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ガリンダミア帝国との決着
361話
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ガリンダミア帝国との戦い……それを行うということになったのは、アランにとっても幸いだった。
だが、それでもどうしても分からないことがある。それは……
「イルゼンさん、一体どうやってこんな真似を……?」
唖然としたという表情でも足りないほどに驚きを表しながら、テントの中でアランが尋ねる。
当然だろう。何しろ、イルゼンは連合軍を結成したのだから。
……そう、連合軍。国同士が協力して軍を結成し、ガリンダミア帝国に挑むといったようなことをやってのけたのだ。
イルゼンの顔の広さは、アランも理解していた。
しかし、まさかこのようなことを出来るほどに顔が広いというのは、アランにとっても信じられるようなことではない。
「色々とあるんだよ。こう見えて、それなりに長く生きているしね。それに、こうしていくつもの国が協力をしてくれたのは、僕の顔の広さだけではないんだ。いつガリンダミア帝国が自分達の国に攻めてくるのか……それを不安に思っている者は多いし」
「あー……なるほど」
そう言われれば、アランにも納得出来た。
ガリンダミア帝国は、周辺諸国を占領して次々と領土を広げていった。
それこそ、際限なく。
そんなガリンダミア帝国の近くの国に住んでいる者たちにしてみれば、そんなガリンダミア帝国を警戒しているのは間違いない。
(けど、そうしてガリンダミア帝国に危険を感じつつ、今までは連合軍として動くことはなかった)
連合軍とはいえ、実際には強力な信頼で結ばれている訳ではなく、あくまでも利害関係の一致だ。
中には、ガリンダミア帝国が危険だからというだけで連合国に入ったが、長年敵対している国同士もある。
それでもかろうじて連合軍として動けているのは、間違いなくイルゼンの影響だった。
「ともあれ、僕たちもいつまでもここでこうしている訳にはいきませんよ。ガリンダミア帝国が現在の状況でどのように動くのかは、予想出来ません」
予想出来ません。
そう言う割には、イルゼンの視線はアランに向けられていいる。
それが、一体何を言いたいのかを如実に示している。
それはつまり、いくらガリンダミア帝国の周辺国が連合軍を結成したとはいえ、ガリンダミア帝国の狙いはアランであると、そう言ってるように思えた。
とはいえ、国が存亡の危機なのは明らかだというのに、そのような状況であっても何故そこまで自分に拘るのか。
それが、アランには分からない。
(まさか、俺がガリンダミア帝国の領土内にいるから、なんてことはないだろうけど)
そう、現在アランたちがいるのは、ガリンダミア帝国の領土内。
メルリアナにあるデルリアでクラリスたちと別れてから、既に二ヶ月ほどが経過していた。
その間にアランたちはガリンダミア帝国に戻り、以前協力したレジスタンスや、帝都ではない場所に存在するレジスタンスたちとも協力体制を築いてきた。
レジスタンスたちにしてみれば、本来なら自分たちだけでガリンダミア帝国の支配から脱したかったのだろう。
だが、ガリンダミア帝国の力は強い。
それを十分に理解しているからこそ、多くのレジスタンスはアランたちに……正確には話を持ってきたイルゼンに協力を約束する。
もっとも、イルゼンの胡散臭さから信じられるのに時間がかかったり、あるいは意地でも自分たちだけでガリンダミア帝国を打倒するから他の者の手は借りないといったような者たちもいたが。
そのような連中は、イルゼンが……あるいはレオノーラやニコラス、リアといった面々が説得した。
だが、そんな中でも自分たちの実力に自信を持っている者は、それでも絶対に手を組むのを渋り、それだけのことを言うのなら、その力を見せてみろといったようなことになって戦いになったこともあった。
もっとも、そうなってしまえば結局のところアランたちの勝利となったのだが。
