったのは間違いない。
もちろん、アランとレオノーラがいなくても、最終的にはイルゼンたちが勝っただろう。
だが、その場合は受けた被害が間違いなく数倍……場合によっては数十倍まで膨れ上がっていたはずだ。
そうなれば、今回の戦いはともかく、今後の戦いに悪影響を及ぼすのは間違いない。
「どうしたの? 面白くなさそうだけど」
スープを飲んでいるアランの側に、レオノーラがパンを手にやって来ると、そう尋ねる。
レオノーラの差し出したパンを受け取り、それを食べながらアランは口を開く。
「雲海と黄金の薔薇はともかく、レジスタンスたちは少し喜びすぎだと思わないか?」
アランの視線が向けられたのは、馬鹿騒ぎと呼ぶに相応しいくらいに騒いでいるレジスタンスたち。
レジスタンスたちの実力そのものは、決して高くはないのだ。
実際、今日の戦いでもレジスタンスは少数の腕利きを除いてほとんど活躍していない。
だというのに、自分たちの強さについて疑問も抱かず、宴会で騒いでいるのはどうかと、そうアランは思うのだ。
これは、アランが雲海の中では一番弱く、何とかして強くなろうと努力してきたからこそ、余計にそのように思うのだろう。
「皆がそう思ってる訳じゃないと思うわよ? 今日の戦いを生き残った。それを喜んで、ああして騒いでいるのは……別に悪い話じゃないでしょうし」
そう言うレオノーラの言葉には、強い説得力がある。
何かを言い返そうとしたアランだったが、ここで自分が何を言ってもあまり意味はないと、そのように思えてしまう程に。
それでも何かを言おうとすると……
「アラン、こんな場所で何をしてるんだい? 全く、いないと思ったら……今日は戦いに勝ったんだし、皆にあんたの説明をするから、いくわよ」
「え? ちょっ、母さん!?」
レオノーラと話していたところに、いきなり母親のリアが姿を現すと、アランを強引に引っ張って連れていく。
スープやパンをその場に残し、アランは騒いでいる者たちの前まで移動すると……
「ほら、この子が私の息子だよ。今日、敵の後方にいた騎兵隊や指揮官たちを一気に倒したのもこの子だ」
「……この人が? 見た感じ、そんなに強そうには思えないけど」
そう言ったのは、騒いでいたレジスタンスの一人。
そして、この本隊に合流した後で真っ先にリアに食ってかかった者の一人だ。
結局リアに負けてしまい、それ以後は逆らわずにリアに忠実な部下となったが。
それだけに、そんなリアの息子のアランを目の前にし、驚きを隠せない。
本当に目の前にいる人物がリアの息子? と。
しかし、そのアランの戦果は間違いなく一級品なのは間違いない。
それこそ、アランやレオノーラがいなければ、今日の戦いにおいて一体自分たちにどれくらいの被害が出たのか、全く分からないと思えるほどに。
だからこそ、この場にいるレジスタンスがアランに向ける視線は、友好的なものが多い。
……中には、本当にアランがリアの子供か? といったように疑惑の視線を向ける者もいるが。
ハーフエルフのリアは、まあ外見は二十代前半といったところで、アランのような子供を持つ母親であるというのは、見ている者に疑問を抱かせるには十分だった。
リアがハーフエルフだと認識出来れば、それも不思議ではないと思うのだが。
ただし、エルフというのは魔法や弓を得意とする者たちで、近接戦闘が得意な者は決して多くはない。
近接戦闘を行う際も、短剣やレイピアといった軽い武器を使う者が大半だ。
そんなエルフの血を引いているというのに、リアは人間が使うような長剣を平気で振り回す。
使いにくいので使わないが、リアがその気になれば大剣ですら使いこなすことも出来る。
そんなリアだからこそ、ハーフエルフといったように思うのは難しいのだろうが……それでも、こうして息子の側にいるリアを見れば、そういうものかと納得する者もいた。
中には、そんなリアとアランの姿を見ても、姉と弟といったようにしか思えない者もいるのだが。
「リアの姐さんには、世話になったんだよ。もしリアの姐さんがいなければ、俺たちはかなり大きな被害を受けていただろうからな」
男の一人が、アランに向かってそう言ってくる。
その言葉は大袈裟なものでもなんでもなく、今日の戦いのときにはリアが動き回ってレジスタンスの中でも危なくなった場所で戦い、戦線を維持していたのだ。
もしリアがいなければ、戦線が崩壊……とまではいかないまでも、かなりの被害を受けていたのは間違いないだろう。
そしてこの中にも、多数の者こうして勝利の美酒を味わうといった真似は出来なかったはずだ。
「母さんが世話になったみたいですね。……痛っ!」
