337 / 422
獣人を率いる者
336話
しおりを挟む
「っ!?」
部屋の外にいたジャスパーを見て、女は即座に行動に移る。
その行動の素早さは、獣牙衆に所属する者として考えても瞬時にという表現が相応しい程だ。
あるいは、その行動の素早さは黒豹の獣人であるというのも、関係しているのかもしれないが。
一目見ただけで、ジャスパーが強者だと判断したのだろう。
ここで戦うような真似をした場合、すぐには勝てそうにもない。
そう判断し、女は即座にジャスパーに攻撃をしかける。
考えていることと行動が矛盾しているように思えるが、女はこのまま逃げてもジャスパーを振り切って逃げることが出来ないと、そう判断したのだ。
そうである以上、攻撃をして相手を負傷させ、その隙を突いてここから逃げよう。
そう判断しての行動。
鋭い爪の一撃は、首を切断とまではいかない。それでも首筋を斬り裂くことは容易に出来る。
実際、この部屋の前にいた二人の女の護衛の一人を、その爪であっさりと殺すことに成功したのだ。
そうである以上、ジャスパーの首筋を斬り裂くといったような真似をすれば、殺すことは出来る。
勿論、そんな簡単にジャスパーを殺せるとは女にも思えない。
攻撃をして、相手に多少なりとも傷を付けることが出来ればそれでいいと、そう思っての行動。
「ほう」
自分の首筋に向かって伸びてきた鋭い爪を一瞥し、即座に後方に下がりながら感心したような呟きを漏らす。
「くっ!」
ジャスパーの行動にとって、女の爪は空中を斬り裂くのみに終わる。
女の鋭い爪は、威力という点では非常に大きい。
だが、攻撃力はあっても、結局は爪である以上は間合いが短い。
そうである以上、それこそ半歩……それよりも短い距離を下がっただけで、爪の一撃は意味をもたない。
ジャスパーも一瞬でそれを見切ったので、このような行動が出来たのだろう。
「ちぃっ!」
だが、女はそんなジャスパーの行動を見て、さらに一歩踏み込む。
相手が半歩ほど後方に下がったのなら、こちらもまた一歩距離を詰めればいいだけだ。
そう判断しての行動だったのだろう。
女のその行動は、ジャスパーを驚かせるにも十分だったらしい。
このままでは攻撃を受ける。
そう判断したジャスパーは、長剣を振るって女の爪を迎撃する。
普段は槍を使っているジャスパーだったが、ここは屋敷の中だ。
槍のような長物は使いにくい以上、長剣を武器にするのは当然だった。
……普通であれば、長剣であっても使いにくいのだが、ジャスパーの技量があれば、その程度のことはどうとでもなるのだろう。
そう判断しての、武器の選択だった。
キィンッ、、という甲高い金属音が周囲に響く。
普通に考えれば、長剣と爪がぶつかって周囲に響く音としては、とてもではないが考えられないような、そんな音だ。
しかし、ジャスパーはそんな音を聞いても特に驚いた様子はない。
それどころか、感心した様子すら一瞬見せ……だが、それで身体の動きが鈍るようなことはなく、鋭い長剣の一撃を相手に叩き込もうとする。
相手が女……それも美女と呼ぶに相応しい女であっても、その命を奪うのに躊躇はしない。
ジャスパーの振るった長剣の刃は、女の身体を斬り裂くには十分な威力をもっており……
「くっ!」
だが、女は黒豹の俊敏性を活かし、その一撃をかろうじて回避し……
「なっ!?」
次の瞬間、踏んだ感触が床ではなく柔らかな何かだったことに驚き、一瞬だけ集中を切らす。
今の自分が踏んだのは、床に倒れていた護衛の女の死体であると、そう気が付いたときには遅い。
相手がジャスパーではなく……それこそアランであれば、一瞬注意を逸らすくらいのことをしても問題はなかっただろう。