いくらレジスタンスとして自信があっても、結局それはレジスタンスとしての自信だ。
探索者として、古代魔法文明の遺跡に潜っては、そこを守っているゴーレムや人形、あるいは遺跡に入り込んで繁殖していたモンスターといったような存在と戦い続けてきた雲海や黄金の薔薇にしてみれば、容易に倒せる程度の強さでしかない。
結果として、力を見せろと言ってきた者たちは、その力で負けて素直に連合軍に合流することになった。
「とはいえ……レジスタンスは結局レジスタンスでしかありません。何人かはかなりの腕利きがいましたが、言ってみれば戦闘で本当に頼りになるのは、その何人かだけです」
イルゼンにしては、冷たい言葉。
だが、戦場における現実が非情だというのは、当然ながらアランも知っている。
力のない者が戦場に出れば、よほどの幸運がない限りは死んでしまう。
レジスタンスは、それを承知の上で、活動しているのだ。
……中には、レジスタンスという活動に酔って現実が見えていない者もいるが。
ガリンダミア帝国という巨大な敵に抗う自分に酔っているような、そんな者たち。
アランにしてみれば、そのような危険な相手は仲間にする必要があるのかといった疑問があったのだが、イルゼンはそのような者たちも引き入れてる。
そして現在、アランたちはガリンダミア帝国の中でもあまり人のいない田舎で、他のレジスタンスたちが合流するのを待っていた。
実際にはレジスタンスのいる場所を移動しているときに、大半のレジスタンスはアランたちと一緒に行動をしていたので、合流するのを待っているのは、何らかの理由があって一緒に行動出来なかったようなレジスタンスだけだったのだが。
「その何人かに頼るしかないのは残念ですけど、それでも今回の状況を思えばしょうがない一面もあるんでしょうね」
戦うのが、一つの村や街……あるいは都市であっても、雲海と黄金の薔薇という戦力があれば、ある程度対処するのは難しくはない。
もちろん、それは向こうに心核使いのような戦力がいなければという前提での話だが。
しかし、今回戦うのはガリンダミア帝国そのものだ。
国そのものと戦う以上、どうしても雲海や黄金の薔薇といった戦力だけではたりなくなる。
兵士を指揮する指揮官が必要となる。
そんな中でも、小隊長くらいであれば務まる者も多いだろう。
中隊長となると難しいし、大隊長となるとさらに人数は少なくなる。
だが、イルゼンが欲しているのは、大隊長よりもさらに上。
将軍が務まるような者たちだ。
しかし、レジスタンスをしていた者たちで、そのような能力を持っている者は決して多くはない。
それどころか、しっかりとした軍隊の中でも将軍が務まる能力の持ち主は少なかった。
だからこそ、今の状況において一人や二人でもその将軍と呼ぶに相応しい能力……あるいは素質を持つ者が現れたのは、嬉しかった。
「アラン、ちょっと来なさい。訓練の時間よ」
と、不意にイルゼンと話していたテントにリアが顔を突っ込み、そう言ってくる。
アランの母親たるハーフエルフのリアだが、ハーフエルフだからか、実年齢と外見は合っていない。
アランとリアを見て、姉弟……もしくは兄妹と見る者はいても、母親と息子と見る者は多くないだろう。
だが、そんなリアだが魔法や心核を使わない戦いにおいては、雲海でも……いや、黄金の薔薇を含めても、最強の一人だ。
アランはそんなリアの息子ではあったが、母親の戦闘力も、魔法使いとして突出した力を持つ父親の才能も受け継がず……心核使いに特化した存在となった。
とはいえ、母親が物理、父親が魔法、子供が心核使いと考えれば、ある意味でバランスは取れているのかもしれないが。
ただ、母親のリアとしては、少しでもアランに訓練をして戦えるようにしてやりたいという思いがある。
リアもアランが心核使いとして突出した実力を持っているのは知っている。
知っているが、生身のときに急に攻撃をされれば、いくら凄腕の心核使いであっても生身で対処するしかない。
だからこそ、心核使いであっても他の者は相応の実力を持っている者が多い。