アランが言い終わったと思った瞬間、いきなり背後から殴られる。
一体誰かが殴ったのかと言われれば、それは当然のようにリアだ。
「何するんだよ、母さん!」
「何するじゃないでしょ。私が世話になったんじゃなくて、私が世話をしたの。その辺り、間違えてるわよ」
「そう言ってもな。母さんの性格を考えれば……いや、母さんが世話をしたんだな。分かった」
言葉の途中で、リアがアランに見せつけるように拳を握り締めるのを見て、慌ててそう告げる。
今の状況で下手なことを言えば、間違いなくその拳が飛んでくると、そう理解したからだ。
アランにしてみれば、それは絶対に避けたい。
そう思っての判断であり……驚くべきことに、周囲で酒を飲んでいる者たちは、誰もそんなアランをからかったりしない。
戦いの中で、リアに逆らった者がどうなるのか、心の底から思い知らされているのだろう。
(母さんのことだから、殺してはいないと思うけど)
ここまで恐れられているリアだが、同時に先程の男が口にしたように好かれてもいる。
そういう意味では、色々と複雑な感情を抱いてる者も多いのだろう。
「明後日からは、また忙しくなるんだ。アランの場合は明日からかもしれないけどね。なら、今はゆっくりと休んでおいた方がいい。飲んで騒いで……そして今日の勝利を祝うんだよ」
リアのその言葉に、宴をしていた者たちはそれぞれに雄叫びを上げ始める。
そんな光景を見ていると、アランは先程まで自分が考えていたことが馬鹿らしく思えてきた。
今はこの宴を楽しみ、明日からの行動のために英気を養った方がいいだろうと判断する。
「で、アランだったよな。今更聞くまでもないんだろうけど……本当にお前はリアさんの息子なのか?」
気持ちを切り替えて宴を楽しんでいると、近くにいる男の一人がアランにそう尋ねてくる。
リアの外見から考えれば、アランのような息子がいるのはおかしい。
もしかしたら、養子か何かなのではないか。
そう思っての質問なのだろう。
ハーフエルフだけあって、リアは若々しい美貌をその身に宿している。
それだけに、ここで宴に参加している者の何人かはリアとそういう関係になりたいと、そのように思っている者も多いのだろう。
それは分かる。分かるのだが、アランとしては自分の実の母親をそういう目で見られるというのは……困る。
以前であれば、母さんをそんな目で見るなと不機嫌になったりもしたのだろうが、何だかんだとこの世界で生を受けて十数年。
何度もそのようなことが繰り返されれば、嫌でも慣れてしまう。
「母さんは俺の実の母親ですよ。それに、父さんとも未だに仲がいいみたいですし。……ほら」
アランが示すと、男は……そして周囲で気が付かれないように話を聞いていた他の男たちも、アランの示す先を見る。
するとそこでは、リアが夫のニコラスと二人で楽しそうに酒を飲み、独特の雰囲気を作っていた。
そんな二人の姿を見れば、リアとニコラスがどのような関係で、どれだけお互いに心を許しあっているのかといったようなことを男たちに悟らせるには十分だ。
「う……」
アランに話しかけてきた男も、その光景を見れば何も言えなくなる。
「ああいう訳なんで、母さんに妙な感情を抱くな……というのは無理かもしれませんけど、それを表に出すような真似はしないで下さいね。そうなった場合、色々と面倒なことになると思うので」
そんなアランの言葉に、男は頷く。
今のリアを見て、自分がどう思っているのかといったようなことを言っても、それは意味がないと……そう思えたのだろう。
(ふぅ、取りあえずこれでよけいな騒動が起きなくてすんだ、か)
リアの美貌に牽かれて、口説こうと思う者が出て来るのは珍しい話ではない。
アランもそれが分かっているだけに、騒動が大きくなる前に片付けることが出来たことに安堵し……改めて、今日の宴はやっぱりやってよかったのかも……と、そう思うのだった。
当然だろう。ガリンダミア帝国軍……それも一部隊といった規模ではなく、軍勢と呼ぶのに相応しい者達を相手に勝ったのだから。
それも辛勝であったり、自称勝利といったようなものではなく、本当の意味での勝利だ。
雲海や黄金の薔薇は怪我人は出たものの、死者ということであればゼロだ。
レジスタンス側は探索者と鍛え方が違うので、それなりに死人が出た。
しかし、それでもガリンダミア帝国軍の受けた被害を考えれば、まさに圧勝と言っても間違いのない戦いだった。
(とはいえ、それは俺やレオノーラのお陰なんだけどな)
アランはスープを食べながら、騒いでいるレジスタンスたちを見て、そんな風に思う。
