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獣人を率いる者
348話
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公開試合に誰を出すか。
当然ながら、その辺りについては皆が悩むことになった。
現在出場が確定しているのは、心核使いの枠としてのアランと、総大将としてクラリス。
そうなると、五対五である以上、残りの人数は三人となる。
ギジュの屋敷にいるという限られたメンバーの中で、強者となるとどうしても数は限られてしまう。
まず真っ先に名前が上がるのは、心核使いとしても、生身でも圧倒的な強さを持つレオノーラ。
そして、心核使いではあるが、同時に生身での戦いでも強い……言い方は若干悪いが、レオノーラの下位互換的な存在のジャスパー。
獣牙衆の一員で、ゴールスに命令されるのが嫌でクラリスに味方をすることに決めた、ガーウェイ。
どうしても、この三人が最有力候補となるのは当然だった。
中にはギジュが雇った者の中で、自分の強さに自信があるといったような者もいたのだが、レオノーラたち三人に勝てる者はいない。
なら、これで決まりか。
そう思ったところで、声を上げた者がいた。
「クラリス様の護衛である以上、この戦いに私も出場を希望します」
そう宣言したのは、ロルフ。
実際、クラリスが旅を始めた当初からその護衛をして、他の部下たちを纏めてきたロルフには、そのように言う資格は十分にあっただろう。
また、現在ギジュの屋敷にいる者ということで最初に上げられた三人に比べるとその実力は劣るが、その実力は三人に次ぐのは間違いない。
もし選ぶのが三人ではなく四人であるとすれば、ロルフがその四人目だったのは間違いない。
とはいえ……だからといって、素直にそれを認められるかと言えば、その答えは否だ。
「本気か、ロルフ? もしこの戦いで負ければ、そっちのお嬢ちゃんは全てをなくするんだぞ? そんな重要なときに、実力ではなく自分が戦いたいから選んで欲しいっては……洒落にならないぞ」
ロルフの兄貴分として、ガーウェイはそう告げる。
ガーウェイにしてみれば、それは半ば本気の言葉ではあっても、もう半分は自分が戦いに出られないかもしれないということを考えての言葉だ。
何度かジャスパーと腕試しとして模擬戦をしているものの、未だに勝ったことはない。
自分の腕に自信があっただけに、ガーウェイにとってかなりショックだったのは間違いない。
しかし、同時にそれは自分の前に壁があるということでもあり、倒す相手という意味で燃える相手なのは間違いなかった。
それはともかくとして、ジャスパーと戦っても勝てない以上。そんなジャスパーより強いレオノーラと戦っても、当然ながら勝ち目はない。
つまり、もしロルフが戦いに出るとなれば、この三人の中で外れるのはガーウェイとなってしまう。
ガーウェイにとっても、この戦いにかんしては参加しない訳にもいかなかった。
ゴールスが五人と言われて誰を出してくるのかは分からない。
だが、その中には間違いなく獣牙衆のメンバーが……もしかしたら、獣牙衆のトップが参加するだろう。
であれば、獣牙衆としての現在の在り方に疑問を抱いて出奔してきたガーウェイがこの戦いに参加しないといった選択肢はない。
「ガーウェイさんの言いたいことも分かる。だから……戦いが行われる前日までに、俺はガーウェイさんと戦って勝つ。それなら問題はないだろう?」
「へぇ、随分と大きく出たな」
自分に勝つと言うロルフに、ガーウェイは面白いと獰猛な笑みを浮かべる。
ガーウェイにとって、ロルフは自分の弟分だ。
そんな弟分が自分に挑んでくるというのだから、その心中は面白いといった気持ちが湧き上がる。
「いいだろう、お前がそこまで言うのなら、こっちも相応に覚悟を決めてやる。ただし、戦いの日までの日数は少ないぞ? それまでにお前が俺に勝てるかな?」
ガーウェイの挑発的な言葉に、ロルフはやる気を見せて頷く。
