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獣人を率いる者
332話
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捕らえた狼の獣人の件はともかく、レオノーラは呆れたように周囲を見る。
そこに転がっていたのは、多数の人。
アランに恥を掻かされたことに対し、仕返しをしに来た者たちだ。
「で、この人たちはどうするの?」
「別にどうもしないよ。このまま放っておけばいいんじゃないか? ……クラリス、この連中ってどのくらいで起きる?」
狼の獣人との戦いで邪魔になりそうだったので、クラリスの言霊で眠らせたのだ。
そうである以上、具体的にはいつくらいに目が覚めるのかといったことは、クラリスに聞くのが一番いいのは間違いなかった。
「そうですね。起こそうと思えばいつでも起こせますけど、このまま放っておいても数時間も経たないうちに起きるかと」
「……ということらしいけど、どうする? 俺としてはこの連中を起こすと面倒なことになると思うだけだから、このまま放っておきたいけど」
もし気絶している連中が起きても、それこそアランは自分だけでもどうとでも対処は出来る。
ましてや、今はジャスパーとレオノーラもいるのだから、なおさらだろう。
「そうね。じゃあ、そうしましょう」
レオノーラも、当然だが誰にでも優しいといった訳ではない。
ましてや、アランの話を聞く限りではクラリスにも危害を加えようとしていたという話だ。
そうである以上、わざわざそのような相手に慈悲深くなる必要はない。
そんな訳で、結局眠っている者たちはそのままにして、アランたちはギジュの屋敷に向かう。
……なお、気絶させられた狼の獣人は、アランが背負って移動するすることになった。
アランたちが争っていたのは人のいない場所だったので、それなりに激しい争いをしつつも、特に周囲に知られるといったことはないので、こうしてアランが狼の獣人を背負っていても、それこそ夕方から夜になる時間帯である以上、酔っ払った友人を運んでいると思われるだけだ。
結果として、アランたちは特に周囲から怪しまれたりといったことがないまま、ギジュの屋敷に到着する。
この一件で大変だったのは、やはりアランの体力が消耗したことくらいだろう。
普通の人であっても、そのような人物をおぶって運ぶとなると、かなり大変だ。
だというのに、相手はしっかりと鍛えている狼の獣人の男だ。
その体重は、八十キロを超えているだろう。
その上で動きの邪魔をしないように革製ではあっても鎧を着ていたり、各種武装を持っているのを考えると、最終的には九十……もしくは百キロ近い。
そんな重量物を持って移動しているのだから、アランがギジュの屋敷に戻ったときには息も絶え絶えといった表情が相応しい様子だった。
「ぜはぁ……疲れた……」
身体中に汗を掻いているアランに、メイドが冷たい果実水を持っている。
ただの水ではなく果実水なのは、少しでもアランの疲れがとれるようにと考えたからだろう。
そんなメイドに感謝の言葉を口にしたアランは、薄らと酸味と甘みが口の中に広がる果実水を楽しみながら、自分がここまで運んできた狼の獣人がギジュの雇った傭兵たちに運ばれていくのを見送る。
(獣牙衆が何を考えているのか、尋問で分かればいいんだけどな)
ガーウェイが獣牙衆を抜けてから、多少の時間が経っている。
その間に、獣牙衆の中で一体どのような考えをする者がいるのか。
それが分かれば、クラリスを守るのにも役に立つのは間違いない。
「アランさん」
と、そんな風にクラリスのことを考えていると、その本人から声をかけられる。
すでに街中に出るための変装は解除しており、アランにとってもいつも通り尻尾が二本あるのが特徴的なクラリスの姿だ。
……もっとも、今日はずっと変装しているクラリスを見ていたので、若干の違和感があるのは間違いなかった。
「クラリス、どうした? 説教はもういいのか?」
「あはは。……はい」