それはアランの自惚れといったものではなく、間違いのない事実だ。
命中すれば大きな被害を及ばす投石機の類や、遠距離から一方的に攻撃出来る弓兵、そして様々魔法を使う魔法使いといった者たちがレオノーラの変身した黄金のドラゴンで一掃され、敵の中でも切り札にして最精鋭の騎兵隊や指揮官たちはゼオンの攻撃によって消滅した。
生き残りがゼロといった訳ではないだろうが、とてもではないが戦力にはならないだろう。
そういう意味で、今回の戦いはアランとレオノーラがいたからこそ、ここまで被害が少なかったのは間違いない。
もちろん、アランとレオノーラがいなくても、最終的にはイルゼンたちが勝っただろう。
だが、その場合は受けた被害が間違いなく数倍……場合によっては数十倍まで膨れ上がっていたはずだ。
そうなれば、今回の戦いはともかく、今後の戦いに悪影響を及ぼすのは間違いない。
「どうしたの? 面白くなさそうだけど」
スープを飲んでいるアランの側に、レオノーラがパンを手にやって来ると、そう尋ねる。
レオノーラの差し出したパンを受け取り、それを食べながらアランは口を開く。
「雲海と黄金の薔薇はともかく、レジスタンスたちは少し喜びすぎだと思わないか?」
アランの視線が向けられたのは、馬鹿騒ぎと呼ぶに相応しいくらいに騒いでいるレジスタンスたち。
レジスタンスたちの実力そのものは、決して高くはないのだ。
実際、今日の戦いでもレジスタンスは少数の腕利きを除いてほとんど活躍していない。
だというのに、自分たちの強さについて疑問も抱かず、宴会で騒いでいるのはどうかと、そうアランは思うのだ。
これは、アランが雲海の中では一番弱く、何とかして強くなろうと努力してきたからこそ、余計にそのように思うのだろう。
「皆がそう思ってる訳じゃないと思うわよ? 今日の戦いを生き残った。それを喜んで、ああして騒いでいるのは……別に悪い話じゃないでしょうし」
そう言うレオノーラの言葉には、強い説得力がある。
何かを言い返そうとしたアランだったが、ここで自分が何を言ってもあまり意味はないと、そのように思えてしまう程に。
それでも何かを言おうとすると……
「アラン、こんな場所で何をしてるんだい? 全く、いないと思ったら……今日は戦いに勝ったんだし、皆にあんたの説明をするから、いくわよ」
「え? ちょっ、母さん!?」
レオノーラと話していたところに、いきなり母親のリアが姿を現すと、アランを強引に引っ張って連れていく。
スープやパンをその場に残し、アランは騒いでいる者たちの前まで移動すると……
「ほら、この子が私の息子だよ。今日、敵の後方にいた騎兵隊や指揮官たちを一気に倒したのもこの子だ」
「……この人が? 見た感じ、そんなに強そうには思えないけど」
そう言ったのは、騒いでいたレジスタンスの一人。
そして、この本隊に合流した後で真っ先にリアに食ってかかった者の一人だ。
結局リアに負けてしまい、それ以後は逆らわずにリアに忠実な部下となったが。
それだけに、そんなリアの息子のアランを目の前にし、驚きを隠せない。
本当に目の前にいる人物がリアの息子? と。
しかし、そのアランの戦果は間違いなく一級品なのは間違いない。
それこそ、アランやレオノーラがいなければ、今日の戦いにおいて一体自分たちにどれくらいの被害が出たのか、全く分からないと思えるほどに。
だからこそ、この場にいるレジスタンスがアランに向ける視線は、友好的なものが多い。
……中には、本当にアランがリアの子供か? といったように疑惑の視線を向ける者もいるが。
ハーフエルフのリアは、まあ外見は二十代前半といったところで、アランのような子供を持つ母親であるというのは、見ている者に疑問を抱かせるには十分だった。
リアがハーフエルフだと認識出来れば、それも不思議ではないと思うのだが。
ただし、エルフというのは魔法や弓を得意とする者たちで、近接戦闘が得意な者は決して多くはない。
近接戦闘を行う際も、短剣やレイピアといった軽い武器を使う者が大半だ。
そんなエルフの血を引いているというのに、リアは人間が使うような長剣を平気で振り回す。
使いにくいので使わないが、リアがその気になれば大剣ですら使いこなすことも出来る。
そんなリアだからこそ、ハーフエルフといったように思うのは難しいのだろうが……それでも、こうして息子の側にいるリアを見れば、そういうものかと納得する者もいた。
中には、そんなリアとアランの姿を見ても、姉と弟といったようにしか思えない者もいるのだが。
「リアの姐さんには、世話になったんだよ。もしリアの姐さんがいなければ、俺たちはかなり大きな被害を受けていただろうからな」