だが、女の相手をしているのは、アランではなく生身での戦いでも一流と呼ぶに相応しい技術を持った、ジャスパーだ。
そんなジャスパーから一瞬でも視線を逸らすというのは、女にとって致命的だった。
当然ながら、ジャスパーもまたそんな女の様子を見逃すなどといったような真似はしない。
バランスを崩し、一瞬注意を逸らした女に向かって振るわれる長剣。
その一撃回避することは、女にとって不可能だった。
「っ!?」
それでも痛みに声を発さない辺り、流石と言ってもいいのだろう。
そんな一撃によって、大きな傷を負った女はそれでも獣人……いや、獣の生命力で生きることを諦めず、この場を何とか脱出する方法を考える。
自分がこのような場所で死ぬとは、決して許容出来なかった。
だからこそ、今は何としてでもこの場から逃げ出そうとするが……相手がジャスパーであるというのは、女にとって最悪の出来事だ。
現在ギジュの屋敷にいる者の中で、三本の指に入るだけの実力を持っている者なのだから。
「貴方がどこの誰かは分かりません。ですが、このまま逃がすといったようなことは出来ません。……死んで貰います」
そう言い、護衛対象のクラリスに対する刺客を斬り捨てようとした瞬間……
「っ!?」
不意に殺気を感じ、ジャスパーはその場から離れる。
次の瞬間、ジャスパーの立っていた床が滑らかに斬り裂かれた。
「これは!?」
何らかの斬り傷……と傷跡を見て思うものの、長剣のような武器を使っての一撃でないことは、一目見れば明らかだった。
何しろ、この場にはジャスパーと黒豹の獣人の女、それと死体となった護衛の二人の姿しかないのだから。
そして今までジャスパーと戦っていた獣人の女は、半ば戦闘不能に近い状態になっていた。
そのような状況である以上、このような攻撃を出来る訳がない。
そもそも、武器すら生み出さずにこれだけの切断力のある攻撃を放つことができるのなら、ここまでピンチになるよりも前に、その攻撃を放てばいい。
だとすれば……
「誰かいるな?」
鋭く周囲の見回して呟くジャスパーだったが、そんなジャスパーの言葉に応じるような者はいない。
気配を探ってみても、当然のように周囲に他の者の気配はなかった。
もちろん、ジャスパーも偵察の類を本職にしている者ほどに、気配の察知が得意な訳ではない。
しかし、それはあくまでも本職の者と比べての話であって、その辺の者達を相手にして気配を感じられないということはないはずだった。
それはつまり、この近くにはいない場所から今のような攻撃をされた……ということを意味している。
普通に考えれば有り得ないことではあるのだが、この世界には魔法がある。
また、それ以外にも魔法には分類出来ないようなスキルの類もあるし、マジックアイテムもあり……さらには、心核がある。
特に心核は、その者の根源とも呼ぶべき存在を身に纏うという能力を持つ。
その者の根源によっては、それこそ離れた場所に斬撃を放つといったような真似が出来ても、おかしくはない。
(心核か)
ジャスパーは周囲の状況を確認しつつ、自分の心核を手に取る。
心核ということであれば、ジャスパーもまた心核使いだ。
それもただ心核が使えるというだけではなく、一流の使い手と呼ぶに相応しい実力を持つ心核使い。
アランのように全高十八メートルといったような馬鹿げた人型機動兵器を召喚するといったような真似は出来ないが、技量という点では非常に高い。
そうである以上、ここで心核を使えば対処出来る……というのは予想出来ていたものの、それを今使うべきかどうかは迷う。
先程の攻撃が続けて行われれば、ジャスパーも迷わず心核を使ったのは間違いない。
だが、先程の一撃を放たれたあと、続けて攻撃が行われるといったことはなかった。
(何故だ?)