困ったように笑いながら、クラリスはそう告げる。
今日アランと共に街中に出た件は、当然ながらクラリスの護衛をしているロルフたちには内緒で行われた。
もちろん、クラリスを呼びに来たときにクラリスがおらず、ギジュの屋敷を探してもいないとなれば大きな騒動になるので、アランと一緒に街に行くといったような書き置きは残してだが。
だが、そのように強引な真似をした以上、当然ながらロルフたちに怒られるのは当然だった。
ロルフたちにしてみれば、この状況で下手にクラリスを捜そうとして騒ぎになれば、それによってゴールスたちにクラリスがいないという件を知られてしまうかもしれないとして捜すことも出来ず、心配をしながら待っていたのだ。
その結果としては、怒られる時間が少なかったのだが……
(まぁ、姫と護衛だしな)
ロルフとしては、クラリスにもっと色々と言いたいことはあったのだろう。
だが、今の状況を思えば、主君たるクラリスに対してロルフたちが出来るのは、叱るのではなく小言を言うといった程度なのは間違いない。
「それで、街を見てどう思った?」
「そうですね。普通の人たちの暮らしは、色々と興味深かったです。……私とゴールスが争っていても、それはまるで関係ないように生活していました」
「だろうな。結局のところ、上に立つのがどんな奴かなんてのは、一般人にはそこまで重要じゃないんだろ。無理に何かを奪っていったりとか、そういう真似をするのなら話は別だが」
そんなアランの言葉に、クラリスは微妙な表情を浮かべる。
クラリスにしてみれば、ゴールスとの戦いで自分が獣人の指導者的な立場になったら、皆がもっといい暮らしを出来るのではないかと、そう思っていたのだ。
だが、クラリスが見たところでは、特に誰かが理不尽な思いをしているようにも思えない。
……いや、実際にはクラリスが見たのは生活の中のほんの一部でしかない。
(とはいえ、まさかそう何度もクラリスを街中に出させる訳にはいかないしな)
今日街に出ただけで、あれだけの騒動が起きたのだ。
また外に出たりしようものなら、今度はもっと大きな騒動になるのは間違いない。
であれば、やはりこれ以上クラリスを外に出すのは止めた方がいいと思えた。
(敵の数を少しでも減らすという意味で、敵を誘き寄せる為に外出するってのはありかもしれないけど……それはそれで難しいか)
それは、クラリスを餌にするということだ。
そのような真似は、さすがにアランもやろうとは思えない。
あるいは、これでクラリスが男……それも十代後半くらいの年齢なら、敵を誘き寄せる餌にするという方法もない訳ではなかったのだが。
「で、どうする? クラリスとしては、このままでいいと思ってるのなら、別にゴールスと争う必要はないと思うか?」
「それは……いえ、出来ません。そもそも、私がそのようなことを言っても、向こうは信じてくれないでしょうし」
だろうな、と。
アランはそんなクラリスの言葉に納得してしまう。
実際問題、こうしている今もまたゴールスによる刺客が襲ってこないとも限らないのだ。
そうである以上、クラリスとしてもこのまま大人しく死ぬといったような真似は、とてもではないが出来ないだろう。
「その辺、もう少し考えてみるといいかもしれないな」
そう言い、アランは自分の部屋に向かう。
少し厳しく言いすぎたか? と、そんなことを思いながら。
そもそもの話、十歳かそこらで敵に狙われるといったような経験をして、それで自分がこれからどうするべきなのかを考えろという方が難しいだろう。
アランの場合は前世の知識があったので、この世界で十歳になった時は特に問題はなかった。
だが、前世で……日本で十歳くらいのときにどういう自分だったのかを考えると、すぐには詳細に思い出せはしないが、それでもクラリスのように命の懸かった日々をすごしていたといったことはない。
せいぜいが、友人たちと毎日夕方になるまで遊び回っていたといったくらいか。
……そういう意味では、今日クラリスが空き地で一緒に遊んだ子供たちと同じようなものだったのだろう。