男の一人が、アランに向かってそう言ってくる。
その言葉は大袈裟なものでもなんでもなく、今日の戦いのときにはリアが動き回ってレジスタンスの中でも危なくなった場所で戦い、戦線を維持していたのだ。
もしリアがいなければ、戦線が崩壊……とまではいかないまでも、かなりの被害を受けていたのは間違いないだろう。
そしてこの中にも、多数の者こうして勝利の美酒を味わうといった真似は出来なかったはずだ。
「母さんが世話になったみたいですね。……痛っ!」
アランが言い終わったと思った瞬間、いきなり背後から殴られる。
一体誰かが殴ったのかと言われれば、それは当然のようにリアだ。
「何するんだよ、母さん!」
「何するじゃないでしょ。私が世話になったんじゃなくて、私が世話をしたの。その辺り、間違えてるわよ」
「そう言ってもな。母さんの性格を考えれば……いや、母さんが世話をしたんだな。分かった」
言葉の途中で、リアがアランに見せつけるように拳を握り締めるのを見て、慌ててそう告げる。
今の状況で下手なことを言えば、間違いなくその拳が飛んでくると、そう理解したからだ。
アランにしてみれば、それは絶対に避けたい。
そう思っての判断であり……驚くべきことに、周囲で酒を飲んでいる者たちは、誰もそんなアランをからかったりしない。
戦いの中で、リアに逆らった者がどうなるのか、心の底から思い知らされているのだろう。
(母さんのことだから、殺してはいないと思うけど)
ここまで恐れられているリアだが、同時に先程の男が口にしたように好かれてもいる。
そういう意味では、色々と複雑な感情を抱いてる者も多いのだろう。
「明後日からは、また忙しくなるんだ。アランの場合は明日からかもしれないけどね。なら、今はゆっくりと休んでおいた方がいい。飲んで騒いで……そして今日の勝利を祝うんだよ」
リアのその言葉に、宴をしていた者たちはそれぞれに雄叫びを上げ始める。
そんな光景を見ていると、アランは先程まで自分が考えていたことが馬鹿らしく思えてきた。
今はこの宴を楽しみ、明日からの行動のために英気を養った方がいいだろうと判断する。
「で、アランだったよな。今更聞くまでもないんだろうけど……本当にお前はリアさんの息子なのか?」
気持ちを切り替えて宴を楽しんでいると、近くにいる男の一人がアランにそう尋ねてくる。
リアの外見から考えれば、アランのような息子がいるのはおかしい。
もしかしたら、養子か何かなのではないか。
そう思っての質問なのだろう。
ハーフエルフだけあって、リアは若々しい美貌をその身に宿している。
それだけに、ここで宴に参加している者の何人かはリアとそういう関係になりたいと、そのように思っている者も多いのだろう。
それは分かる。分かるのだが、アランとしては自分の実の母親をそういう目で見られるというのは……困る。
以前であれば、母さんをそんな目で見るなと不機嫌になったりもしたのだろうが、何だかんだとこの世界で生を受けて十数年。
何度もそのようなことが繰り返されれば、嫌でも慣れてしまう。
「母さんは俺の実の母親ですよ。それに、父さんとも未だに仲がいいみたいですし。……ほら」
アランが示すと、男は……そして周囲で気が付かれないように話を聞いていた他の男たちも、アランの示す先を見る。
するとそこでは、リアが夫のニコラスと二人で楽しそうに酒を飲み、独特の雰囲気を作っていた。
そんな二人の姿を見れば、リアとニコラスがどのような関係で、どれだけお互いに心を許しあっているのかといったようなことを男たちに悟らせるには十分だ。
「う……」
アランに話しかけてきた男も、その光景を見れば何も言えなくなる。
「ああいう訳なんで、母さんに妙な感情を抱くな……というのは無理かもしれませんけど、それを表に出すような真似はしないで下さいね。そうなった場合、色々と面倒なことになると思うので」
そんなアランの言葉に、男は頷く。
今のリアを見て、自分がどう思っているのかといったようなことを言っても、それは意味がないと……そう思えたのだろう。
(ふぅ、取りあえずこれでよけいな騒動が起きなくてすんだ、か)
リアの美貌に牽かれて、口説こうと思う者が出て来るのは珍しい話ではない。
アランもそれが分かっているだけに、騒動が大きくなる前に片付けることが出来たことに安堵し……改めて、今日の宴はやっぱりやってよかったのかも……と、そう思うのだった。
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