すでにガリンダミア帝国との戦いが間近まで迫っている今、多少鍛えたところでそれは大きな意味を持たない。
それでも鍛え、少しでもアランの技量を上げたいと思うのは、リアが母親である以上は当然なのだろう。
アランもそのようなリアの気持ちを理解しているので、素直にテントから出る。
「うわぁ……」
そうしてテントから出たアランだったが、少し離れた場所で多くの者が倒れているのを見て、そんな声を出す。
改めて倒れている者たちを見ると、その多くは現在アランたちと行動を共にしているレジスタンスの中でも、腕利き……少なくても自分の技量に自信があると言ってる者たちだ。
そのような者たちが、纏めて地面に倒れているのだからアランの口からそのような言葉が出るのも仕方がない。
ましてや、倒れている者の全てをリアがやったのだから、アランが自分の母親の存在にそんな声を出してもおかしくはなかった。
「ほら、アラン。模擬戦をやるわよ。準備はいい?」
有無を言わせないリアの言葉に、アランも反論せずに鞘から長剣を抜く。
もしここで模擬戦をやりたくないと言っても、結局最後はやらざるをえないのだ。
であれば、ここでやらないといったようなことを言っても、リアの気分を害するだけとなる。
そうである以上、今は素直に模擬戦をやった方がいい。
リアとの模擬戦は、自分にとっても多少なりとも利益になると、そう判断しているのも大きかった。
「行くぞ!」
気合いの声を上げ、長剣を手にリアとの間合いを詰める。
だが、そんなアランの踏み込みを見ながら、リアは叫ぶ。
「遅い!」
短い一言だったが、次の瞬間にはリアの姿はアランのすぐ前にあり、それどころか長剣を鞘に収めたままで振るわれ……
「ぐうっ!」
何とかそれを防ぐアランだったが、そのまま吹き飛ばされる。
エルフといえば、普通は非力な種族という印象を持つ者が多いだろう。
だが、リアは一般的に信じられているエルフのイメージとは全く違い、非常に高い身体能力を持っていた。
そんなリアの攻撃で吹き飛びつつも、何とか足から着地して吹き飛ぶことは避ける。
そうして、アランは再びリアに向かって攻撃を仕掛けるのだった。
だが、それでもどうしても分からないことがある。それは……
「イルゼンさん、一体どうやってこんな真似を……?」
唖然としたという表情でも足りないほどに驚きを表しながら、テントの中でアランが尋ねる。
当然だろう。何しろ、イルゼンは連合軍を結成したのだから。
……そう、連合軍。国同士が協力して軍を結成し、ガリンダミア帝国に挑むといったようなことをやってのけたのだ。
イルゼンの顔の広さは、アランも理解していた。
しかし、まさかこのようなことを出来るほどに顔が広いというのは、アランにとっても信じられるようなことではない。
「色々とあるんだよ。こう見えて、それなりに長く生きているしね。それに、こうしていくつもの国が協力をしてくれたのは、僕の顔の広さだけではないんだ。いつガリンダミア帝国が自分達の国に攻めてくるのか……それを不安に思っている者は多いし」
「あー……なるほど」
そう言われれば、アランにも納得出来た。
ガリンダミア帝国は、周辺諸国を占領して次々と領土を広げていった。
それこそ、際限なく。
そんなガリンダミア帝国の近くの国に住んでいる者たちにしてみれば、そんなガリンダミア帝国を警戒しているのは間違いない。
(けど、そうしてガリンダミア帝国に危険を感じつつ、今までは連合軍として動くことはなかった)
連合軍とはいえ、実際には強力な信頼で結ばれている訳ではなく、あくまでも利害関係の一致だ。
中には、ガリンダミア帝国が危険だからというだけで連合国に入ったが、長年敵対している国同士もある。
それでもかろうじて連合軍として動けているのは、間違いなくイルゼンの影響だった。
「ともあれ、僕たちもいつまでもここでこうしている訳にはいきませんよ。ガリンダミア帝国が現在の状況でどのように動くのかは、予想出来ません」
予想出来ません。
そう言う割には、イルゼンの視線はアランに向けられていいる。