斬撃を飛ばす……それも、廊下や窓、天井といった場所を破壊せず、正確にジャスパーのいる場所に向かって斬撃を飛ばすのだ。
その一撃は、斬撃を飛ばすのではなく、残敵を転移させているといった表現でも決して間違ってはいないだろう。
そのような攻撃方法がある以上、連続して放てばジャスパーであっても対処するのは難しいはずだった。
だというのに、先程の一撃を放っただけで全く追撃を放ってくる様子はない。
そうして考えていると、やがて多数足音が聞こえてくる。
足音を聞き、ジャスパーの眉が微かに顰められる。
この戦いの騒動を聞いて、ギジュに雇われている者たちがやって来るのは、分からないではない。
分からないではないが、今この状況でやって来る味方というのは、決して好ましいものではなかった。
こうして足音が周囲に響くだけで、ジャスパーの集中力は削がれていく。
敵の場所を見つけようにも、この足音や気配が邪魔をするのだから当然だろう。
そして……やがてジャスパーは、廊下を走っている者たちの姿を確認し、渋々といった様子で構えを解く。
今のままでは、敵を見つけることは出来ない。
そう判断してのことだった。
やって来た者たちは、周囲に漂う鉄錆臭で何が起きたのか理解していたのだろう。
鋭く周囲を見回し……立っているジャスパーを見て、一瞬視線を鋭くする。
しかし、その人物がジャスパーであると理解すると、安堵した様子を見せ……そして、床に倒れている二人の女の死体と、怪我で身動きが出来なくなっている黒豹の獣人の女を発見した。
この状況を見れば、一体何がどうなってこのようなことになったのかは、考えるまでもなく明らかだ。
だからこそ、やって来た者たちはそれを起こした相手を殺そうと武器を構える。
本来の実力であれば、やって来た者たちに勝ち目はない。
だが、女は怪我をしており、ろくに身動きが出来る様子ではない。
であれば、この状況でこの女を殺せば自分の手柄になる。
そう考えた者がいるのは、当然の話だった。
「止めなさい」
武器を構え、動けない女との距離を詰めようとした男は、その一言で動きを止める。
決して大きな声ではない。
だが、それでもその言葉に従わなければならないと、そう判断してしまったのだ。
それは、自分よりも圧倒的に上の実力を持つ人物と、その一言だけで理解した……いや、理解させられてしまったがゆえの行動。
動きを止めた男を一瞥し、ジャスパーは改めて口を開く。
「では、この者は捕らえて情報を引き出すように」
その言葉に、やって来た者たちは素直に頷くのだった。
部屋の外にいたジャスパーを見て、女は即座に行動に移る。
その行動の素早さは、獣牙衆に所属する者として考えても瞬時にという表現が相応しい程だ。
あるいは、その行動の素早さは黒豹の獣人であるというのも、関係しているのかもしれないが。
一目見ただけで、ジャスパーが強者だと判断したのだろう。
ここで戦うような真似をした場合、すぐには勝てそうにもない。
そう判断し、女は即座にジャスパーに攻撃をしかける。
考えていることと行動が矛盾しているように思えるが、女はこのまま逃げてもジャスパーを振り切って逃げることが出来ないと、そう判断したのだ。
そうである以上、攻撃をして相手を負傷させ、その隙を突いてここから逃げよう。
そう判断しての行動。
鋭い爪の一撃は、首を切断とまではいかない。それでも首筋を斬り裂くことは容易に出来る。
実際、この部屋の前にいた二人の女の護衛の一人を、その爪であっさりと殺すことに成功したのだ。
そうである以上、ジャスパーの首筋を斬り裂くといったような真似をすれば、殺すことは出来る。
勿論、そんな簡単にジャスパーを殺せるとは女にも思えない。
攻撃をして、相手に多少なりとも傷を付けることが出来ればそれでいいと、そう思っての行動。
「ほう」
自分の首筋に向かって伸びてきた鋭い爪を一瞥し、即座に後方に下がりながら感心したような呟きを漏らす。
「くっ!」
ジャスパーの行動にとって、女の爪は空中を斬り裂くのみに終わる。
女の鋭い爪は、威力という点では非常に大きい。
だが、攻撃力はあっても、結局は爪である以上は間合いが短い。