「アラン、ちょっといい?」
部屋に向かっているアランは、不意に声をかけられる。
とはいえ、それが誰の声なのかは考えるまでもなく明らかだ。
「レオノーラ、どうしたんだ? 何か用か?」
「あら、用事がなければ声をかけちゃいけないの?」
そう言われると、アランとしてもレオノーラの言葉に否とは言えない。
実際、用事がなくてもレオノーラに声をかけられたのは、そう悪くない気分だったのだから。
「いや、別にそんなことはないと思うけどな。それで、どこかで話でもするか? ……というか、レオノーラは今日からここに住むんだよな? ギジュから部屋は用意して貰ったのか?」
「ええ、その辺は問題ないわ。そもそも、この屋敷はかなりの大きさがあるのよ? それこそ客室の一つや二つ、いつでも使えるように準備してあるのは当然でしょ?」
そういうものか、とアランも素直に納得する。
アランも雲海に所属しているので、何だかんだと金持ちの屋敷に行くというのは、それなりに慣れている。
だからこそ、レオノーラの言葉にも素直に納得出来たのだ。
「レオノーラがこっちに来てくれたのは助かるけど、他の連中は大丈夫なのか?」
雲海と黄金の薔薇の面々の大半は、現在デルリアにいる。
ただし、当然だが宿が間に合ったりはしないので、街の外で野営をしているような者たちもいるのだが。
「そっちの方はある程度何とかなってるわ。……中には何を考えたのか、野営地にいる人たちに絡んできたような人もいたけど」
「それは、また……」
アランの言葉には、呆れの色がある。
デルリアに住んでいる者は、獣人が多い。
そんな獣人たちにしてみれば、街のすぐ外で野営をしているような連中は自分たちの縄張りを勝手に使ってるようにも思えたのだろうが……この場合は、絡んだ相手が悪い。
何しろ雲海も黄金の薔薇も、腕利きの探索者が揃っている。
それこそちょっとした腕自慢程度の者たちがどうにか出来る相手ではない。
「で、どうなったんだ?」
「取りあえず慰謝料代わりに食材とか日常生活で必要な物を持ってこさせているわ」
哀れな。
そう、アランはしみじみと思うのだった。
そこに転がっていたのは、多数の人。
アランに恥を掻かされたことに対し、仕返しをしに来た者たちだ。
「で、この人たちはどうするの?」
「別にどうもしないよ。このまま放っておけばいいんじゃないか? ……クラリス、この連中ってどのくらいで起きる?」
狼の獣人との戦いで邪魔になりそうだったので、クラリスの言霊で眠らせたのだ。
そうである以上、具体的にはいつくらいに目が覚めるのかといったことは、クラリスに聞くのが一番いいのは間違いなかった。
「そうですね。起こそうと思えばいつでも起こせますけど、このまま放っておいても数時間も経たないうちに起きるかと」
「……ということらしいけど、どうする? 俺としてはこの連中を起こすと面倒なことになると思うだけだから、このまま放っておきたいけど」
もし気絶している連中が起きても、それこそアランは自分だけでもどうとでも対処は出来る。
ましてや、今はジャスパーとレオノーラもいるのだから、なおさらだろう。
「そうね。じゃあ、そうしましょう」
レオノーラも、当然だが誰にでも優しいといった訳ではない。
ましてや、アランの話を聞く限りではクラリスにも危害を加えようとしていたという話だ。
そうである以上、わざわざそのような相手に慈悲深くなる必要はない。
そんな訳で、結局眠っている者たちはそのままにして、アランたちはギジュの屋敷に向かう。
……なお、気絶させられた狼の獣人は、アランが背負って移動するすることになった。
アランたちが争っていたのは人のいない場所だったので、それなりに激しい争いをしつつも、特に周囲に知られるといったことはないので、こうしてアランが狼の獣人を背負っていても、それこそ夕方から夜になる時間帯である以上、酔っ払った友人を運んでいると思われるだけだ。
結果として、アランたちは特に周囲から怪しまれたりといったことがないまま、ギジュの屋敷に到着する。