それが、一体何を言いたいのかを如実に示している。
それはつまり、いくらガリンダミア帝国の周辺国が連合軍を結成したとはいえ、ガリンダミア帝国の狙いはアランであると、そう言ってるように思えた。
とはいえ、国が存亡の危機なのは明らかだというのに、そのような状況であっても何故そこまで自分に拘るのか。
それが、アランには分からない。
(まさか、俺がガリンダミア帝国の領土内にいるから、なんてことはないだろうけど)
そう、現在アランたちがいるのは、ガリンダミア帝国の領土内。
メルリアナにあるデルリアでクラリスたちと別れてから、既に二ヶ月ほどが経過していた。
その間にアランたちはガリンダミア帝国に戻り、以前協力したレジスタンスや、帝都ではない場所に存在するレジスタンスたちとも協力体制を築いてきた。
レジスタンスたちにしてみれば、本来なら自分たちだけでガリンダミア帝国の支配から脱したかったのだろう。
だが、ガリンダミア帝国の力は強い。
それを十分に理解しているからこそ、多くのレジスタンスはアランたちに……正確には話を持ってきたイルゼンに協力を約束する。
もっとも、イルゼンの胡散臭さから信じられるのに時間がかかったり、あるいは意地でも自分たちだけでガリンダミア帝国を打倒するから他の者の手は借りないといったような者たちもいたが。
そのような連中は、イルゼンが……あるいはレオノーラやニコラス、リアといった面々が説得した。
だが、そんな中でも自分たちの実力に自信を持っている者は、それでも絶対に手を組むのを渋り、それだけのことを言うのなら、その力を見せてみろといったようなことになって戦いになったこともあった。
もっとも、そうなってしまえば結局のところアランたちの勝利となったのだが。
いくらレジスタンスとして自信があっても、結局それはレジスタンスとしての自信だ。
探索者として、古代魔法文明の遺跡に潜っては、そこを守っているゴーレムや人形、あるいは遺跡に入り込んで繁殖していたモンスターといったような存在と戦い続けてきた雲海や黄金の薔薇にしてみれば、容易に倒せる程度の強さでしかない。
結果として、力を見せろと言ってきた者たちは、その力で負けて素直に連合軍に合流することになった。
「とはいえ……レジスタンスは結局レジスタンスでしかありません。何人かはかなりの腕利きがいましたが、言ってみれば戦闘で本当に頼りになるのは、その何人かだけです」
イルゼンにしては、冷たい言葉。
だが、戦場における現実が非情だというのは、当然ながらアランも知っている。
力のない者が戦場に出れば、よほどの幸運がない限りは死んでしまう。
レジスタンスは、それを承知の上で、活動しているのだ。
……中には、レジスタンスという活動に酔って現実が見えていない者もいるが。
ガリンダミア帝国という巨大な敵に抗う自分に酔っているような、そんな者たち。
アランにしてみれば、そのような危険な相手は仲間にする必要があるのかといった疑問があったのだが、イルゼンはそのような者たちも引き入れてる。
そして現在、アランたちはガリンダミア帝国の中でもあまり人のいない田舎で、他のレジスタンスたちが合流するのを待っていた。
実際にはレジスタンスのいる場所を移動しているときに、大半のレジスタンスはアランたちと一緒に行動をしていたので、合流するのを待っているのは、何らかの理由があって一緒に行動出来なかったようなレジスタンスだけだったのだが。
「その何人かに頼るしかないのは残念ですけど、それでも今回の状況を思えばしょうがない一面もあるんでしょうね」
戦うのが、一つの村や街……あるいは都市であっても、雲海と黄金の薔薇という戦力があれば、ある程度対処するのは難しくはない。
もちろん、それは向こうに心核使いのような戦力がいなければという前提での話だが。
しかし、今回戦うのはガリンダミア帝国そのものだ。
国そのものと戦う以上、どうしても雲海や黄金の薔薇といった戦力だけではたりなくなる。
兵士を指揮する指揮官が必要となる。
そんな中でも、小隊長くらいであれば務まる者も多いだろう。