そうである以上、それこそ半歩……それよりも短い距離を下がっただけで、爪の一撃は意味をもたない。
ジャスパーも一瞬でそれを見切ったので、このような行動が出来たのだろう。
「ちぃっ!」
だが、女はそんなジャスパーの行動を見て、さらに一歩踏み込む。
相手が半歩ほど後方に下がったのなら、こちらもまた一歩距離を詰めればいいだけだ。
そう判断しての行動だったのだろう。
女のその行動は、ジャスパーを驚かせるにも十分だったらしい。
このままでは攻撃を受ける。
そう判断したジャスパーは、長剣を振るって女の爪を迎撃する。
普段は槍を使っているジャスパーだったが、ここは屋敷の中だ。
槍のような長物は使いにくい以上、長剣を武器にするのは当然だった。
……普通であれば、長剣であっても使いにくいのだが、ジャスパーの技量があれば、その程度のことはどうとでもなるのだろう。
そう判断しての、武器の選択だった。
キィンッ、、という甲高い金属音が周囲に響く。
普通に考えれば、長剣と爪がぶつかって周囲に響く音としては、とてもではないが考えられないような、そんな音だ。
しかし、ジャスパーはそんな音を聞いても特に驚いた様子はない。
それどころか、感心した様子すら一瞬見せ……だが、それで身体の動きが鈍るようなことはなく、鋭い長剣の一撃を相手に叩き込もうとする。
相手が女……それも美女と呼ぶに相応しい女であっても、その命を奪うのに躊躇はしない。
ジャスパーの振るった長剣の刃は、女の身体を斬り裂くには十分な威力をもっており……
「くっ!」
だが、女は黒豹の俊敏性を活かし、その一撃をかろうじて回避し……
「なっ!?」
次の瞬間、踏んだ感触が床ではなく柔らかな何かだったことに驚き、一瞬だけ集中を切らす。
今の自分が踏んだのは、床に倒れていた護衛の女の死体であると、そう気が付いたときには遅い。
相手がジャスパーではなく……それこそアランであれば、一瞬注意を逸らすくらいのことをしても問題はなかっただろう。
だが、女の相手をしているのは、アランではなく生身での戦いでも一流と呼ぶに相応しい技術を持った、ジャスパーだ。
そんなジャスパーから一瞬でも視線を逸らすというのは、女にとって致命的だった。
当然ながら、ジャスパーもまたそんな女の様子を見逃すなどといったような真似はしない。
バランスを崩し、一瞬注意を逸らした女に向かって振るわれる長剣。
その一撃回避することは、女にとって不可能だった。
「っ!?」
それでも痛みに声を発さない辺り、流石と言ってもいいのだろう。
そんな一撃によって、大きな傷を負った女はそれでも獣人……いや、獣の生命力で生きることを諦めず、この場を何とか脱出する方法を考える。
自分がこのような場所で死ぬとは、決して許容出来なかった。
だからこそ、今は何としてでもこの場から逃げ出そうとするが……相手がジャスパーであるというのは、女にとって最悪の出来事だ。
現在ギジュの屋敷にいる者の中で、三本の指に入るだけの実力を持っている者なのだから。
「貴方がどこの誰かは分かりません。ですが、このまま逃がすといったようなことは出来ません。……死んで貰います」
そう言い、護衛対象のクラリスに対する刺客を斬り捨てようとした瞬間……
「っ!?」
不意に殺気を感じ、ジャスパーはその場から離れる。
次の瞬間、ジャスパーの立っていた床が滑らかに斬り裂かれた。
「これは!?」
何らかの斬り傷……と傷跡を見て思うものの、長剣のような武器を使っての一撃でないことは、一目見れば明らかだった。
何しろ、この場にはジャスパーと黒豹の獣人の女、それと死体となった護衛の二人の姿しかないのだから。
そして今までジャスパーと戦っていた獣人の女は、半ば戦闘不能に近い状態になっていた。
そのような状況である以上、このような攻撃を出来る訳がない。
そもそも、武器すら生み出さずにこれだけの切断力のある攻撃を放つことができるのなら、ここまでピンチになるよりも前に、その攻撃を放てばいい。
だとすれば……
「誰かいるな?」
鋭く周囲の見回して呟くジャスパーだったが、そんなジャスパーの言葉に応じるような者はいない。
気配を探ってみても、当然のように周囲に他の者の気配はなかった。