この一件で大変だったのは、やはりアランの体力が消耗したことくらいだろう。
普通の人であっても、そのような人物をおぶって運ぶとなると、かなり大変だ。
だというのに、相手はしっかりと鍛えている狼の獣人の男だ。
その体重は、八十キロを超えているだろう。
その上で動きの邪魔をしないように革製ではあっても鎧を着ていたり、各種武装を持っているのを考えると、最終的には九十……もしくは百キロ近い。
そんな重量物を持って移動しているのだから、アランがギジュの屋敷に戻ったときには息も絶え絶えといった表情が相応しい様子だった。
「ぜはぁ……疲れた……」
身体中に汗を掻いているアランに、メイドが冷たい果実水を持っている。
ただの水ではなく果実水なのは、少しでもアランの疲れがとれるようにと考えたからだろう。
そんなメイドに感謝の言葉を口にしたアランは、薄らと酸味と甘みが口の中に広がる果実水を楽しみながら、自分がここまで運んできた狼の獣人がギジュの雇った傭兵たちに運ばれていくのを見送る。
(獣牙衆が何を考えているのか、尋問で分かればいいんだけどな)
ガーウェイが獣牙衆を抜けてから、多少の時間が経っている。
その間に、獣牙衆の中で一体どのような考えをする者がいるのか。
それが分かれば、クラリスを守るのにも役に立つのは間違いない。
「アランさん」
と、そんな風にクラリスのことを考えていると、その本人から声をかけられる。
すでに街中に出るための変装は解除しており、アランにとってもいつも通り尻尾が二本あるのが特徴的なクラリスの姿だ。
……もっとも、今日はずっと変装しているクラリスを見ていたので、若干の違和感があるのは間違いなかった。
「クラリス、どうした? 説教はもういいのか?」
「あはは。……はい」
困ったように笑いながら、クラリスはそう告げる。
今日アランと共に街中に出た件は、当然ながらクラリスの護衛をしているロルフたちには内緒で行われた。
もちろん、クラリスを呼びに来たときにクラリスがおらず、ギジュの屋敷を探してもいないとなれば大きな騒動になるので、アランと一緒に街に行くといったような書き置きは残してだが。
だが、そのように強引な真似をした以上、当然ながらロルフたちに怒られるのは当然だった。
ロルフたちにしてみれば、この状況で下手にクラリスを捜そうとして騒ぎになれば、それによってゴールスたちにクラリスがいないという件を知られてしまうかもしれないとして捜すことも出来ず、心配をしながら待っていたのだ。
その結果としては、怒られる時間が少なかったのだが……
(まぁ、姫と護衛だしな)
ロルフとしては、クラリスにもっと色々と言いたいことはあったのだろう。
だが、今の状況を思えば、主君たるクラリスに対してロルフたちが出来るのは、叱るのではなく小言を言うといった程度なのは間違いない。
「それで、街を見てどう思った?」
「そうですね。普通の人たちの暮らしは、色々と興味深かったです。……私とゴールスが争っていても、それはまるで関係ないように生活していました」
「だろうな。結局のところ、上に立つのがどんな奴かなんてのは、一般人にはそこまで重要じゃないんだろ。無理に何かを奪っていったりとか、そういう真似をするのなら話は別だが」
そんなアランの言葉に、クラリスは微妙な表情を浮かべる。
クラリスにしてみれば、ゴールスとの戦いで自分が獣人の指導者的な立場になったら、皆がもっといい暮らしを出来るのではないかと、そう思っていたのだ。
だが、クラリスが見たところでは、特に誰かが理不尽な思いをしているようにも思えない。
……いや、実際にはクラリスが見たのは生活の中のほんの一部でしかない。
(とはいえ、まさかそう何度もクラリスを街中に出させる訳にはいかないしな)
今日街に出ただけで、あれだけの騒動が起きたのだ。
また外に出たりしようものなら、今度はもっと大きな騒動になるのは間違いない。
であれば、やはりこれ以上クラリスを外に出すのは止めた方がいいと思えた。
(敵の数を少しでも減らすという意味で、敵を誘き寄せる為に外出するってのはありかもしれないけど……それはそれで難しいか)
それは、クラリスを餌にするということだ。
そのような真似は、さすがにアランもやろうとは思えない。
あるいは、これでクラリスが男……それも十代後半くらいの年齢なら、敵を誘き寄せる餌にするという方法もない訳ではなかったのだが。
「で、どうする? クラリスとしては、このままでいいと思ってるのなら、別にゴールスと争う必要はないと思うか?」
「それは……いえ、出来ません。そもそも、私がそのようなことを言っても、向こうは信じてくれないでしょうし」
だろうな、と。
アランはそんなクラリスの言葉に納得してしまう。
実際問題、こうしている今もまたゴールスによる刺客が襲ってこないとも限らないのだ。
そうである以上、クラリスとしてもこのまま大人しく死ぬといったような真似は、とてもではないが出来ないだろう。
「その辺、もう少し考えてみるといいかもしれないな」
そう言い、アランは自分の部屋に向かう。
少し厳しく言いすぎたか? と、そんなことを思いながら。
そもそもの話、十歳かそこらで敵に狙われるといったような経験をして、それで自分がこれからどうするべきなのかを考えろという方が難しいだろう。
アランの場合は前世の知識があったので、この世界で十歳になった時は特に問題はなかった。
だが、前世で……日本で十歳くらいのときにどういう自分だったのかを考えると、すぐには詳細に思い出せはしないが、それでもクラリスのように命の懸かった日々をすごしていたといったことはない。
せいぜいが、友人たちと毎日夕方になるまで遊び回っていたといったくらいか。
……そういう意味では、今日クラリスが空き地で一緒に遊んだ子供たちと同じようなものだったのだろう。
「アラン、ちょっといい?」
部屋に向かっているアランは、不意に声をかけられる。
とはいえ、それが誰の声なのかは考えるまでもなく明らかだ。
「レオノーラ、どうしたんだ? 何か用か?」
「あら、用事がなければ声をかけちゃいけないの?」
そう言われると、アランとしてもレオノーラの言葉に否とは言えない。
実際、用事がなくてもレオノーラに声をかけられたのは、そう悪くない気分だったのだから。
「いや、別にそんなことはないと思うけどな。それで、どこかで話でもするか? ……というか、レオノーラは今日からここに住むんだよな? ギジュから部屋は用意して貰ったのか?」
「ええ、その辺は問題ないわ。そもそも、この屋敷はかなりの大きさがあるのよ? それこそ客室の一つや二つ、いつでも使えるように準備してあるのは当然でしょ?」
そういうものか、とアランも素直に納得する。
アランも雲海に所属しているので、何だかんだと金持ちの屋敷に行くというのは、それなりに慣れている。
だからこそ、レオノーラの言葉にも素直に納得出来たのだ。
「レオノーラがこっちに来てくれたのは助かるけど、他の連中は大丈夫なのか?」
雲海と黄金の薔薇の面々の大半は、現在デルリアにいる。
ただし、当然だが宿が間に合ったりはしないので、街の外で野営をしているような者たちもいるのだが。
「そっちの方はある程度何とかなってるわ。……中には何を考えたのか、野営地にいる人たちに絡んできたような人もいたけど」
「それは、また……」
アランの言葉には、呆れの色がある。
デルリアに住んでいる者は、獣人が多い。
そんな獣人たちにしてみれば、街のすぐ外で野営をしているような連中は自分たちの縄張りを勝手に使ってるようにも思えたのだろうが……この場合は、絡んだ相手が悪い。
何しろ雲海も黄金の薔薇も、腕利きの探索者が揃っている。
それこそちょっとした腕自慢程度の者たちがどうにか出来る相手ではない。
「で、どうなったんだ?」
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そう、アランはしみじみと思うのだった。
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