中隊長となると難しいし、大隊長となるとさらに人数は少なくなる。
だが、イルゼンが欲しているのは、大隊長よりもさらに上。
将軍が務まるような者たちだ。
しかし、レジスタンスをしていた者たちで、そのような能力を持っている者は決して多くはない。
それどころか、しっかりとした軍隊の中でも将軍が務まる能力の持ち主は少なかった。
だからこそ、今の状況において一人や二人でもその将軍と呼ぶに相応しい能力……あるいは素質を持つ者が現れたのは、嬉しかった。
「アラン、ちょっと来なさい。訓練の時間よ」
と、不意にイルゼンと話していたテントにリアが顔を突っ込み、そう言ってくる。
アランの母親たるハーフエルフのリアだが、ハーフエルフだからか、実年齢と外見は合っていない。
アランとリアを見て、姉弟……もしくは兄妹と見る者はいても、母親と息子と見る者は多くないだろう。
だが、そんなリアだが魔法や心核を使わない戦いにおいては、雲海でも……いや、黄金の薔薇を含めても、最強の一人だ。
アランはそんなリアの息子ではあったが、母親の戦闘力も、魔法使いとして突出した力を持つ父親の才能も受け継がず……心核使いに特化した存在となった。
とはいえ、母親が物理、父親が魔法、子供が心核使いと考えれば、ある意味でバランスは取れているのかもしれないが。
ただ、母親のリアとしては、少しでもアランに訓練をして戦えるようにしてやりたいという思いがある。
リアもアランが心核使いとして突出した実力を持っているのは知っている。
知っているが、生身のときに急に攻撃をされれば、いくら凄腕の心核使いであっても生身で対処するしかない。
だからこそ、心核使いであっても他の者は相応の実力を持っている者が多い。
すでにガリンダミア帝国との戦いが間近まで迫っている今、多少鍛えたところでそれは大きな意味を持たない。
それでも鍛え、少しでもアランの技量を上げたいと思うのは、リアが母親である以上は当然なのだろう。
アランもそのようなリアの気持ちを理解しているので、素直にテントから出る。
「うわぁ……」
そうしてテントから出たアランだったが、少し離れた場所で多くの者が倒れているのを見て、そんな声を出す。
改めて倒れている者たちを見ると、その多くは現在アランたちと行動を共にしているレジスタンスの中でも、腕利き……少なくても自分の技量に自信があると言ってる者たちだ。
そのような者たちが、纏めて地面に倒れているのだからアランの口からそのような言葉が出るのも仕方がない。
ましてや、倒れている者の全てをリアがやったのだから、アランが自分の母親の存在にそんな声を出してもおかしくはなかった。
「ほら、アラン。模擬戦をやるわよ。準備はいい?」
有無を言わせないリアの言葉に、アランも反論せずに鞘から長剣を抜く。
もしここで模擬戦をやりたくないと言っても、結局最後はやらざるをえないのだ。
であれば、ここでやらないといったようなことを言っても、リアの気分を害するだけとなる。
そうである以上、今は素直に模擬戦をやった方がいい。
リアとの模擬戦は、自分にとっても多少なりとも利益になると、そう判断しているのも大きかった。
「行くぞ!」
気合いの声を上げ、長剣を手にリアとの間合いを詰める。
だが、そんなアランの踏み込みを見ながら、リアは叫ぶ。
「遅い!」
短い一言だったが、次の瞬間にはリアの姿はアランのすぐ前にあり、それどころか長剣を鞘に収めたままで振るわれ……
「ぐうっ!」
何とかそれを防ぐアランだったが、そのまま吹き飛ばされる。
エルフといえば、普通は非力な種族という印象を持つ者が多いだろう。
だが、リアは一般的に信じられているエルフのイメージとは全く違い、非常に高い身体能力を持っていた。
そんなリアの攻撃で吹き飛びつつも、何とか足から着地して吹き飛ぶことは避ける。
そうして、アランは再びリアに向かって攻撃を仕掛けるのだった。
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