ロルフにしてみれば、ガーウェイは色々と世話になった兄貴分であるのは間違いない。
だが同時に、超えるべき壁でもあるのだ。
ある意味、ジャスパーがガーウェイにとって超えるべき壁であるのに対し、ガーウェイもまたロルフにとって超えるべき壁なのだろう。
ガーウェイもそれが分かっているだけに、ロルフからの挑戦を受けたという一面もあった。
「じゃあ、話は決まりね。……クラリス、改めて聞くまでもないと思うけど、念のために聞くわ。本当にこれでいいのね?」
確認するようにクラリスに尋ねるレオノーラ。
もしレオノーラが被害も何も恐れないというのなら、それこそゴールスの屋敷で直接会ったときに、ゴールスを殺すなりなんなりすることは出来た。
レオノーラやジャスパーには、間違いなくそのような力があるのだから。
さらに周辺の被害を恐れないのなら、アランが召喚するゼオンの武器を使えば、それこそ問答無用でゴールスを殺す……いや、消滅させるといったような真似も出来ただろう。
だが、クラリスはそのどちらも選択しなかった。
それこそ、自分が負けるかもしれない可能性を考えた上で、ゴールスに提案した公開試合を提案した。
それは、ある意味でクラリスの甘えでもあったのだろう。
アランに人を殺して欲しくないといったような。
レオノーラはそんなクラリスの思いを理解してはいたが、それでも今の状況を考えると、色々と思うところがあってもおかしくはない。
だが、それでもクラリスは公の場で戦った方が被害が少なくなり、何より誰の目にも明らかになると、そう判断したのだ。
そうである以上、今になって後悔するといたようなことはあってはならない。
「はい、これが最善の結果だと思います。……ゴールスがどう出て来るのかは分かりませんが、それでもここにいる人たちなら対処することは出来るでしょう」
クラリスの言葉に、部屋にいる多くの者たちが気合いを入れる。
ここまで慕われているのだから、これで燃えない訳がなかった。
「ゴールスさん、本気ですか? ああいう条件を出した以上、間違いなく連中もこっちを警戒しています。だとすれば、そんな中で刺客を放っても、向こうに有利になるだけです!」
「黙れ」
ゴールスの口から出たのは、低い声。
それこそ、その声を聞いただけで気の小さい者は声も何も出せなくなるだろう、そんな低い声だった。
それでもゴールスにこの状況で刺客を放つのは止めた方がいいと言っている男は、退かない。
もしここで刺客を送り、それが成功すればいい。
だが、失敗して捕らえられた場合……それは、ゴールスにとって大きなマイナスになることは明らかだったためだ。
しかし、ゴールスはそんな男の様子を見ても意思を曲げることはない。
「クラリスを殺せとは言わん。だが、現在ギジュの屋敷にいる者の中で腕利きと思われる誰かを殺せと言ってるんだ。ただでさえ、心核使い同士の戦いではこちらの負けが決定してるんだ。大将戦では俺が勝つとはいえ、そうなると問題なのは残り三戦。その勝率を少しでも上げたい」
ゴールスのその言葉に、話していた者は疑問を抱く。
大将戦でゴールスがクラリスに勝つというのは、男も理解出来る。
実際、ゴーレスの強さを知っているのだから、言霊を使わずにとなれば、ゴーレスの勝利は確定だろう。
それは男も異論はないのだが、この場合問題になってくるのは心核使いの一戦だ。
ゴールスの部下にいる心核使いは一人しかいない以上、その男を出すのは確実だろう。
だが、その心核使いは今まで多くの修羅場を潜ってきた男である以上、当然のように相応の強さを持つ。
ゴールスもそれを知っているはずなのに、何故心核使いの戦いで自分たちが負けると確信しているかのように言うのか。
「ゴールス様、何故そこまで焦るのです? 話を聞いてる限りでは、何故かゴールス様は心核使いの戦いでうちのドラメイノが負けると判断しているようですが。ドラメイノがどれだけの実力を持っているのかは、ゴールス様が一番理解しているのでは?」
そう言う男に、ゴールスは不満そうな表情を浮かべつつも黙り込む。
実際、ドラメイノは心核使いとしてもかなりの実力を持つ。
心核を使ってサイクロプスに変身したその攻撃力は、まさに圧倒的と言ってもいい。
ゴールスも、相手がアランでなければドラメイノの勝利を間違いなく確信出来ていただろう。
それだけの信頼をドラメイノに抱いているのは間違いない。
だが……そのドラメイノの戦う相手がアランとなれば、話は違ってくる。
ガリンダミア帝国が、何としても……それこそなりふり構わず手に入れようとしているような相手だ。
当然それだけの実力を持っているのは間違いないし、ガリンダミア帝国から派遣されている相手からその件について聞いてはいる。
しかし、ガリンダミア帝国と繋がっていることは、それこそゴールスだけしか知らない話だ。
そうである以上、ここでそのようなことを言う訳にはいかない。
メルリアナの住人にとって、ガリンダミア帝国というのは表向き従ってはいても、不倶戴天の敵と思っている者が多数いるのだから。
ゴールスもそれを知っているからこそ、ガリンダミア帝国からの情報だとは言えないのだ。
「お前は知らないかもしれないが、向こうにいるアランという心核使いは雲海というクランの中でも突出した実力を持つ人物だ。もっとも、その能力は心核使いに特化しており、生身での戦闘の実力となれば、そこまで問題ではないのだが」
何故ゴールスがそのようなことを知っているのか、話を聞いていた男は疑問を抱く。
だが、ゴールスの立場を考えれば、独自の情報網を持っていてもおかしくはない。
そう判断し……ならばと、ゴールスから聞いた情報から狙うべき相手を決める。
何を言ってもゴールスは刺客を送るのを止めない以上、せめて成功率の高い標的を狙った方がいいと、そう判断したためだ。
ゴールスが言うには、アランは心核使いとしては強いが、生身での実力は高くない。
であれば……
「どうせ刺客を送るのなら、生身では弱いというそのアランという人物にしますか?」
「駄目だ!」
自分ではいい意見だと思ったのだが、ゴールスは即座にそれを否定するのだった。
当然ながら、その辺りについては皆が悩むことになった。
現在出場が確定しているのは、心核使いの枠としてのアランと、総大将としてクラリス。
そうなると、五対五である以上、残りの人数は三人となる。
ギジュの屋敷にいるという限られたメンバーの中で、強者となるとどうしても数は限られてしまう。
まず真っ先に名前が上がるのは、心核使いとしても、生身でも圧倒的な強さを持つレオノーラ。
そして、心核使いではあるが、同時に生身での戦いでも強い……言い方は若干悪いが、レオノーラの下位互換的な存在のジャスパー。
獣牙衆の一員で、ゴールスに命令されるのが嫌でクラリスに味方をすることに決めた、ガーウェイ。
どうしても、この三人が最有力候補となるのは当然だった。
中にはギジュが雇った者の中で、自分の強さに自信があるといったような者もいたのだが、レオノーラたち三人に勝てる者はいない。
なら、これで決まりか。
そう思ったところで、声を上げた者がいた。
「クラリス様の護衛である以上、この戦いに私も出場を希望します」
そう宣言したのは、ロルフ。
実際、クラリスが旅を始めた当初からその護衛をして、他の部下たちを纏めてきたロルフには、そのように言う資格は十分にあっただろう。
また、現在ギジュの屋敷にいる者ということで最初に上げられた三人に比べるとその実力は劣るが、その実力は三人に次ぐのは間違いない。
もし選ぶのが三人ではなく四人であるとすれば、ロルフがその四人目だったのは間違いない。
とはいえ……だからといって、素直にそれを認められるかと言えば、その答えは否だ。
「本気か、ロルフ? もしこの戦いで負ければ、そっちのお嬢ちゃんは全てをなくするんだぞ? そんな重要なときに、実力ではなく自分が戦いたいから選んで欲しいっては……洒落にならないぞ」
ロルフの兄貴分として、ガーウェイはそう告げる。
ガーウェイにしてみれば、それは半ば本気の言葉ではあっても、もう半分は自分が戦いに出られないかもしれないということを考えての言葉だ。
何度かジャスパーと腕試しとして模擬戦をしているものの、未だに勝ったことはない。
自分の腕に自信があっただけに、ガーウェイにとってかなりショックだったのは間違いない。
しかし、同時にそれは自分の前に壁があるということでもあり、倒す相手という意味で燃える相手なのは間違いなかった。
それはともかくとして、ジャスパーと戦っても勝てない以上。そんなジャスパーより強いレオノーラと戦っても、当然ながら勝ち目はない。
つまり、もしロルフが戦いに出るとなれば、この三人の中で外れるのはガーウェイとなってしまう。
ガーウェイにとっても、この戦いにかんしては参加しない訳にもいかなかった。
ゴールスが五人と言われて誰を出してくるのかは分からない。
だが、その中には間違いなく獣牙衆のメンバーが……もしかしたら、獣牙衆のトップが参加するだろう。
であれば、獣牙衆としての現在の在り方に疑問を抱いて出奔してきたガーウェイがこの戦いに参加しないといった選択肢はない。
「ガーウェイさんの言いたいことも分かる。だから……戦いが行われる前日までに、俺はガーウェイさんと戦って勝つ。それなら問題はないだろう?」
「へぇ、随分と大きく出たな」
自分に勝つと言うロルフに、ガーウェイは面白いと獰猛な笑みを浮かべる。
ガーウェイにとって、ロルフは自分の弟分だ。
そんな弟分が自分に挑んでくるというのだから、その心中は面白いといった気持ちが湧き上がる。
「いいだろう、お前がそこまで言うのなら、こっちも相応に覚悟を決めてやる。ただし、戦いの日までの日数は少ないぞ? それまでにお前が俺に勝てるかな?」
ガーウェイの挑発的な言葉に、ロルフはやる気を見せて頷く。
ロルフにしてみれば、ガーウェイは色々と世話になった兄貴分であるのは間違いない。
だが同時に、超えるべき壁でもあるのだ。
ある意味、ジャスパーがガーウェイにとって超えるべき壁であるのに対し、ガーウェイもまたロルフにとって超えるべき壁なのだろう。
ガーウェイもそれが分かっているだけに、ロルフからの挑戦を受けたという一面もあった。
「じゃあ、話は決まりね。……クラリス、改めて聞くまでもないと思うけど、念のために聞くわ。本当にこれでいいのね?」
確認するようにクラリスに尋ねるレオノーラ。
もしレオノーラが被害も何も恐れないというのなら、それこそゴールスの屋敷で直接会ったときに、ゴールスを殺すなりなんなりすることは出来た。
レオノーラやジャスパーには、間違いなくそのような力があるのだから。
さらに周辺の被害を恐れないのなら、アランが召喚するゼオンの武器を使えば、それこそ問答無用でゴールスを殺す……いや、消滅させるといったような真似も出来ただろう。
だが、クラリスはそのどちらも選択しなかった。
それこそ、自分が負けるかもしれない可能性を考えた上で、ゴールスに提案した公開試合を提案した。
それは、ある意味でクラリスの甘えでもあったのだろう。
アランに人を殺して欲しくないといったような。
レオノーラはそんなクラリスの思いを理解してはいたが、それでも今の状況を考えると、色々と思うところがあってもおかしくはない。
だが、それでもクラリスは公の場で戦った方が被害が少なくなり、何より誰の目にも明らかになると、そう判断したのだ。
そうである以上、今になって後悔するといたようなことはあってはならない。
「はい、これが最善の結果だと思います。……ゴールスがどう出て来るのかは分かりませんが、それでもここにいる人たちなら対処することは出来るでしょう」
クラリスの言葉に、部屋にいる多くの者たちが気合いを入れる。
ここまで慕われているのだから、これで燃えない訳がなかった。
「ゴールスさん、本気ですか? ああいう条件を出した以上、間違いなく連中もこっちを警戒しています。だとすれば、そんな中で刺客を放っても、向こうに有利になるだけです!」
「黙れ」
ゴールスの口から出たのは、低い声。
それこそ、その声を聞いただけで気の小さい者は声も何も出せなくなるだろう、そんな低い声だった。
それでもゴールスにこの状況で刺客を放つのは止めた方がいいと言っている男は、退かない。
もしここで刺客を送り、それが成功すればいい。
だが、失敗して捕らえられた場合……それは、ゴールスにとって大きなマイナスになることは明らかだったためだ。
しかし、ゴールスはそんな男の様子を見ても意思を曲げることはない。
「クラリスを殺せとは言わん。だが、現在ギジュの屋敷にいる者の中で腕利きと思われる誰かを殺せと言ってるんだ。ただでさえ、心核使い同士の戦いではこちらの負けが決定してるんだ。大将戦では俺が勝つとはいえ、そうなると問題なのは残り三戦。その勝率を少しでも上げたい」
ゴールスのその言葉に、話していた者は疑問を抱く。
大将戦でゴールスがクラリスに勝つというのは、男も理解出来る。
実際、ゴーレスの強さを知っているのだから、言霊を使わずにとなれば、ゴーレスの勝利は確定だろう。
それは男も異論はないのだが、この場合問題になってくるのは心核使いの一戦だ。
ゴールスの部下にいる心核使いは一人しかいない以上、その男を出すのは確実だろう。
だが、その心核使いは今まで多くの修羅場を潜ってきた男である以上、当然のように相応の強さを持つ。
ゴールスもそれを知っているはずなのに、何故心核使いの戦いで自分たちが負けると確信しているかのように言うのか。
「ゴールス様、何故そこまで焦るのです? 話を聞いてる限りでは、何故かゴールス様は心核使いの戦いでうちのドラメイノが負けると判断しているようですが。ドラメイノがどれだけの実力を持っているのかは、ゴールス様が一番理解しているのでは?」
そう言う男に、ゴールスは不満そうな表情を浮かべつつも黙り込む。
実際、ドラメイノは心核使いとしてもかなりの実力を持つ。
心核を使ってサイクロプスに変身したその攻撃力は、まさに圧倒的と言ってもいい。
ゴールスも、相手がアランでなければドラメイノの勝利を間違いなく確信出来ていただろう。
それだけの信頼をドラメイノに抱いているのは間違いない。
だが……そのドラメイノの戦う相手がアランとなれば、話は違ってくる。
ガリンダミア帝国が、何としても……それこそなりふり構わず手に入れようとしているような相手だ。
当然それだけの実力を持っているのは間違いないし、ガリンダミア帝国から派遣されている相手からその件について聞いてはいる。
しかし、ガリンダミア帝国と繋がっていることは、それこそゴールスだけしか知らない話だ。
そうである以上、ここでそのようなことを言う訳にはいかない。
メルリアナの住人にとって、ガリンダミア帝国というのは表向き従ってはいても、不倶戴天の敵と思っている者が多数いるのだから。
ゴールスもそれを知っているからこそ、ガリンダミア帝国からの情報だとは言えないのだ。
「お前は知らないかもしれないが、向こうにいるアランという心核使いは雲海というクランの中でも突出した実力を持つ人物だ。もっとも、その能力は心核使いに特化しており、生身での戦闘の実力となれば、そこまで問題ではないのだが」
何故ゴールスがそのようなことを知っているのか、話を聞いていた男は疑問を抱く。
だが、ゴールスの立場を考えれば、独自の情報網を持っていてもおかしくはない。
そう判断し……ならばと、ゴールスから聞いた情報から狙うべき相手を決める。
何を言ってもゴールスは刺客を送るのを止めない以上、せめて成功率の高い標的を狙った方がいいと、そう判断したためだ。
ゴールスが言うには、アランは心核使いとしては強いが、生身での実力は高くない。
であれば……
「どうせ刺客を送るのなら、生身では弱いというそのアランという人物にしますか?」
「駄目だ!」
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