もちろん、ジャスパーも偵察の類を本職にしている者ほどに、気配の察知が得意な訳ではない。
しかし、それはあくまでも本職の者と比べての話であって、その辺の者達を相手にして気配を感じられないということはないはずだった。
それはつまり、この近くにはいない場所から今のような攻撃をされた……ということを意味している。
普通に考えれば有り得ないことではあるのだが、この世界には魔法がある。
また、それ以外にも魔法には分類出来ないようなスキルの類もあるし、マジックアイテムもあり……さらには、心核がある。
特に心核は、その者の根源とも呼ぶべき存在を身に纏うという能力を持つ。
その者の根源によっては、それこそ離れた場所に斬撃を放つといったような真似が出来ても、おかしくはない。
(心核か)
ジャスパーは周囲の状況を確認しつつ、自分の心核を手に取る。
心核ということであれば、ジャスパーもまた心核使いだ。
それもただ心核が使えるというだけではなく、一流の使い手と呼ぶに相応しい実力を持つ心核使い。
アランのように全高十八メートルといったような馬鹿げた人型機動兵器を召喚するといったような真似は出来ないが、技量という点では非常に高い。
そうである以上、ここで心核を使えば対処出来る……というのは予想出来ていたものの、それを今使うべきかどうかは迷う。
先程の攻撃が続けて行われれば、ジャスパーも迷わず心核を使ったのは間違いない。
だが、先程の一撃を放たれたあと、続けて攻撃が行われるといったことはなかった。
(何故だ?)
斬撃を飛ばす……それも、廊下や窓、天井といった場所を破壊せず、正確にジャスパーのいる場所に向かって斬撃を飛ばすのだ。
その一撃は、斬撃を飛ばすのではなく、残敵を転移させているといった表現でも決して間違ってはいないだろう。
そのような攻撃方法がある以上、連続して放てばジャスパーであっても対処するのは難しいはずだった。
だというのに、先程の一撃を放っただけで全く追撃を放ってくる様子はない。
そうして考えていると、やがて多数足音が聞こえてくる。
足音を聞き、ジャスパーの眉が微かに顰められる。
この戦いの騒動を聞いて、ギジュに雇われている者たちがやって来るのは、分からないではない。
分からないではないが、今この状況でやって来る味方というのは、決して好ましいものではなかった。
こうして足音が周囲に響くだけで、ジャスパーの集中力は削がれていく。
敵の場所を見つけようにも、この足音や気配が邪魔をするのだから当然だろう。
そして……やがてジャスパーは、廊下を走っている者たちの姿を確認し、渋々といった様子で構えを解く。
今のままでは、敵を見つけることは出来ない。
そう判断してのことだった。
やって来た者たちは、周囲に漂う鉄錆臭で何が起きたのか理解していたのだろう。
鋭く周囲を見回し……立っているジャスパーを見て、一瞬視線を鋭くする。
しかし、その人物がジャスパーであると理解すると、安堵した様子を見せ……そして、床に倒れている二人の女の死体と、怪我で身動きが出来なくなっている黒豹の獣人の女を発見した。
この状況を見れば、一体何がどうなってこのようなことになったのかは、考えるまでもなく明らかだ。
だからこそ、やって来た者たちはそれを起こした相手を殺そうと武器を構える。
本来の実力であれば、やって来た者たちに勝ち目はない。
だが、女は怪我をしており、ろくに身動きが出来る様子ではない。
であれば、この状況でこの女を殺せば自分の手柄になる。
そう考えた者がいるのは、当然の話だった。
「止めなさい」
武器を構え、動けない女との距離を詰めようとした男は、その一言で動きを止める。
決して大きな声ではない。
だが、それでもその言葉に従わなければならないと、そう判断してしまったのだ。
それは、自分よりも圧倒的に上の実力を持つ人物と、その一言だけで理解した……いや、理解させられてしまったがゆえの行動。
動きを止めた男を一瞥し、ジャスパーは改めて口を開く。
「では、この者は捕らえて情報を引き出すように」
その言葉に、やって来た者たちは素直に頷くのだった。
0
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる